第37話
《拓人視点》
結衣をリビングに預けてからそのまま風呂に入る。
全身を洗ってから、ゆっくりとお湯に浸かり、全身を温めた。
「ふぅー、今日はちょっと疲れたなぁ…」
朝から色々起こりすぎて、頭が追い付かなかった。
明日はゆっくり過ごそう、何事もゆっくりと、早すぎるのはあまり良くないしな。
十分に温まったから風呂場を出て、部屋着に着替える。
これ以上居るとのぼせそうだった。
喉が乾いたから、リビングに向かうと大人しくなった結衣と母さん、そして
「お、拓人」
父さんが居た。
脇目も振らずにキッチンに向かって、冷蔵庫から麦茶を出しコップに注ぎ込み、一気に飲み干す。
「…何、父さん」
「学校はどうだ?上手くやってるか?」
「……大丈夫、あの時よりは」
俺はコップを流しに置き、逃げるようにその場を後にした。
☆
部屋の前までやってきた俺、静かに深呼吸をしてドアノブを回し部屋に入る。
「おかえり、さっきは助かったわ」
「…勝手に見るな」
俺はアルバムを取り上げ、元あったとこに戻す。
他に見られないか辺りを見渡す。
「せっかく楽しんでたのに…あとアルバムぐらいしか見るものないわよ?」
「それぐらい知ってる、全部処分したし」
処分と言っても物置に全部ぶちこんだだけなんだけど
「拓人、こっち来て」
隣へ来いと、とんとんと叩く。
俺はそのまま隣に腰掛けると、右肩へ頭を乗せる琴音。
「連休明けは大変ね?私たち付き合ってるわけだしさ」
「だな、穏便に済ませたいけど琴音は人気者だし」
「拓人も十分人気者よ、女子の間だけど」
俺は小さなあくびが出てしまった。
琴音の手を握りしめて、うとうととし出した。
「もうちょっとこうしてたかったけど、そろそろ寝ないと」
チラッと俺を見て小さく微笑み琴音はベッドに、俺は下に引いた布団にくるまり、意識が飛んだ。
☆
翌朝、俺はいつものように目を覚ます。
琴音はまだぐっすりと寝ていた。
「…普段綺麗なのに寝顔は可愛いんだな」
俺はスマホに寝顔を撮ると、寝返りを打って反対側に向いてしまった。
もうちょっと見てたいが、今日は日課にしていることがあるためひとまず諦める。
俺は起こさないように静かに部屋を出て、ジャージ姿で外へ向かう。
ちょうど出勤時間と重なった父さんと鉢合わせてしまう。
「拓人、行ってくる」
「…うん」
俺は顔を合わせず、返事をして父さんは仕事場へ向かった。
「はぁ…っと、そろそろ準備しねえと」
運動靴を履き、外に出ると同じような格好で出てきた明莉がこっちを見る。
「おはよ、たっくん」
「…おはよう」
普段はストレートロングなのに何故か髪は一つにまとめてポニーテールにしていた。
「どうしたの?ジロジロと」
「イメチェン?」
すると明莉は首を振って
「運動するときはいつもこうしてる、結構邪魔だし」
と言ってきた。
「それ、似合ってる」
と俺は言って、スマホをポケットにしまいイヤホンをして走っていった。
「ば、バカ!…えへへ」
なんだかんだ言いつつも頬を赤らめながらも隣に付いてくる明莉だった。
走って一時間程経過して家に戻ってきた。
「ま、待って…たっくん速いって…はぁっ…はぁっ…」
「だから無理すんなっていっつも言ってるだろ…?!」
「随分と仲が宜しいことで、拓人?」
俺は恐る恐る、後ろへ振り替える。
ものすごい笑顔でいらっしゃる琴音、あの目が笑ってないんですけど…
「朝起きたら拓人は居ないし、結衣ちゃんに聞いてみたら…ふーん?」
「あーっと、これはー、そのー、ですね…」
「言い訳は後!シャワーでも浴びなさい」
「はい…」
琴音は頬を小さく膨らまし、俺を睨み付けてきた。
本来なら怖いはずなのに、妬いてると思うと何故か可愛く見えた。
「って訳で、じゃあまた」
「う、うん…また」
家に入ると琴音が抱き着いてきた、まだ怒ってるけど。
「…明日私も行く」
「やきもちですか?」
「妬いてなんかない!妬いてなんか…」
琴音の抱き締める力が強くなる、相当不安だったのかな?
「…ほんと琴音って昔から甘えん坊で泣き虫だよな」
「なっ…?!今は関係ないでしょ!」
「…でも嬉しいよ、それだけ俺の事好きなんだって伝わってくるから」
でもなんだかんだ言いながら琴音は優しい、俺はそういうところに惚れたのかな?
今もこうしてお互い笑っていられる、俺は琴音が一番好きだから。
「こ、今回だけなんだから…」
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