みんなで遊びます!
「やあ皆さん、はじめまして。ボクは真昼の通う学園で生徒会長を務めさせてもらっている、
会長はそう言って、みんなの前でどこか芝居掛かった仕草で頭を下げる。
「おっと、桃花ちゃんじゃん! おっひさー」
そんないきなりの会長の挨拶を受けて、一番はじめに口を開いたのは姉さんだった。
「……お久しぶりですね。朝音さん」
「うんうん、久しぶりー。何年振りかなー。桃花ちゃん、摩夜ちゃんの誕生日、祝いに来てくれたんだねー。ありがとー。やっぱり桃花ちゃんは、昔から優しいよね」
「…………いえ、真昼の妹さんなら当然ですよ」
2人はそう言って、意味深な笑みを浮かべ合う。そういえば姉さんと会長は、知り合いなんだった。会長が1年の時、姉さんが3年で何かしらの交流があったらしい。……詳しくは知らないけど、会長と姉さんは何かあったらしく、会長は少し姉さんを怖がっている。
「……えっと、会長さんですよね。この前のはその……ごめんなさい」
摩夜は2人のやりとりが終わるのを待ってから、そう言って頭を下げる。……摩夜はちゃんと、この前のことを覚えていたのか。
「やめてくれ。そんなことをして欲しくて、ボクはこの場に来たんじゃない。ボクはただ、純粋にお祝いをしたくて来たんだ。……はいこれ、プレゼント。誕生日おめでとう、摩夜くん」
会長は頭を下げる摩夜に優しい笑みを返して、綺麗に包装されたプレゼントを手渡す。
「……ありがとう……ありがとうございます……! 会長さんは、優しいんですね!」
「いや、当然のことだよ。真昼にはいつも、世話になっているからね」
「…………そうですか。……いや、それでも嬉しいです。ありがとう」
そして、2人は笑い合う。よかったって、素直に思う。摩夜は最近少し変だけど、根は良い子だ。だからできれば、皆んなと仲良くして欲しい。
「……どうやら、初対面なのはあたしだけみたいっスね。あたしは摩夜の同級生の
「ああ、突然押しかけて悪いね。ボクは久遠寺 桃花だ。よろしくね、三月くん」
「はい。よろしくっス!」
これで、自己紹介は済んだ筈だ。なのでとりあえず、俺が場をまとめるように言葉を引き取る。
「んじゃ、自己紹介も終わったみたいだし……どうする? ゲームの続きでもするか? それともここは一旦──」
「いやいや、何か楽しくゲームをしていたのだろう? だったらそれを、続けようじゃないか。ボクはこうみえて、ゲームが得意だからね」
俺が言葉を言い切る前に、会長はそう言葉を挟む。
「……そうします? ……じゃあ姉さん。くじの追加、頼めるか? 俺はその間に、会長にルールを説明しておくから」
「りょーかい! じゃあぱっぱと作っちゃうよー」
そうして、楽しい楽しい王様ゲームが幕を開けた。
◇
「やった! 王様だ!」
そう1番はじめに笑ったのは、会長だった。
「うー、先を越されたっス」
「うん。でも、まだまだこれからだよ」
「ふふふっ、じゃあ桃花ちゃん。そのカードの束から好きな色のカードを引いてね。それでそこに命令が書いてあるから、何番と何番っていう番号だけ桃花ちゃんが決めるの」
「了解した。…………では先ずは、手始めに1番簡単な青のカードから引こうか」
そう言って会長は、青の山札から1枚カードを抜き取る。
「…………いや、凄いことが書いてあるな……。でもまあこれは、そういうゲームなのかな? ……うん。それでは命令だ。2番の人の膝に4番の人がキスをしてくれ」
会長のその言葉を聞いて、俺はジロリと姉さんを睨む。
「おい姉さん。青のカードは、普通のことが書いてあるんじゃないのか? なんだよ、これ」
「あれ? 別に普通じゃない? 膝にキスするくらい、可愛いもんじゃん。……それより! 2番と4番、誰なのかな? 私は残念ながら3番だよー」
「…………」
膝にキスって、そんなに普通のことだろうか? 俺としては、すげー恥ずかしいと思うんだけど……。でも俺以外の皆んなは、特に文句を言う気配がない。なら俺も、それに合わせた方がいいのか?
「……でもなぁ」
……俺は自分の番号を見て、軽くため息をこぼす。
「……2番は……私……」
摩夜はそう、少し恥ずかしそうに手を挙げる。……俺はその姿を見て、降参するように手を挙げる。
「…………4番は俺だよ」
「お、じゃあ真昼が摩夜ちゃんの膝にキスするんだね。ヒューヒュー頑張れー」
「摩夜、今日はスカート短いっスから、ちゃんと見えないように抑えとかないとダメっスよー」
「……ふふっ、どうするんだい? 真昼、摩夜くん。1発目から降参するのかな?」
3人がニヤニヤとした目で、俺と摩夜を見る。俺は……俺はもう覚悟を決めて、真っ直ぐに摩夜と向き合う。
「摩夜……いいか? お前が嫌なんだったら俺は……」
「ううん。お兄ちゃんなら、いいよ。……来て」
摩夜はスカートを両手で抑えて、恥ずかしそうに右脚を俺に差し出す。俺はそんな摩夜の前に跪いて、できるだけ上を見ないように膝に……………………キスをした。
「…………」
摩夜は顔を真っ赤にして、脚を引っ込める。俺は大きく息を吐いて、立ち上がる。
「……こりゃもう負けられないな。というか、絶対に姉さんを負かしてやる」
「お、真昼がついにやる気になったね。……よしっ、それじゃあどんどん行くよー」
そして、白熱したバトルが始まった。
◇
結果から言うと、俺は散々な目にあった。天川さんの耳に息を吹きかけたり、会長の指を舐めさせられたり、姉さんをお姫様抱っこしたり、そんなのばかりだ。そしてなぜか、俺だけ王様になれてない。……ほんと、なんでだろ? 俺こんなに、運悪かったけ?
そんな風に苛烈? な戦いを重ねながら、ゲームは終盤に差し掛かる。
「よしっ! 盛り上がってるところだけど、そろそろ時間もあれだし、残り回数を決めようか! ……うーんと、じゃあ残り3回。残り3回で誰もギブアップしなかったら、罰ゲームは無し。みんなで仲良く、お皿洗いをしよう!」
「了解っス! ……くっくっくっ、燃えてきたっスよー!」
「うん。ボクはこう見えて、負けず嫌いだからね。ここは勝たせてもらうよ」
「私も……って、あれ? お兄ちゃん、どうかした?」
「……いや、なんでもない。それよりも、始めようか」
俺は努めて疲れを顔に出さないように気をつけながら、摩夜に笑顔で返事をする。……摩夜は楽しんでいるみたいだし、俺が水を差すわけにはいかないもんな。
「それじゃあ、はっじめっるよー! ……せーの……」
「王様だーれだ!」
そのかけ声とともに、皆んなで一斉にくじを引く。そして、王様は……。
「あ、私だね!」
姉さんだった。姉さんは、微妙に王様になる数が多い。というか、俺だけ0なのはやっぱりおかしい。
「また姉さんかよ、まあいいけどさ」
「えっへへ〜。私は運がいいからねー。でも真昼は今日、ちょっと残念だよねー」
「……うるさいな」
「まあまあ、お兄さんはこれからっスよ」
「そうだよ。頑張ってね、お兄ちゃん」
「……ふふっ、愛されてるね。真昼は」
なんか皆んなで慰めてくれて……るのか? まあでもとりあえず、お礼は言っておこう。
「ありがとう、皆んな。じゃあ姉さん、カード引いちゃってくれ」
「オーケー。じゃあ行くよー!」
姉さんは躊躇なく、赤い山札からカードを引き抜く。……まあこのカードの色分けは、結構いい加減だから問題はない。……多分、姉さんの好みなんだろうけど、お姫様抱っこが赤で、膝にキスが青だったりするんで、なんの指標にもならない。なので赤色だからといって、特別際どいのが来るとは……。
「あ、ついに引いちゃった。ジョーカーカード」
姉さんはそう言って、ニヤリと笑う。
「ついにきたか、姉さん。……って、ジョーカーカードの番号も王様が選ぶの?」
「そりゃね、なんたって王様だからね」
「では、朝音さん。命令をお願いするよ。……一体何をしてくれるのかな?」
「くふっ。じゃあ命令いくよ」
姉さんはニヤニヤとした目で、こっちを見る。そして、まだ誰が何番か分かっていない筈なのに、ゆっくりと俺の方に近づいて来る。
そして、姉さんは俺の目の前で立ち止まって、言った。
「……王様が1番の人にキスをしてください」
1番は俺だった。
「……それは……」
それは、流石にできない。そう口を挟む間も無く、姉さんは俺にキスをした。それもただ、唇と唇を合わせるだけじゃない。貪るように激しく強く、姉さんは俺にキスをした。
俺はそれに抵抗することもできず、ただ唖然と姉さんに唇を差し出した。
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