第47話 誤字
元号が改まって「令和」の文字がテレビで放映されたとき、書を嗜む人たちの一部はSNS上で「炎上」した。「令」が誤字だというのだ。確かに書道字典にはない。文字の専門家として物申す気持ちは分かる。
高校で書道を教えている知人は「あなたなら、この間違いを許せませんよね。」というメールをくれた。のらりくらりとした返事に、しびれを切らしたようだ。だが、「正しい」という言葉を、安易に使おうとは思わない。
書に向き合う生活はしていても、「~すべき」なんて言い方はしたくない、自分がそこまで偉いと勘違いするほど愚かになりたくもない。美しいと思える古典を学び、自らの書を深めるだけで精一杯だ。
国語辞典に載っている「新しい」も、江戸時代に生まれた言葉。元々「あらたしい」だったのが、当時の若者たちの「あたらしい」に置き換えられただけだ。正しさ以外の「流行」という基準で、言葉は変化してきた。
毎年、複数の学校の卒業証書を頼まれている。名前は戸籍通りに書かねばならない。今の戸籍は明朝体活字で処理されているため、「令」の四画目ははねることになる。担当者すべてに書の知識を求めるのは酷だろう。
戸籍に我が子の名を届ける際、文字の形はある程度注文をつけることができる。明朝体活字しか知らない親の子どもが自分の名前を気にするなら、自己責任で改名すればいい。誤字かどうかの判断も、自己責任だ。
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