第30話 等質集団

 バレンタインデーがこの国に定着して久しい。日頃何も言えない女性が愛を語るため贈るはずのチョコは、「友チョコ」という名の「お中元・お歳暮」レベルの贈り物になった。何かと気を遣うはずだ。

 日本人は、贈り物が好きだ。贈り物を貰ったら、同じくらいの金額でお返しするという意識が強い。「お互い様」の感覚というと聞こえはいいが、みんなと同じでないと不安でたまらないのかもしれない。

 江戸時代の農村には「五人組」という相互扶助の制度があり、大戦中は「隣組」という相互監視の制度があった。いずれも「みんなで同じことをやっていこう」「違っていたらダメだよ」という雰囲気があった。

 そういえば、アマチュアゴルフでホールインワンを決めると、一緒にラウンドした人たちに「お祝い会」を企画しなければいけないそうだ。昔、呑みに行った店で小耳に挟んだ話である。何とも日本的だ。

 ゴルファーは、プレー中に自分の打球で怪我をさせたり、クラブが破損したりしたときのために保険に入る。その保険の中に、アルバトロスやホールインワンの「祝い金」が含まれているという。

 保険を使って、個人の手柄・ホールインワンを祝う。ただし企画は手柄をあげた本人だ。会場の確保やメンバーへの連絡調整、記念品の準備まで含めると、かなりの負担になる。人と違うことをすると、結構大変だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る