第69話 脳トレ

 若い頃と違い、年を取ると記憶力が衰える。できていたこともできなくなる。いよいよ惚けてしまうのか……と、不安にもなる。そんなとき、藁にもすがりたい思いですがる「藁」がある。

 「脳力トレーニング」略して「脳トレ」は、この言葉が言われ初めて以来、さまざまな場面で取り上げられてきた。火付け役は、東北大学教授・川島隆太氏の「脳を鍛える大人のドリル」(くもん出版)シリーズ。

 もともと、認知症の予防のために考えられたトレーニング。後に、発症した人にも効果があることが証明され、ブームとなった。だが、病気の治療効果を上げるだけでは、このブームの理由が説明できない。

 大人向け計算ドリル、音読ドリル、漢字ドリル、塗り絵、ゲームソフトなど、自分の頭を使って脳を活性化させる「道具」は、様々だ。だが、ほとんどが、「ドリル」すなわち反復練習であるところがおもしろい。

 反復練習を楽しいと感じる者は、多くない。学校では、「単調」な反復練習ではなく「変化」に富んだ学習が求められてきた。脳を活性化するためには、むしろ昔ながらの「ドリル」の方が効果的であったわけである。

 何も昔に帰れと言っているわけではない。全て旧態然とした学習では、効果のない分野もあろう。しかし、「単調」な反復練習に耐えられなければ、困難な状況に耐えられるはずがない。

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