4「パーティーへのお誘い」

 interwineにて雨宮にこのことを相談した。

まだ確証のない事で人に聞かれて、噂になったら悪いので、

周り客に聞かれないように、スタッフルームで話をした。


「確かに、それだけじゃな何とも言えないな」


ギルドからの相談を受けて、気にはしているが、

結局のところ、様子見と言う話になった。


 スタッフルームを出て、軽く何か食べようかと思っていたら、


「あっ、カズキ、ちょうどよかった」


と声を掛けられた。


「お前らは……」


相手は、イヴの一件で、一度だけ組んだ五人組の冒険者パーティーだった。

ダンジョン以来で、あとギルドでも、

話はすることは無くても、顔を合わせことはあったが、

その時は、鎧姿だから、本人たちは気づいていなさそうだった。


 さてパーティー構成はリーダーで、綺麗なロングヘヤーで、

凛とした顔立ちの格好いい系の美女の剣士のナタリア、

筋肉質で、短髪、顔立ちもがっちりしていて、妙に真面目な女性の重剣士、ルビィ、

斥候で、小柄でお下げ髪の可愛い顔した少女ノーラ、ナイフの扱いに長けている。

あと魔法使いで、ショートカットで、弱気な少年アルヴィン、彼はサポート専門。


「あれ、もう一人はどこだ」?


パーティーには、もう一人少年がいた。

同じく魔法使いで攻撃専門のメイントって奴で、

こいつはちょっと生意気な感じの少年だったが、

その姿はなくて、代わりに、ツインテールの髪型で、勝気と言うか、

フレイの様なツンデレ娘って感じがする外観の女の子がいたである。


 俺がメイントの事を指摘すると、5人のうち4人が、困った顔をした。

するとツンデレ娘が、


「俺がメイントだ」


と言い出した。


「えっ!」


思わず声を上げてしまう。言われてみれば面影はあるが、

でも、女の子にしか見えない


《確かに、その少女はメイントと言う少年と気配が一緒です》


メイントは、


「前にダンジョンに言った時、ラックで、このブレスレットを、

手に入れたんだけど」


因みに、俺が譲ったラックとは別で、

あの後、五人が、第三区画で戦った魔獣を倒して得た物との事。

そして、ダンジョンから帰ってから分析して、

強力な魔法増幅の効果がある魔法の腕輪であることに気付いた。

そしてメイントは、普段から魔道具は杖ではなく、腕輪を使っていたので、

メイントが試しに嵌めたところ、何故か性別が、変わってしまったと言う。

それと髪の毛も伸びた。しかも、腕輪を外しても元には戻らない。

加えてアルヴィンに身につけさせても、特に変化はないと言う。


「まあ、道具としては強力だから、使ってるんだけど」


何とも、複雑な表情で言った。


「そうなんだ」


まあ俺も、性別が変わってしまった身の上だが、

特に不便がないいから、何と声をかけていいか分からなかった。

しかし気になることが、


「ところでどうしてツインテール?」

「何か知らないけど、リーダーとルビィとノーラ、

この方が似合うって言われて、強引に……」


確かに、ツインテールが、かなり似合っている。

あと五人組の構成が一人女性に変わってしまったので、

男一人に、女四人の、何というかハーレム的な構成になっていた。


 そして話を戻して、


「そういや、俺になんか用事か?」


と言うと、ナタリアが、ハッとしたようになって


「そうだった……」


と言い、


「実は、あのイヴって言うオートマトンの力を借りたいんだ。

またパーティーを組んでくれないかい」


イヴの力を借りると言う事は、俺ともパーティーを組む必要がある。

ちなみに、ここで会ったのは偶然だけど、

予定では、ギルドを介して俺に頼むという予定だったらしい。


 急な話に、俺は、


「どうして急に?」


と聞くと、


「実は、ここ最近、仕事の具合が芳しくなくて」


原因は、乱入魔獣。そして毎回、乱入してくるのは、

彼女たちの手に余る上級魔獣ばかり。

おかげで、仕事が、毎回大変で、失敗する事が多くなってきたという。


「今はどうにか踏ん張ってるけど、このままだとランクが下がりそうなんだよ」


彼女たちは、身の丈に合った。仕事を繰り返しつつも、

徐々に難しい仕事に、手を付け、ランクを上げてきたという。

堅実なやり方といえるが、

今は、乱入魔獣の所為で、身の丈に合う仕事も失敗するのだと言う。


「ランクが下がると、今後の仕事にも関わって来るし……」


ランクが上がっても、何かもらえるわけじゃないが、

信用は得ることができる。

そうなれば、自分で探す以外に、冒険者指定の依頼が来るだろうし、

それに報酬の相場もランクが高ければ、連動して高くなる。


(まあ、俺には関係ない世界だけど……)


しかしナタリア達に、と言うかほとんどの冒険者に言える事であるが、

ランクが下がる事は、来る依頼は減り、報酬だって低くなるから、

今後の生活にも関わる。まさしく、死活問題と言える。


 そしてナタリアは言う。


「あのオートマトンの力があれば、上級魔獣の乱入にも、

対応できると思うんだよ。だから、お願いだよ!」


と手を合わせ、頭を下げて必死に、頼んでくるので、断りづらくて、


「分かった」

「ありがとう。恩に着るよ!」


彼女のと言うか、彼女たちの頼みを受け入れる事となった。


 なお側にいたベルも、


「私も、ご一緒させてもらってもいいですか?」


と言い出した。


「アンタ、冒険者ギルドで見たことがあるけど、誰だい?」

「私は、ベルティーナ・ウッドヴィル、

和樹さんとパーティーを組んでいます。ベルとお呼びください」

「カズキ、アンタ、パーティー組んでたんだ」

「ええ」


すると、ナタリアは、腕を組んで、考え込むような仕草をする。

どうも、俺とイヴだけなら、良いがもう一人増えられるのは、

恐らくは報酬面で辛いようだ。ベルも、その事を察したのか、


「お金とは要りませんから、和樹さんと一緒に居られればいいんで」


とはいうが、ナタリアを含め、このパーティーの連中は、

基本、いい人だから


「理由はどうあれ、来てもらうんだから、そうは、いかないよ」


と悩まし気に返してくる。するとベルは、


「分かりました。じゃあ諦めます」


妙に、あっさりとしていた。


「ごめんね」


と言って謝るナタリアだが、俺は、ベルのあっさりとした態度が、

妙に気になった。


 ともかく、一時的だが、五人とパーティーを組むことになって、

この後は、お礼もかねて、一緒に、食事をとる事になった。

しかもナタリア達のおごりであった。もちろんお詫びもかねてなのか

ベルも一緒だった。なお、これまで一緒になる事は無かったが、

以前から彼女たちは時々interwineに来ていたという。

ともかく、その日は、楽しい食事であった。


 食事を終え、仕事が決まったら、

ギルドを介して連絡を入れるという形で、その日は、別れた。

その後、家に帰り、リビングのソファーに座ると、思わず、


「大変なんだな」


と言っていた。この時、リビングにはベルのほかミズキも、

別のソファーでくつろいでいて、


「どうかしたんですか?」


と言われて、


「いやさ、最近、上級魔獣の乱入が続いてる事でな」

「その事ですか……」


彼女にもこの話をしている。


「俺、他に稼ぎがあるから……」


ここでミズキが、


「神の力ですね」


と嫌みったらしく言う。まあ「創造」で作った宝石類を売っているのだが。


「とにかく、ランクとかは気にしてないんだけどさ、

今日知り合いにあって、魔獣の乱入の所為で仕事が滞って、

ランク下がりそうで、下がったら、今後の生活に関わるみたいでな」


知り合いと言っても一度一緒に仕事をしただけだし、

普段から交流も無いが、それでも見知った人間が困ってる姿を見て、

妙に、乱入魔獣による影響が実感してきた。


 話を聞いたミズキは


「確かに、冒険者ランクが下がる事は大変なのは存じています

それで、解決しようというんですか」


実感はでてきたが、だからと言ってどうにかしようという気は無く、


「それは、俺の仕事じゃないよ」


余談であるが、ミズキにはこの件に、

サマナヴィが使われてる疑いがある事は、まだ話していない。

別に隠しているわけじゃなく、ただ話していないだけ。


 ここで、


「あと世界の破滅もな」


そう言うと、彼女の表情は一気に不機嫌になって、


「私は諦めませんから……」


いつもの様に言い、ソファーから立ち上がり、

部屋を出ていこうとすると、扉の前で立ち止まり、

俺に背を向けたまま、不機嫌な声で


「今晩……浄化をお願いします。穢れがたまって来たもので」


するとベルが、余裕に満ちた表情で、


「いつものように、私も、立ち会っても良いですか?」


すると、ミズキは背を向けたまま、直ぐには答えなかったが。


「お好きに……」


そう言うと部屋から出て行った。


 彼女の言う浄化については、ここに記すことはできないが、

あの5人のパーティーに入った事で、

今、冒険者たちに起こっている現状をより知ることになった。

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