第072号室 サマービーチ 住民水着調査 ②




 小夜はシスターが死んではいないだろうと思っていたが、異世界の住民と仲良くなっているとは驚く光景で、ましてや水着姿で再会しようなど考えても見なかった。


 少しいじってやろうと笑みを溢す小夜の思惑を超えて、シスターの挙動が機先を制す。誰にも聞こえないほど、唇も微かに震えた程度、しかし、小夜の補聴器はシスターの言葉を確かに聞き取っていた。


「やだ、ロリコンだわ………」


 シスターが身を挺して庇うように身体を割り込ませ、サモニャンと薄っすら姿を現したジャックから、小夜を奪い取るように腕を引いて抱きかかえ、素早く下がる。


 シスターの全身から発せられる一種の緊張は辺りに伝染し、まともな人間であればある程、人としての良心を刺激され共通のへと一歩、歩み寄らせれば、恐怖した小夜が心変わりする。


「………助けてぇ、私このおじさん達にレイプされたのぉ………」

「なんですぅ⤴︎って!!?」


「「コラコラ待て待て………!!」」「それは洒落にならないにゃん!!」「裏切るにしても言葉は選んでくれ!!!」


 初めから見ていた住民は三人共仲良くしていたじゃないかとか、さすがに嘘だろうと悟っていても、途中から来たシスターはそんなこと知らないので振り上げた平手が風を切る!


「このっ!クズ!!」一手で二人の頬を弾き「変態っ!!!」返す手の甲が反対の頬を破壊する。


「待ってくれ!そんな事してない誤解だ!!」「その子に騙されてるにゃん!!」

「私は初対面のあなた達より、よく知るこの子を信じます!!」


「よく知ってるなら分かるだろ!?こいつはそういう事言う!!」「ウソつきにゃ!!」

「なにを!?………………………ん~………!」


 ジャックとサモニャンの言葉にハッとしたシスターが小夜を振り返り、小夜は気合を入れて目を逸らさないように気を付け踏ん張る。


「………私は………一瞬でも彼女を疑った自分が恥ずかしい!」

「恥ずかしいのは、格好だけにして欲しいにゃ!!」「頼むから、もっと疑ってくれ!!」


「そうですかあ?じゃあもう一回だけ」

「えっ!?」


 ジャックの言葉に素早く考え直したシスターが小夜を凝視、不意を突かれた小夜がしまったと顔を作り損ねた一瞬を見逃さず小夜の顎を引く。降参するように目を泳がせた小夜の頭に掌を被せ立ち上がったシスターは、ジャックに手をかざして謝意を表すと、眉間を押さえてサモニャンへ流し目を刺した。


「………誰が、恥ずかしい格好ですって?」


 縮こまるサモニャンを尻目に小夜は、まあアラクネドレスよりは水着の方がマシかもねと思った。

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