皆んなで考えます‼︎
深夜。明日に備えてもう眠ろうか、そう思っていた
「……また姉さんか……。でも、もうこんなの関係ない。今さら姉さんの言うことを聞く必要なんて……」
そう呟いて、メッセージを削除しようと指を伸ばす。……けど、ついでのように送られてきたもうもう一つのメッセージに、摩夜の動きは縫いとめられる。
「……あの女、一体なにを考えてるのよ。…………こんなこと言って、どうするつもりなの……?」
このメッセージの真偽を、今から朝音に問いただすべきだろうか。それともこのメッセージ通り、明日の朝に話をするべきなのだろうか。
摩夜は少し、頭を悩ます。
「……姉さんのことだから、このメッセージは私以外の女にも送ってる筈。なら、今から姉さんを問い詰めるより、明日の朝に他の女の前で問い詰めた方が手っ取り早いかな……」
……でもそれが、朝音の狙いかもしれない。
摩夜は一度息を吐いて、もう一度メッセージに視線を向ける。
『明日の朝、学校が始まる前に話したいことがあるの。だから、明日の朝7時にあの自然公園に来て』
その言葉通りに行動するのは、危険だ。真昼は明日の放課後、学校が終わってから皆んなを呼び出すと言っていた。だから朝音は、それまでの間に何か妨害でもしてくるつもりなのだろう。
そこまで考えて、摩夜は何かに気がついたようにニヤリと口元を歪める。
「ふふっ、姉さんも哀れだね。きっと今日のデートでお兄ちゃんに振り向いてもらえなかったから、私の邪魔をするつもりなんだ。……可哀想な姉さん。もうお兄ちゃんは私のものなんだから、何をしても無駄なのに……」
摩夜はスマホを机に置いて、ベッドに寝転がる。そして明日のことを考えて、蕩けるような笑みを浮かべる。
「……もういいよ、姉さん。これで最後になるだろうから、明日だけは付き合ってあげる。でもどうせ明日、お兄ちゃんは私を選んでくれる。そしてそうなったら、ようやくお兄ちゃんと……ふふっ」
明日のことを考えると、どうしても笑みが溢れてしまう。明日、真昼がどんな風に告白してくれて、どんな風にこのベッドで自分を……愛してくれるのだろうか。それを考えると、胸の内が幸福だけで満たされる。
「……ふふっ、楽しみだなぁ」
最後にそう呟いて、摩夜はゆっくりと目を瞑った。
◇
「くふっ、ようやく準備も終わったね。鎖もあるし、首輪もある。……それに他にも色々、真昼に楽しんでもらえそうなものを揃えられた。……ふふっ、明日が楽しみだな」
桃花は少し、考えてみる。真昼をこの部屋に繋いで、困惑する真昼に色んなことをしてあげる。そうすると真昼は、どんな顔で喜んでくれるのだろうか、と。
「……真昼、君の可愛い顔を想像するだけで、ボクはどうにかなってしまいそうだ……! もう一生、真昼はボクだけのものになる。そしたら……」
と、そこで、まるで桃花の思考を遮るように、スマホに一通のメッセージが届く。
「……何か光ったね。……ああ、メッセージが届いたのか。ボクはこういうのは苦手だから、連絡があるなら電話にしてくれっていつも言ってるのに……。えーっと、誰からかな…………」
桃花はおぼつかない手つきで、スマホを操作する。その姿はまるで子供のようで少し微笑ましさを感じるけれど、メッセージの内容を確認した瞬間、桃花の目の色が変わる。
「なるほど、ね。……これは朝音さんも焦っていると、とるべきか。それとも、その逆か……。まあどちらにせよ、無視するわけにはいかなそうだね。……ふふっ」
桃花は余裕を崩さず、ただ笑みを浮かべる。桃花の中では、もう結末は決まっている。明日、真昼がどんな選択をしようと、真昼はこの場所で一生を過ごすことになる。
だから桃花が憂うことなんて、何一つありはしない。
「朝音さん。貴女が今さら何しようと、もう遅いんだよ。もう誰も、ボクを止められない。ボク自身にだって、ボクを止められないんだ……!」
桃花の胸の内で、ただ歪んだ欲望が暴れまわる。
真昼に触れたい。真昼を困らせたい。真昼を虐めたい。真昼を虐げたい。真昼を踏みにじりたい。
もっともっともっと、真昼に喜んで欲しい……!
「……ふふっ」
この欲望が、どうしようもなく自分勝手なものだと桃花は理解している。けどもう欲望が大きくなり過ぎて、桃花自身にもそれを止めることができない。
「…………ごめんね、真昼。でもボクはもう、我慢できないんだ。だからせめて、君に出来る限り喜んでもらえるよう頑張るよ。……愛してるよ、真昼」
桃花はベッドに腰掛けて、ぎゅっと強く枕を抱きしめる。そしてそのまま横になって、目を瞑る。
あらゆる狂気に彩られた部屋で、桃花はただ少女のように眠りについた。
◇
「……明日の朝、来て欲しい。それだけなら、無視してもいいんスけどね……。でも、なんなんスかね、あの女。こんなメッセージを送られたら、無視するわけにはいかないじゃないっスか……」
三月は冷めた目つきで、しばらくスマホを睨む。けれど、そんな事をしてもらちが明かないと気がついたのか、スマホを机の上に置いてそのまま椅子に腰掛ける。
「あの女の考えてることは、どうしても分からないっス。……でも、あたしにはお兄さんがついてるっス。だから絶対に、誰にも負けたりしないんス」
三月は愛おしそうな表情で、机の上に飾ってある大量の真昼の写真を眺める。そうすると彼女の中にある不安は、どこかに消し飛んでしまう。
「……お兄さんが居るから、今まで頑張ってこれたんス。そんなお兄さんが……あたし以外のものになるなんて、絶対に嫌っス。だからどんなことをしても、お兄さんをあたしのものにするっス。神さまは、あたしだけのものじゃないと……意味ないんスから……」
三月は、これからのことを考える。……仮にもし、真昼が別の女を選んだとする。それはとても嫌なことだ。……けどこの部屋に連れてこれば、真昼は絶対に自分を好きになってくれる。
だから、何の心配もいらない。
明日の為に、色々と準備をしてきた。真昼が少しでも、喜んくれるように。真昼が少しでも、笑ってくれるように。真昼に少しでも、好きになってもらえるように。色んなものを準備した。だから真昼は、絶対に自分を受け入れてくれる。
「……お兄さん、喜んでくれるといいなぁ」
三月は蕩けるような妖艶な笑みを浮かべて、目を瞑る。これから自分のベットは、真昼に使ってもらうことになる。だから三月は、椅子の上で小さく丸まって静かに眠りについた。
◇
そして、
「……どういうことですの……?」
連絡先なんて交換していない筈の真昼の姉から、メッセージが届いた。……それくらいなら、納得できなくもない。もしかしたら真昼が自分の連絡先を教えたのかもしれないし、そうでなくても連絡先くらい調べようと思えば調べられることだ。
けど……。
「明日の朝、学校が始まる前に自然公園に来て欲しい。……明日は真昼さんが選んでくれる日なのに、どうしてそんなことを……。それに……」
芽衣子は軽く息を吐いて、もう1通のメッセージに視線を向ける。
「真昼さんから大切な話がある……って、本当なのかしら? 真昼さんは明日の放課後に話をするって仰ってたのに……気が変わったんでしょうか?」
芽衣子は、分からない、と言うように首を傾げる。
「……でも、無視する訳にも行きませんから、行くしかありませんね。……あ、でも一応、真昼さんに確認の連絡を……」
そう呟いて、芽衣子は真昼にメッセージを送ろうとする。……けど、どうしても手が動いてくれない。
「真昼さんは明日、選んでくれるんです。……それはとても嬉しいことなのに、どうしても……」
芽衣子はどうしても、怖くなってしまう。もし、自分が選ばれなかったら……。そう考えると、怖くて怖くて手が動かなくなってしまう。
「……大丈夫ですわ、芽白 芽衣子。貴女なら、きっと大丈夫です。……もうやれることはやったんですから、後は自分を信じるしかないんです」
芽衣子はスマホを置いて、ぎゅっと強く目を瞑る。今の芽衣子には、真昼にメッセージを送ることなんてできない。もし何かの拍子で、真昼の想いを知ってしまったら……そう考えると、怖くて手が動かなくなってしまうから。
「…………真昼さんが、悔いのない選択をできますように……」
だから芽衣子は祈るようにそう呟いて、静かに眠りについた。
◇
そして、翌日。朝早くから集まった4人の少女たちに、ニヤリとした笑みを浮かべた朝音が告げる。
「私ね、昨日……真昼に告白されたんだ」
そうして、波乱万丈の1日が幕を開けた。
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