第33話
《拓人視点》
普段の調子を取り戻した琴音を見て、俺は少し安堵していたのだが、後ろからものすっごい強烈な視線を感じていた。
「…家でいちゃつくな、バカップル」
「「バカじゃねえ(ないわよ)!」」
「息ぴったり…お兄ちゃんご飯出来たよ、琴音さんも良ければどうぞ」
気付けばテーブルに昼食が並べられていた。
色選り取りの料理に流石に俺は我慢できなかったのか、腹の虫が鳴いてしまう。
その音を聞いて琴音はくすくすと笑っていた。
「わ、笑うな…朝から食ってなかったから仕方ねえだろ…」
「ごめんなさい、まさか…ぷっくく…」
お腹を抑えながら笑いを堪えようとしている琴音に対して、俺は何も言わず、そのままテーブルに向かってただひたすらに食べ続けた。
☆
昼食を取り終えた俺達三人は、リビングでババ抜きをはじめとするゲームで遊んでいた。
ババ抜きは相変わらず俺がずっと一位だったけど、流石にこれだけはそうもいかなかった。
「んー、じゃあこれとこれでー…よしよし」
神経衰弱は記憶力の勝負なので、最も得意としている結衣の独壇場だ。
俺は三組のカードしか出来ず、琴音は五組程なのに対して結衣は残り全部取っていた。
「ね、ねえ結衣ちゃん強すぎない?」
その強さに流石の琴音も困惑している、すっかり上機嫌になった結衣を見て、俺は琴音に対してこう言った。
「しょうがねえよ、一回捲っただけでずっと憶えてられるんだからさ…」
「へ、へぇ…そうなんだ」
俺達兄妹に負けっぱなしなのが悔しいのか、何やら真剣な表情だ。
すると琴音はテレビへ向かい、家庭用ゲーム機のカセットを持ってこちらに戻ってきた。
「今度はこれで遊びましょ、今度こそ絶対に勝つんだから!」
持ってきたのは、某レースゲームの奴だった。
☆
「ちょ!にぃに速いって!」
「そういうゲームなんだから仕方ねえだろ、琴音!俺ばっか赤はやめろ!!」
「これでトップね、ちょっと結衣ちゃん?!それは駄目じゃないかしら!?」
なんというか、意外に結構楽しかった。
琴音は俺にずっと赤い甲羅を投げ続けたり、結衣は琴音がトップになった途端にトゲトゲの甲羅を投げたりしていた。
色々ありながらも各自ゴール、順位発表だ。
「なんとか一位か…あー疲れた」
「結局拓人には敵わないのね…」
「この手のゲーム、私一回も勝てたことないもん」
俺は疲れてそのまま寝転がり、琴音は悔しそうに俺を見て結衣と特訓し始めた。
やっぱこうやって騒ぎながらやるのって結構良いなと思い、二人が夢中になっている間に俺は自室へと戻っていった。
自室に戻ると、通学鞄に入れてある一冊の本を取り出し、読み更けようとした。
ベッドに腰掛けたところで、ノックされる。
「拓人?いる?」
「琴音?邪魔になるかと思ってこっち来たのにもう良いのか?」
ドア越しだが、まさか琴音が来ているとは思ってなかった。
「うん…ちょっと、ね」
静かに部屋のドアが開き、すっと部屋の中に入ってきた。
「?どうした?」
琴音は部屋に入るともじもじしていた、若干顔が赤い。
何度も目を合わせてはそっぽ向かれ、両手には力が入っており、ぐっと握りしめていた。
それと同時に琴音の口が静かに開いた。
「き、今日ね…と、泊まっても良いって…結衣ちゃんが…」
……はい?何ですと?
泊まっていく…?琴音が?
「連休が終わるまで泊まっても良いって…」
「……そう」
どうしよう、二人きりだと顔を真っ赤にしている琴音と一緒だなんて俺理性持つかな…
こういう時の男は怖いって良く言われてるし、何も起こさないよう気を付けないと…嫌われたくねえし
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