第57話 独り

 周りと語らずスマホを眺める人を見ると、自分の世界に籠もっている印象を受ける。ネット上の繋がりを求めているのなら、ただの寂しがり屋ということになる。どちらにしても、誰かと直接話しているわけではない。

 周りと関わっていなければ、その人は独り。ネットの繋がりは何時でも切ることができるので、現実の世界との関わりとは違う。現実の関わりがない人は、孤独を愛し、独りでいたいのだろうか。

 人間関係がストレスだという人は、確かにいる。独りが気楽だという人もいる。ストレスが高じて引きこもってしまう人がいたりもする。でも、そんな人でも独りでは生きていけない。誰かの世話になっている。

 学校教育では、集団つまり群れでの学習が一般的。特に日本では、「道徳」「学級活動」などを通して、集団の中での在り方を学ぶ。「自分勝手」で「空気が読めない」者は、群れでの学びを求められてきた。

 群れで生きるのが成長するためだけなら、成長を望まない者に群れは不要。だが独りで生きられない人間は、群れが不可欠でもある。人である以上、群れでいないと不自然だと言い切ってもよさそうだ。

 周りと語らずスマホを眺める「スマホ族」は、群れを仮想空間で夢想している。自分に都合のいい相手を探し、自分の都合で関わりを持つ。電源を切れば繋がりもない。だが「切る」自由は「切られる」自由でもある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る