第34話 いつも通りの生活
食堂で昼食を食べた後、それぞれ3限の授業に向かった。3限と4限の授業が終わった後、教室から出てキャンパス内の敷地を歩いていると後ろから春香とまゆ先輩が僕に声をかける。
「りょうちゃん、お疲れ様。授業どうだった?」
「うーん。1時間が90分だから授業がめちゃくちゃ長いって思う」
「私も去年そんな感じだったけど、割とすぐ慣れるよ」
春香は笑いながら言う。春香とまゆ先輩と話しながら歩いて、駐車場でまゆ先輩と別れる。まゆ先輩はこれからバイトらしい。
「じゃあね。あ、りょうちゃん、明日楽しみにしてるから約束忘れないでよ」
「はい。明日、よろしくお願いします。バイトがんばってくださいね」
約束と言うのはピアノの練習のことだろう。僕がまゆ先輩にお願いします。と言うとまゆ先輩は笑顔でうん!と返事をして、車に乗りバイト先に向かっていった。
「じゃあ、帰ろうか」
まゆ先輩を見送った後、春香は強引に僕の手を取り、手を繋いで歩い始める。僕たちと同じ、下校中の学生にチラチラ見られながら僕と春香は手を繋いで歩いていた。めちゃくちゃ恥ずかしいけど、僕にとっては幸せだった。
「あ、いろいろ買わないといけないものあるからスーパー寄っていい?」
「うん。もちろんだよ」
僕は春香と手を繋いだままスーパーに入った。スーパーに入ってすぐに、僕は春香の手と繋がれていない方の手で買い物カゴを手に取った。
春香は必要な食材や、洗剤などの消耗品を次々と買い物カゴに入れてお会計を済ませる。
「あれ、りょうちゃんにはるちゃんじゃない。お疲れ様〜」
僕と春香がスーパーから出ると僕たちと入れ違いでスーパーに入ろうとしていたユーフォパートのあーちゃん先輩に声をかけられる。春香は慌てて僕と繋いでいた手を離しながらお疲れ様です。と返事をする。僕もお疲れ様です。と、あーちゃん先輩に挨拶する。
「もしかしてお邪魔だったかな〜声かけちゃってごめんね。また、明日のサークルで会おうね」
あーちゃん先輩はそう言いながら逃げるようにスーパーの中に入っていった。あーちゃん先輩がいなくなると、春香は再び僕と手を繋ぐ。春香の手はさっきよりも温もりがあり、チラッと春香の顔を見ると真っ赤に染まっていた。
僕と春香は手を繋いだままアパートに帰る。アパートに帰るとすでに夕方で僕と春香は夕食の準備を始めた。今日は2人でカレーライスを作ることにした。春香が、僕に指示を出し、僕はまず、タマネギの皮を剥く。その間に春香は米を洗い炊飯器のスイッチを押す。
タマネギの皮を剥いた頃には春香が、人参の皮むきを始めていた。しかも包丁で…すごいなぁと思いながら僕はピーラーでじゃがいもの皮むきをする。
その後、僕は春香に言われた順番で、野菜を切る。その間、春香はすでに肉を炒め始めていた。そこにじゃがいも、人参、タマネギを入れて煮込んでいく。そして頃合いを見て春香はカレールーを鍋に入れた。
「りょうちゃん、一緒に持って…」
お玉を使って鍋の中の具材をかき混ぜていた春香が恥ずかしそうに小さな声で言う。
「え…」
「2人で一緒に煮込むのが美味しいカレーを作る秘訣なの!ほら、早く」
僕は春香に言われた通り、春香が持っているお玉を掴む。
「違う。手を重ねて!」
春香は不満そうな表情で言う。僕はお玉から手を離して、お玉を掴んでいる春香の手にそっと被せるように春香の手に自分の両手を重ねた。すると、春香は満足そうな表情でカレーをゆっくりと混ぜ始める。春香が手を動かすのに合わせて僕も手を動かす。
「うん。そろそろいいかな」
しばらく一緒にカレーをかき混ぜて春香は満足そうに言いながら空いていた手で火を止めた。
「じゃあ、りょうちゃん、ご飯をお皿に盛り付けてくれるかな?」
「うん。わかった」
僕は春香に言われた通り自分と春香の分のご飯をお皿に盛り付ける。その間に春香はソースなどを入れて味の調整をしていた。
そして、僕が盛り付けたごはんにカレーをかけてカレーライスの出来上がりだ。さっそく、カレーライスをテーブルに運び2人でいただくことにする。
「いただきます」
「あ、りょうちゃん、待って」
僕がカレーライスをスプーンに載せた時、春香が言った。何故だろうと僕が考えていると春香は自身のスプーンにカレーを載せて僕の口の前に持ってくる。
「美味しいカレーを作る最後の秘訣だよ。ほら、食べて」
春香に言われた通り僕は春香のスプーンに口をつけてカレーをいただいた。
「美味しい」
「でしょ。ほら、りょうちゃん、お返し忘れてるよ」
春香に言われて僕も春香の口元にスプーンを動かす。すると、春香はゆっくりとスプーンに口をつけて味わうようにカレーを食べ、うん。美味しい。と口にする。
その後、それぞれでカレーを食べて、食器の後片付けをしてそれぞれ入浴を済ませてリビングでスマホをいじっていた。
「ねえ、りょうちゃん、今日も一緒に寝ていい?」
「うん。いいけど…」
「やった!じゃあ、もう寝よう」
春香は嬉しそうに立ち上がり、僕を引っ張って洗面台に向かう。そして歯磨きをして、僕の部屋に向かう。寝る時間としてはだいぶ早い気がするが、昨日全然眠れなかったのでもうすっかり眠くなっていた。
僕の部屋に入って、僕は倒れるようにベッドで横になり、すぐに熟睡してしまった。
私が、歯磨きを終えてりょうちゃんの部屋に入るとりょうちゃんはすでに熟睡してしまっていた。
「もう寝てるの…早いなぁ…」
私はそう呟きながらりょうちゃんの隣で横になる。その際に、りょうちゃんの寝顔がかわいかったのでつい写真を撮ってしまった。
「りょうちゃん、好きだよ」
私はりょうちゃんの耳元でそっと囁いてりょうちゃんの頬に軽く唇をつけた。
そして、私はりょうちゃんをそっと抱きしめる。いつもなら緊張して腕を抱きしめることしかしないが、今日は優しくだけどりょうちゃんの体に引っ付くようにして抱きしめた。
幸せだった。ずっとこうしていたいと思うくらい幸せだった。今日だけはこの幸せをずっと感じていたいと思いながら私は眠りについた。
幸せを感じながら眠りにつけたのだった。
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