第14話 風鬼委員


「巴、もっと周りを見ろ」

「はい、兵衛さん」


 お寺の裏にある広大な森の訓練場。そこには訓練で使う多種多様な武器や防具が用意されており、仮想敵といえる木で作られた人型の物体が巴に対して襲い掛かる。その手には槍や刀、弓や斧が握られており、そのいつくもの凶器たちが今か今かとその刀身を血で染めようと躍起になっている。


「ちげぇよ! まず最初はこいつから仕留めなきゃ先がねぇぜ?」


 兵衛と呼ばれたその男は右手に大きな薙刀を携えており、もう一方の手で懐からクナイを取り出し、遠く離れた木の人形の頭部に勢いよく突き立てる。


「すいません、兵衛さん」

「お前は愚直すぎんだよ。どうして毎回近くの敵からやろうとすんだぁ?」


 五条は片手に小刀を構えたまま周囲の状況を注視する。だが、五条はわかってはいるものの、結局一番最初に目に入った目の前の敵から対処しようとしてしまうのだ。


「頭ではわかってはいるんです。しかし、どうしても誰かを守りながら戦うことを考えてしまい……」

「半人前ですらいってねぇお前が偉そうにほざくんじゃねぇ! そもそも後ろもガラ空きじゃねぇか!」


 今度はクナイと使わずにそのでかい薙刀で五条の後ろに回り込んでいた木の人形を叩ききる。ドコォ!という鈍い音と共に木の人形は木っ端みじんに砕け散った。


「す、すいません」

「いちいち謝んじゃねぇよ。じゃあ聞くがもしお前が多数の敵に囲まれてしまったとき。優先するのは自分の命と護衛対象の命。どっちだ?」

「それは勿論護衛対象の……」

「ちげぇよ!てめぇ自身の命だ馬鹿野郎!」


 兵衛はもう我慢ならないとばかりに薙刀を携え、残りの木の人形を一人で叩ききる。それはもう一瞬の事であり、五条はどう動いたのかさえ見ることができなかった。


「で、ですが護衛対象を守るのが私達の役目で……」

「自分の命を守って半人前。人の命を守れて一人前。それは聞いたことあるよなぁ?」

「それは知っています」

「でもお前が今言ったことはなぁ。人の命を守れて半人前。自分の命を守れて一人前ってことになるんじゃねぇか?」


 微妙な違和感があるものの、優先順位としてはそういう事になるのか。と五条は思う。反論などできる筈もない。


「そうですね……」

「いいか?護衛対象ってのはな。護衛される側なんだよ。守る側より基本弱い奴が守られることになる。そいつらにとってお前は自分の命を守ってくれる存在であり、希望なんだ。お前が死んだらそいつらは絶望して死ぬんだぜ?」


 そうだ。戦う者にとって命を落とす覚悟というのは普通の人よりも持ち合わせているもの。死が怖くないわけではないが、死ぬことを考えていないわけでもない。しかし、只人にとって命の危機は突拍子のない理不尽極まりないもの。それが異形の怪物相手となれば普通の死ではなく、恐ろしい死に方をするのだからたまったものではない。


「私が……間違ってました……」

「お前はまだ覚悟が足んねぇよ。その小刀がいい例だ。お前は技術もある。才能もある。流石五条の家のもんだって思わせられるぜ。だがな、覚悟がなけりゃあそんなもの一切の無駄なんだよ」

「…………」

「希望になれ、巴。理想を追い求めんのならな。だが今は現実を見ろ。じゃねぇと実戦にはとてもじゃねぇが連れていけねぇ」

「…………はい」

「今日の稽古はこれで終わりだ。木偶人形どもをちゃんと片しとけ。藤野。帰るぞ」

「あ、待ってよぉ~!兵衛ちゃん!」


 兵衛と藤野と呼ばれた巫女姿の女性はその場を去ろうとする。藤野は去り際に五条に駆け寄ると、


「まだまだこれからだよ?ひとつずつやっていけばいずれ一人前になるから頑張って!」

「おい、行くぞ!」

「はいはい、今行きますよぉ~っと」


 藤野は兵衛を追って森の奥へ消えてしまった。五条は一人、訓練場の後片付けをする。


「悔しいなぁ……どうして私はこんなにも弱いのでしょう……」


 その目から一筋の涙が流れ落ちる。死の恐怖。いずれ守る命。五条の家のプレッシャー。それは普通の高校生にはあまりにも重すぎる現実だった。


「希望になれ……か……」


 地面に置いた小刀を見る。それは叔父からもらった分不相応な武器。使用者の覚悟によってその形状を変える伝説級の代物。五条の家のコネともいえる不正という名の親の愛。それが五条にとっては計り知れないほどの重圧となっていた。


「強く……なりたいなぁ……」


 誰にもこぼせない弱音を森の奥深くで一人呟く。こんな情けない姿は、学校の友達には見せられないと思いながら。









 五条はまず全体の注意を惹きつけることを第一に考える。この数を相手にしながら上川を守ることは不可能だ。ならば、鬼どもの注意をこちらに集めつつ、各個撃破していくしかない。


 まず優先すべきは小鬼か、でかい鬼か。一番目立つには……


「お前からだ!」


 一番でかい『風鬼』のワッペンを付けた鬼に突進する。風鬼はその馬鹿でかい金棒を二本頭上に掲げると、勢いよく五条のいる地面へめがけて振り下ろす。


 ドォォォォォォン!


 地面が震える。それと同時におびただしいまでの砂煙が周囲を覆いつくす。風鬼は確信する。これで一人は確実にやれたと。しかし、風紀は直後、片脚に激痛が走ったことで片膝をつくことになった。


 ナンダ? ドウシタトイウノダ?


 砂煙がおさまると、片脚が斬られていることが分かった。完全には斬られていないものの、足の半分くらいまで斬られている。


「今まで僕は女性をおぶっていたものでね。本気ではなかったんですよ」


 声が後ろから聞こえる。風鬼は後ろを振り向く。そこには何十体もの小鬼の死体がゴロゴロと転がっていた。


「初速でそれが全力疾走と思いましたか?あなたが振り下ろすギリギリで更に加速しただけの事。種も仕掛けもありません」

「ソウカ ダガソレガドウシタ? マダマダオニハイル ヒトリデタオシキルツモリカ?」

「それはあなたの言う通り無理でしょう。これでも自分の実力はわかっています。今のは躱せても、次は貴方に殺されるでしょう」


 それは風鬼に向けての降参宣言だった。意表を突くことはできても、次は騙せないと。そう口にする。つまりもう打つ手がないと開き直っている事に他ならない。


 風鬼は笑う。他の鬼も笑う。この弱者は抵抗できない。殺されるのを待つだけの余命数分の命だと確信したのだ。

 

 しかし、何かがおかしいと風鬼は思う。目の前の小さき者は依然として諦めていない。それは絶対に死なないという確信があるように風鬼の目には映った。


 ナンデダ? ナニガソウサセル?


「私達をここに招いたのは間違いでしたね。あなたは彼女たちだけにするべきだった。欲を出すべきではなかった。私はともかく、彼をここに誘ったのはあなたのミスです」

「ドウイウコトダ?」

「これだけ暴れたのです。いい加減わかったでしょう。この場所が。情けない話ですがこの場の後始末は彼に任せます」


 これ以上の会話は無駄だと感じた風鬼は焦ったように金棒を頭上に掲げる。一秒でも早く殺さなければ安心できないとばかりに。


「モウイイ シネ」

「"異端狩りの千堂"。あなたの出番ですよ」


 ナンダト!?


 その声は言葉にならなかった。頭上から振り下ろされる金棒はもはや止めることなどできない。そのまま金棒は五条めがけて落ちていき………



 シャン!



 それは奇妙な音だった。およそこの場にそぐわない気の抜けるようなその音は金棒が地面に着くか否かというところで鳴り、そして金棒は粉々に砕け散る。


「…………遅すぎますよ、ヒカリ」


 そこには当然の如く、近藤を背負った最強の一族の一人が佇んでいた。近藤は何があったのか。目を閉じて寝ているようだ。こんな状況でも寝ることができる彼女の神経の図太さに、五条は感心していいのか呆れるべきなのか戸惑ってしまった。


「悪い悪い。五条を探すために屋上へ向かったんだけどさ。屋上から飛び降りるか階段で降りるか迷ってしまって」

「結局どうやって来たんです?」

「飛び降りた。僕のこの力は衝撃も無効化するみたいだからね。地面にこの力を使えばノーダメージで降りられたよ」


 身体能力でも降りられるのでは?と思った五条ではあったが、流石にぶっつけ本番で試すことはできなかったのだろう。どちらにせよ、ヒカリがいくら高いところから降りようと無傷ということがわかった。


「オマエ センドウ ナノカ?」

「ああ、そうだよ。今日知ったばかりだけどね」

「バカナ! オマエガイルナンテ キイテナイゾ!」

「僕も学校が鬼ヶ島になるなんて聞いてないっつーの!それでどうする?僕がやる?巴がやる?」


 掃除当番を決めるノリで話すヒカリに五条は苦笑いをする。勿論答えは決まっている。


「お願いします、ヒカリ」

「いいの?修行は?」

「ええ。もう十分できましたから。今は彼女たちの安否が一番です」

「そんなこと言ってたら修行なんてできないんじゃないの?」


 それはそうだろう。しかし、ヒカリは勘違いしている。そもそも風鬼でさえ五条一人で倒せる筈がないということを。修行云々よりミンチにされて終わるのが関の山だ。ヒカリは近藤がいるから満足に戦えないと思ってるのだ。


「早くしないと巫女さんが……」

「巴。これは僕の戦いだ。近藤さんを君は守っていてくれ」


 ヒカリは五条に眠っている近藤を渡す。どんなに揺らされようが起きる気配すらない。


「ちょ、ちょっと!こっちも助けなさいよ!」


 声のする方をヒカリと五条は振り向く。そこには小鬼に群がられている上川の哀れな姿が


「………なにをしているのですか?」

「かっこよく戦っているのはいいんだけどねぇ!私を守る気ないでしょ!あんた!」

「すいません。小鬼くらいなら何とかなるかなと」

「なるわけないでしょ!このクソ眼鏡!さっさと助けなさいよ!」


 はぁ…とため息をついた五条は仕方ないとばかりに上川の所へ向かう。


「それではヒカリ。でかい鬼はあなたに」

「ああ、巴。小鬼と彼女たちの護衛は任せた」


 茫然と立ち尽くしている風鬼にヒカリは向き直る。でかい鬼たちはただでさえ青いその顔を更に青くしながら後ろへ下がり始める。


「? どうしたんだい?なんで向かってこないの?」


「イタンガリ! イタンガリニ カナウモノカ!」

「キイテナイ! オマエガイルトハ キイテナイ!」

「タスケテクレ! ミノガシテクレ!」


 千堂の事が鬼なんかにも知れ渡っていることにヒカリは驚いた。よっぽど千堂の一族は暴れまわっているらしい。血筋とはいえ、ヒカリはなんだか恥ずかしくなってくる。


「そもそもさ、なんで僕らを襲ったの?」

「ワレラハ フウウキヲミダスモノ コロスダケ」


 風紀を乱したら殺されんの?鬼に?


「ソレガ ワレラノ ゴウ シュクメイダ」

「僕なんかしたっけ?」

「モトモト オンナヒトリ ダケダッタ デモ オマエラモ コロスヨウ イワレタ」


 風紀を乱したといえば今日の殺傷沙汰のことだろう。おそらく上川を狙ってのこと。それに近藤が巻き込まれた形だとヒカリは推測する。しかし、ヒカリたちは命令されてた?誰に?


「教えてくれないと倒すよ?」

「イエナイ! ハナセバ! コロサレル!」

「言わないと絶対に死んじゃうよ?」

「ソレデモダ! イオウトスレバ シヌノロイニ カカッテイル」


 それはどうしようもない。でもすることは変わらない。だから


「話せないなら仕方がない。でも上川さんや近藤さんを殺そうとしたことは許せないんだ。そっちにはそっちの都合もあったんだと思う。仕方なく殺そうとした部分もあるんだろう」

「アア、ダカラ……」

「だから仕方なく僕も殺す。復讐で殺したりなんかしない。正々堂々殺してやる」

「ウ、ウワァァァッァァァ!」


 もはやこれまでと。覚悟を決めた鬼たちが全力でヒカリに殺到してくる。襲っている側が怯えるという矛盾をはらみながら。



「桃太郎のクライマックスだ。鬼退治ならぬ、鬼殺しだけどね」


 

 五分後、すべては終わり、元の学校に戻る。四人は誰一人かけることなく現実に戻る。夜空にはたくさんの星々が。町の光が彼らの期間を祝福するように輝きを増していた。









「てっへらっー☆ 遅れて参上! 藤野琴子でぇ~す!」


 学校の校門に着いた四人はその場違いすぎる巫女服に違和感を覚える。そして、大学生並みのテンションに圧倒されていた。一応、弓矢や薙刀を装着していたが、本当に戦えるのか?と怪しさ満点だった。


 ちなみに近藤は目を覚ました。


「お疲れ様です。藤野さん。無事に終わりました」

「もう~! せっかくピンチの巴を救って好感度を上げようと思ってたのにぃ~!」

「ははは。それはすいません。それだったら来るのが遅すぎますよ?」

「そういわれると申し訳ないなぁ~。でもびっくりだよぉ。巴が実戦だなんて。叔父様が特別な護衛がいるから許可しろっていうんだもん。まだ序列すら決まってない巴の護衛を出来る人なんて千堂の人くらいじゃないぃ~?」

「察しがいいですね。その千堂ですよ。護衛は」

「またまた~。千堂の人がそんな簡単に…………え、マジ?」


 途端に藤野の声がマジトーンになる。それと同時に顔もマジで態度もマジになる。


「失礼しました。第四番隊 妖魔殲滅部隊 三十二番 藤野琴子です。本日は討伐任務と護衛任務。まことにありがとうございました」


 四人は絶句した。こんなにも人って変わることができるのだろうかと。なにより五条ですらその変貌ぶりに驚いていた。


「ふ、藤野さん?急にどうしたんですか?」

「千堂の方には我ら多大な恩と借りがございます。失礼のないように務めるのが『祓い人』としての責務です。それで。千堂の方はどちらですか?」

「あ、僕です。千堂ヒカリです」

「はい。先ほどは失礼致しました」

「あのぅ……できれば自然体でいてもらった方が僕としてもやりやすいのですが……」

「いえいえ。私どもはあなた方に幾度も命を救われた身。感謝してもしきれないのですよ」


 そこでヒカリは思い出す。小雪が前に巫女会に行ったことがあると。


「千堂小雪って知ってる?」

「!! はい。以前一度彼女が来たことがございます」

「その子も今この学校にいるんだ」

「そうでございましたか。彼女は千堂の里から祓い人に向けて千武を届けに来てくれたのですよ」

「千武?」

「はい。千堂の人が"奇跡"で作った武器のことです。私達には絶対に作れない、『概念付与』がついた最高級の武器です。失敗作を持ってこられるようなのですが、性能はピカ一ですよ。巴が持っているその武器も千武ですよ」


 巴の手には小刀だったのが今は太刀になっている。ヒカリは初めてそれに気づく。


「それ小刀だったよね?」

「はい。なんでも覚悟の強さで刀身が変化するのだとか」

「その刀身をよく見てください。千武のマークがついていますよ?」

「え?ほんと?」


 ヒカリはその刀の刀身を凝視する。確かに"千"という漢字の周りに紋様がついている。


「『変化する炎刀』。正規品にはその紋様の下に製造番号が書かれています。黒で塗られているのは失敗作だからなんです」

「これで失敗作?へぇー。これでも強いと思うけどなー」

「はい。本物は『再生阻害』や『威力強化』。さらには『マーキング』なんて機能も取り付けられます」

「凄いね。千堂って」

「? あなたも千堂なのですよね?」

「うん。でも今日知ったんだ。千堂の事は。だから今日が初戦だったんだよ」

「初戦で鬼タイプと戦うとは。流石ですね」

「結構危なかったけどね。それでお願いがあるんですけど……今日お寺に泊めてくれませんか?」

「勿論です。どうぞいつまでも泊まっていかれてください」

「明日には帰るつもりだけどさ」

「そうですか……それは残念です」


 藤野さんは本当に残念そうな顔をする。千堂ってだけでこんなにも歓迎されるものなのだろうか?


「では藤野さん。事後処理お願いします」


 事後処理? 僕らは確かに暴れまわったがそれは別空間のことだから元の校舎には一切傷をつけていない。だというのに事後処理とは何をするんだろうか?


「はい、ではあなた達。こちらに来ていただけますか?」


 不思議がりながらも近藤と上川は藤野さんに近づく。藤野さんは二人の頭に手を置いて目をつむった。


「申し訳ありませんが今日一日の事は忘れてもらいます。大丈夫です。後の事は私にお任せください」


 それを聞いた上川と近藤はパッと藤野から距離を取る。記憶を消す?


「そ、それはダメです!」

「消さない……で……!」

「何故です?とても怖い思いをしたでしょう?」


 祓い人はもし只人が異形の者に出会ってしまった場合。記憶を消す必要がある。それはトラウマになったりしない為と、言いふらされてしまうのを防ぐ為だからだ。


「今日一日の記憶を消すんでしょう?それだと私達のこの関係が……」

「なかったことに……なる……それは……嫌……」


 そうだった。二人は今日友達になったんだった。記憶を消されるというのはそれが無かったことになるということ。明日からはまた上川さんが近藤さんをいじめることになりかねない。


「で、ですが規則ですので……」

「お願いします!初めてできた友達なんです!」

「やっと……一歩を……踏み出せたのに……」


 藤野は困惑する。今までの只人はこんな記憶早く消してくれという人が大半だったのに、消すなと強く言われたのは初めてだからだ。それに聞いた感じこの子たちはどうやら今日友達になったばかりのよう。それを消すのは人としての良心が傷つく。

 仕事を取るか、倫理を取るか。藤野の器が試される。


「どうにかなりませんか?私が風紀委員として彼女たちを監視していきますので……」

「いくら巴でもそれは……」

「僕からもお願いします。小雪さんと二人を見守るので」

「わかりました。記憶消去は断念します」

「!?」


 五条は人には見せられない顔をした。


「そんな顔をしないでください、巴。あなたは五条とはいえまだまだ未熟。権力はあろうとも力はないのです。それに引き換え千堂の方は力もありますし、功績もあります。千堂の方が、しかも二名も二人を見守るというのであればそれに越したことはないのです」


 千堂ってスゲーっと改めて思うヒカリであった。だとしたらもう一つ頼みがある。


「じゃあさ、さっきも言ったけど口調を楽にしてよ。なんだか息が詰まりそうで」

「小雪さんと同じことを言われるのですね……わかりました。じゃあみんなで祓い人の本家にいきましょーかっ☆」


 一気にエンジンかかった!すげぇ!


「みんな?私たちは?」

「どちらでもいいですよ?この際祓い人の事を知ってもらってもいいですし」


 上川と近藤は顔を見合わせる。少しの間そうした後二人は頷いてこう答えた。


「遠慮しておくわ。もうバケモノ関連に関わるのは十分よ」

「私も……怖いのは……嫌……」


 そうですかー、と軽く受け流した藤野は再度テンションを上げながら帰り道を進み始める。


「では途中まで送りましょう!大丈夫です!こちらには異端狩りの千堂と祓い人がいるのですから!何があっても返り討ちです!」


 四人はその様子を苦笑いしながら歩き始める。こうして前代未聞の学校での鬼退治は幕を閉じる。桃太郎のように財宝を手に入れることはできなかったが、かけがえのないものを手に入れたようなそんな充実感と共に。


 ヒカリ思う。そういえば風鬼が言っていた自分たちを殺すように言った人は誰だったのだろうと。だが考えたところでどうしようもない。だからヒカリは考えることをやめた。今はそれよりもこれからのことを考えるべきである。過去より今。今より未来。僕は常に明日を追い求める。





「巫女会楽しみだなー」




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