皆んなで遊びます。
「真昼くん。もっと私の身体を揉むように塗り込んで? 真昼くんならどこに触ってもいいから、たくさんたくさん塗って欲しいな……」
「分かったよ」
俺はそう答えて、姉さんの身体に日焼け止めクリームを塗り込む。
「……きゃっ!」
「姉さん……まだちょっと背中に触れただけだろ? それだけで、そんな艶っぽい声出すなよ」
「ふふっ、ごめん。でも思った以上にくすぐったかったから」
「そういえば、姉さんは背中が弱かったな。……じゃあ、こことかこうすると……もっとくすぐったいんじゃないか?」
俺は掌で日焼け止めクリームを伸ばして、姉さんの背中を指先でツーっとなぞる。
「きゃっ! それくすぐったい! もっとやって!」
「……あれ? もっとやって欲しいの? くすぐったいのに?」
「うん。くすぐったくて……凄く気持ちいい。後で真昼くんにもやってあげるね?」
「……俺は、いいかな」
「ダメ。真昼くんの肌は綺麗なんだから、日焼けしちゃもったいないでしょ?」
「いや、そういう問題じゃないんだけど……。いや、まあいいか。じゃあ頼むよ。いっぱいくすぐったくしてくれ」
「うん! 真昼くんは首筋が弱いから、いっぱいくすぐってあげるね?」
そんな風に、2人でただイチャイチャする。人目もはばからず、まるでこの場に俺と姉さんの2人しかいないように、2人だけの時間を楽しむ。
「…………」
「…………」
「…………」
そんな俺たちの姿を、3人はただ黙って眺める。……3人が何を考えているのか、いまいち分からない。いつもの3人だったら、無理やりにでも俺たちの邪魔をしてくる筈なのに、今日の3人はとても静かだ。
摩夜もさっきは俺に抱きついてきたけど、すぐに矛を収めた。普段の摩夜なら、もう少し噛み付いてきてもおかしくないのに……。
「…………」
……3人にはきっと、何か考えがあるのだろう。
でも今更、3人が何をしてこようと関係ない。俺と姉さんの気持ちは、もう何をされようと揺らいだりしないから。
「真昼くん。いっぱい塗ってくれて、ありがとう。……じゃあ次は私が塗ってあげるね?」
「優しく頼むよ?」
「うん、分かってるって! ……で? どこで塗って欲しい? 掌だと普通だから、おっぱいで、とか? それとも足の裏とかで塗った方が、ちょっと背徳的で興奮する?」
「……なんで興奮させようとしてるんだよ。普通に掌でいいよ」
「ふふっ、分かった。やっぱりそういうのは、夜じゃないとダメだよね? ……じゃあ今は、掌で優しく触らせてもらうね? 私の真昼くんの身体を……」
姉さんは3人の方に視線を向けて、嘲るように笑みを浮かべる。……しかしそれでも、3人は動かない。
「…………」
「…………」
「…………」
3人はやはり黙ったまま、まるで人形のように俺たちの姿を眺め続ける。
それが少し……いや、かなり怖かった。
まるでこちらの考えなんて全てお見通しで、俺と姉さんはただ泳がされているだけ。……そんな錯覚を覚えてしまうほど、今日の3人は不気味だ。
だから俺はそんな不安を振り払うように、ただ姉さんに甘え続けた。……見せつけるように、分からせるように俺たちはただ、イチャイチャと時間を過ごす。
そしてついに、3人が動く。
「真昼。それに……朝音さん。そろそろ、ボクらとも遊ばないかい?」
「せっかく5人で遊びに来てるんだし、ちょっとは皆んなで遊ぼうよ? いいでしょ? お兄ちゃん」
「そうっスよ。この砂浜にはあたしたちしか居ないんスから、皆んなで騒いだ方が絶対に楽しいに決まってるっス!」
3人はそう言って、どこか作り物のような笑みを浮かべる。
「……じゃあ、そうするか。姉さんも……構わないよな?」
「うん。せっかく皆んなで来たんだしね。……えっと確か、久遠寺さんが何かゲームを考えてくれてるんだっけ?」
姉さんはどこか試すような目で、桃花を見る。
「はい。……と言っても、ボクは朝音さんとは違って……いや、記憶を失くす前の朝音さんと違って、手の込んだゲームなんて考えられませんから、このビーチボールで遊ぼうと思うんです」
「ビーチバレーでもするんですか?」
「……いや、5人だと1人余ってしまうだろ? だからただ単に、ボールを皆んなで打ち合って、落とした人が罰ゲーム……っていうのでどうかな?」
桃花はそう言って、皆んなの顔を見渡す。
「いいんじゃないっスか? それくらい単純な方が、盛り上がりやすいっスからね」
「うん、そうだね。でも罰ゲームって何をすればいいの? 会長さん」
摩夜のその質問に、桃花はどこか楽しむように答えを返す。
「……そうだな。落とした人が1枚ずつ服を脱いでいくっていうのは、どうかな?」
「いや……桃花。それは、無理でしょ? 俺なんか1枚しか来てませんし、皆んなだって1枚でも脱いだらダメでしょ」
「うん、そうだよ。真昼くんの言う通りだよ。皆んなは私と違っておっぱいが小さいんだから、真昼くんに見られたら恥ずかしいでしょ? だからそれは、やめておいた方がいいよ?」
「……くふっ、冗談ですよ? 朝音さん。それに、真昼も。流石のボクもこんな公共の場で、そんなことはさせませんよ。……そうですね。罰ゲームは、自分の秘密を1つ告白するとかで……いいんじゃないかな?」
桃花のその言葉に、各々頷きを返す。俺からも特に、異論は無かった。だって言いたくないような秘密を口にする必要は無いし、それに今更、彼女たちが何を言ったところで、俺と姉さんの愛情は揺らいだりしない。
……いや寧ろ、このゲームは俺と姉さんの仲の良さを見せつけるチャンスだ。だって今の俺と姉さんには、3人が聞きたくないような秘密がいくらだってあるから……。
「じゃあ、 始めようか!」
そんな桃花の声とともに、楽しいゲームが始まった。
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