第42話 Vで繋がりたい
「はい、そういうわけで始まりました【Vで繋がりたい】なんですけども。最初に自己紹介をさせてもらいたいと思います。司会進行を務めさせていただくのは私『とりかわ』の
「同じく『とりかわ』の
「どうぞよろしくお願いします」
坊主頭とボンバーヘアの凸凹コンビ、お笑いコンビ『とりかわ』の軽快なあいさつがスタジオ内に響く。
スタジオといっても周囲は大部屋を白いパーテーションで区切って作られた簡素なもので、配置されているのも灰色の絨毯の上に置かれた白い長テーブルと、ディスプレイが3つ、壁には番組タイトルのロゴがひっそりと掛けられている程度。
テレビの収録と比べ、舞台セットは明らかに劣っているが、司会の二人は不満など全然感じさせない明るい口調で、進行を続けていく。
「ということで、まずこの立川が番組について軽く説明させてもらいますと、Vとつく人と私たち『とりかわ』が繋がって友達になっていこうっていう見切り発車な番組なわけなんですね」
「そうですね、でも何で、よりによってVなんですかね?」
「本当にね。やるならもっとバリエーションのある文字がいくらでもあったと思うんですけどね。でも、こういう後先考えてないような番組ができちゃうのがWEB番組の良さでもあるんですけれども」
「あぁ、そういうものですかぁ」
「いやいや、そんな
「そうなんですか?」
「最初にあいさつしただろうに。小学校の演劇に出てくる『木』みたいなバイトだとでも思ってたんか?」
「えっ、そのバイトについて詳しく――」
「そこに食いつくな。ほら、ゲスト待たせてるからさっさと紹介いくぞ」
「はーい、それじゃあ、本日の繋がりたいVは~っ」
「バーチャルアイドルの皆さんで~す」
つつがなく進む番組冒頭のトークを経て、立川から紹介の声が上がると、設置されたディスプレイに、バーチャルアイドルの姿が
『こんばんは~』
『こんばんわ~ん』
『……こ、こんにちは』
左側のディスプレイには黒髪のロングヘアをした大人の女性っぽいキャラクター、中央には犬の耳が頭に生えた愛くるしい子供のようなキャラクター、そして右側のディスプレイには、そらの演じるアイドル『うしろ』の姿が現れ、笑顔を浮かべたり、手を振ったりと、各々が自らのアピールに努めていた。
「私たちもね、一応WEBの方でながーく活動をしていたので、バーチャルアイドルには関わりのある方も多いんですけど、今日来ていただいた方はいずれも初共演の方々になりますね」
三者の姿を確認しつつ、立川が話を回していく。
一方鈴木は立川の隣に立ちながら、時折うなずきを入れて
「それでは、
立川の声に続き、ディスプレイに映った面々の自己紹介が始まる。
『改めましてこんばんは。「ニアサイド」に所属しています、「
場慣れしている雰囲気をにおわせながら、にこやかに語るりーや。
そこへすかさず、立川が口を挟んだ。
「はい、開口一番自分を売り込んでいく、とんでもないお姉さんということがわかりましたけど――」
『えぇっ、その言い方ひどくないですか~?』
「そんな甘えた声で言っても騙されませんよ。私、経験から知ってますからね。『ニアサイド』でそういう言い方してる輩は雑に扱っていいって」
『そんな~、ひど~い』
「いや、その見た目で若ぶった話し方してもダメですから、苦痛しかないですから」
「立川、俺はありだと思う」
「いや、鈴木。お前の意見とか聞いてないから。いきなり話に入ってきて『ありだな』って言われて、こっちはどうしたらいいん? まぁいいや、じゃあ次――」
『こんばんわ~ん。バーチャルわんこの「
「はい、個人勢代表の『夢中すずめ』ちゃんですね。名前に犬要素がまったくないことは触れていいんですか?」
『あっ、ちょっとそれは……』
意味深な雰囲気で口をつぐむすずめであったが、立川は一刀両断する。
「はい、多分深い意味はないんでしょうね。ちょっと大怪我しそうな雰囲気がぷんぷんと香ってきますけど、気にせずスルーしていきましょう、では次の方どうぞ――」
『はっ、はいっ!』
立川に促され、バーチャルアイドル『うしろ』の自己紹介が始まった。
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