2 作戦
ルナたちは相手の思惑を逆手に取った作戦を立てた。例の魔力中毒の男が現れたらノクスが囮になり、わざと彼に捕まる。ノクスは彼に囚われた少女を見つけ出し、クランテの光の魔法の導きを受け、一緒に脱出する。その際、闇の魔法を放ち、自分たちの気配を消すとともに、彼を巡査の待ち構える方角へと誘う。――大まかに、このような作戦を立てた。
ノクスをわざと敵の手に渡すことに、エクラは反対した。
「ノクスをそんな危ない目に遭わせるなんてあたしは嫌よ。ルナだってあんな目に遭ったばかりなのに。何かあったらどうするの?」
心配するエクラに、クランテが力強く説得した。
「わたくしが光の魔法でノクス様と魔法使いの女の子をお守りします。危ない目には遭わせません。必ず無事に戻ってきます」
「だけど……」
「光の魔法の使命は守護と導きです。必ずお二人を守り通して見せます。わたくしを信じて下さい」
ルナも頷いた。
「光の魔法は取り分け強い人間にしか宿らないと言う。クランテが助けてくれるなら百人力だよ。――だが、ノクス、お前がクランテを心の底から信用しないと、この作戦は上手くいかないよ。お前、この子をちゃんと信用できるのか?」
試すようなルナの言葉に、ノクスは何も返事ができなかった。どう返事をしたらいいのか迷うように、硬い目でルナを見返している。黙ったままのノクスの代わりに、クランテが言った。
「わたくしがノクス様を導きます。何も心配はいりません。ノクス様は合図の魔法を放って下さるだけで大丈夫です。後は全てわたくしの仕事です」
ルナは困ったような笑顔を浮かべてクランテに言った。
「とても十四歳とは思えない、しっかりしたお嬢さんだね。クランテがそこまで言うのなら、私はもう何も疑わないよ。ノクスや魔法使いの少女を、守ってやってくれ」
「はい。それがわたくしの使命です」
「エクラも、それでいいね? 私もお前も、今回は取り込まれた二人を救護する役割を担ってる。しっかりやるんだよ」
「うん。自分の仕事は、きちんとやるわ。ただ、思い出しただけ。木に括り付けられたルナを見つけたときのこと」
ルナは笑ってエクラの頭を撫でた。
「私はもう元気になったのだよ。そんな恐いことは忘れなさい」
「ノクス、クラちゃん……」
エクラは二人に歩み寄った。
「危ないこと、しないでね。ちゃんと元気に帰ってきてね」
「大丈夫だよ、エクラ」
「そうです。みんな無事に戻ってきます。大丈夫です」
みんなの話を聞いていた老執事も大きく頷いていた。
その時、使い烏のクレーが出窓をコツコツ叩き、エンデルからの手紙を運んできた。例の男を見つけたのでしばらく動向を探るとのことだった。ルナは『こちらの森へ誘導してほしい』とすぐに返信を書いた。クレーはご褒美の果物をもらうとまた手紙を括り付けてエンデルのもとへ飛んでいった。
「あの男、しばらく南方を根城にしていたようだな。エンデルがしばらく相手を探ってくれるようだ」
「エンデルさん、随分上手に標的を見つけたのね」
エクラが感心していると、ルナは苦笑いした。
「誰か強力な支援者でもいるんじゃないのか? ――さぁ、私たちももう気は抜けないよ。相手をこの森へ誘導するよう、エンデルにも頼んだからね。私はプノレアにも手紙を書く」
男を捕らえるため女巡査のプノレアにも協力を頼んだ。今回組んだ作戦が上手くいくかどうかは分からないが、少しでもこちらの思惑通りに事が運ぶよう、ルナは念入りに準備を進めていった。
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