第51話 元・蝗ス邇の日記
〇月×日 天気:晴れ
今日、アイナからとある一報が入った。
それは私たち6人のエルフが何百年もの時間待ち焦がれた瞬間だった。
愛しのあの人がついに転生した・・・?
ふふっ、こんな風にデレたらあの人は喜ぶでしょうか?
折角ですし今日から再び日記を書き始めるとしましょう。
〇月△日 天気:晴れ
今日はどうやらダニングのところへ行っているそうです。
ダニングも実はああ見えて寂しがりなので多分ご主人様と再会して泣いているんじゃないでしょうか。
アイナとダニングはご主人様と再会出来たら今の立場を降りると言っていましたし、またみんなで過ごせそうですね。楽しみです。
追記)なんと今日のうちにルリとも再会していたそうです。ルリなら変なことをしでかしかねないので少し不安ですが・・・、まぁ大丈夫でしょう。多分。
そして明日ついに、私たちも会える。
〇月◇日 天気:曇りのち雨
この日、ついに私はご主人様と再会することができました。
つい大声を張り上げてしまう場面もありましたが、最終的には私たちが望んだ方向へと動いたのでよしとしましょう。ご主人様の唇を真っ先に奪いにかかったシズクは許しませんが。
本当に・・・、本当に夢みたいです。
もし夢ならば覚めないでほしい。
〇月#日 天気:晴れ
私がご主人様と再会して1週間が経ち、ついにまたこの小屋での共同生活が始まりました。
引っ越しに準備の際に黒歴史を発掘しに行ったのですが何もなくて残念です。
そして私たちが用意したご主人様の部屋もたいそう気に入っていただけました。
なにか一人でノリツッコミしていましたが、それほど嬉しかったんでしょう。
私も嬉しくてつい、笑ってしまいました。
〇月§日 天気:晴れ
ご主人に早くもシズクの動向が気付かれつつあるみたいですね。
そして何も口を出さないと言ってきたらしいです。
・・・やはりいつかはご主人様にすべてバレてしまうんでしょうね。
そう思うと少し怖くなってしまう自分が憎い。だけど私たちはあの小屋を無き物にはできない。それは過去から逃げていることと同義だから。
ただ、あの結界を破ることができる者はいないでしょうけどね。
〇月Δ日 天気:晴れ
なんやかんやあってご主人様があの頃のように魔法薬の調合にチャレンジすることになりました。
そして今日から始めたのですが何やら見たこともない変な魔法薬(毒?)が生成されました。
それを王都に行って確認してくると言って意気揚々と出かけたのですが、なぜかご主人様は幼くなって帰ってきました。どうやら薬の効果らしいです。ご主人様について、さらに一つ謎が増えました。
ただ小さいご主人様は本当にかわいかったです。今度料理に混ぜてみてもいいかもしれませんね。
〇月Θ日 天気:晴れ
ダニングの話によると今日ご主人様は今の王女であるクレア様、そしてパトラ様と接触したみたいです。
そしてダニングからはグエン王子についての話も聞きました。
昔からそう言った話は聞いていましたが本当に行動を起こそうとしているとは・・・。
こちらも早いうちに手を打たねばなりませんね。
そしてその時、ご主人様と私たちの関係はどうなるのでしょうか。
〇月Ψ日 天気:曇り
今日ご主人様は冒険者ライセンスを取得しに行きました。
私は前からご主人様に冒険者ライセンスを取っておいてもらおうと思っていたので好都合です。
これでもし、私たちと離れることになってもあの子だけはパイプを繋いでおくことができる。唯一、あの件に深くかかわっていないあの子と。
・・・なにやらあの子はご主人様とイイコトをやっていたそうですが今度問いただしてみることにしましょう。
✕月〇日 天気:晴れ
この日、ご主人様はアイナと共に騎士団の訓練に向かったみたいです。
アイナは帰ってくるなり自分の部屋にダッシュで向かうわ、ご主人様は筋肉痛で動けないと喚くわで大変でしたがどっちも楽しそうな顔をしていたのでよかったです。
✕月△日 天気:曇り
この日の朝はバンとアイナの兄妹喧嘩から始まりました。
あまりあの二人がケンカするところは見たことがなかったのですが一体何が原因だったのでしょうか。
・・・まぁご主人様がらみでしょうけどね。
私は怖いので特に何もしないでおきました。
✕月$日 天気:雨
今日は一日雨で、昼から全員が家に居るという中々珍しい日でした。
昔を思い出してか、シズクが何やら最近王都で流行っているらしいボードゲームを持ってきてみんなでやったのですが案の定最下位はご主人様でした。
そして夜ご飯の後、これまたやはり部屋にこもってしまいました。
✕月Σ日 天気:晴れ
今日はこの前のようにご主人様は魔法薬の調合にトライしたようですが、やっぱりできたのはあの謎の物質でした。
というかご主人様が魔力を加えたものは全てあれになるようです。
一体何が起きているのでしょうか。
ご主人様もやや諦め始めました。
△月◇日 天気:晴れ
今日はあるエルフにとって特別な日でした。
彼は朝早く家を誰にも言わずに出ていったので恐らく今年もあそこに行ったのでしょうね。かれこれ100年近く、毎年行っているんじゃないでしょうか。
そしてこれは彼が前に進めない原因でもある。恋というモノは人を盲目にするとはよく言ったものです。
私も人のことを言える立場ではないかもしれませんがね。
△月☆日 天気:曇り
今日から二泊三日、ダニングが王城に呼ばれてしまったので他の6人で夕食を作ることになりました。
ですが思った通りご主人様は料理下手でアイナも不器用だったので戦力になりませんでした。
ルリもできることにはできるのですが、いわゆる冒険者クオリティと言うように切って焼くか煮るかしかできないので結局私とバン、そしてシズクで作ることになりました。
なんとか三人で作り上げたものの、作っていない方の三人からは「やっぱダニング凄いわ」といった声の方が多く上がっていたので明日は絶対作りません。
△月■日 天気:曇り
・・・昨日はああ言ったものの、今日の夕方に厨房を覗いてみたら地獄絵図になっていたので結局6人で作ることになりました。
でもこうやってみんなでわちゃわちゃとやるのも悪くないと思えましたね。
今度は7人でやってみましょうか。
◇月△日 天気:晴れ
この日は私にとって大切な日でした。
理由は至極単純で、私の誕生日だからです。
誕生日といっても私たち6人はご主人様と出会った日をそれぞれの誕生日として生きてきているのでこれから連日で誕生日ラッシュが続きますね。
そもそもエルフは寿命が長いので誕生日というモノを気にしない風習があるのですが、過去にご主人様が私たちの誕生日を決めてくれたのでこうして毎年祝っているのです。
祝うと言っても、いつもご飯はそれなりに豪華ですから特に変わらない日常なんですけどね。
というかご主人様は過去の誕生日と今の誕生日の二つを持っていることになると思うとなんだか不思議な感じです。
◇月$日 天気:曇り
今日はルリがよくわからない巨大な魔物を取ってきました。
ギルドでさっさと換金すればよかったものの、自慢したいがためにわざわざこの家を経由したそうです。
ダニング曰く、この魔物は食べられるとのことだったのでその日の夕食にみんなでいただきましたが中々においしかったです。
ご主人様も満足そうでした。
◇月*日 天気:曇り
実は少し前から家の近くに畑を作り始めたのですが、どうやらご主人様がたいそうお気に召したようでかなり立派なものが出来上がりました。
確か、200年前のご主人様のご家族は農家だったらしいのでその血を完全に引き継いでいるようですね。
良かったですね、天職が見つかったようで。
ご主人様も嬉しそうです。
◇月Ψ日 天気:晴れ
今日はバンやダニングと共にご主人様は王都に出かけていたようですが一体何をしていたのでしょうか。
男三人水入らずで楽しく過ごせたようですが、こちらとしては気になるばかりです。
今度私もご主人様とデートしてみたいところですね。
◇月Π日 天気:晴れ
なんて言っていたら、今日の朝突然ご主人様に一緒に二人で王都に行こうと言われました。
勿論一つ返事で行きたいと伝えたらすぐに私を連れだしてくれました。
これ以上はあまり文字にしたくないので私の胸の中に鍵をかけてしまっておくとしましょうか。
私の稚拙な文ではこの感情を言葉にできません。この世に生を受けてよかったと思えた瞬間でした。
◇月Ξ日 天気:晴れ
・・・今日はシズクと共に王都に行ったようです。
いや、良いんですけどね? なんかこうモヤッとするというか。
そうでしたね、あの人はそういう人たらしでしたね。
これは嫉妬ではありません。
ですが文字に不満を残すくらいはいいですよね。
ζ月ω日 天気:晴れ
今日はびっくりするほど暑い日だったので、みんなで近くの川に行って水浴びをしました。
やはり暑い日に冷たい水で体を冷やすのは最高ですね。
一番はしゃいでいたのはなぜかアイナでした。何はともあれ川の近くに小屋を建てて正解です。
・・・まぁたまたまだったんですけどね。
Φ月η日 天気:雨
ご主人様と再会して半年が経ちましたが特に変化はありません。
こんな平和な日常が送れているなんて夢見たいですが。
・・・・平和の下には死体が蔓延っている。
嫌な人の言葉を思い出してしまいましたね。
τ月λ日 天気:曇り
だんだんと風が冷たくなってきたようでそろそろ衣替えを視野に入れないといけなくなってきました。
ただあまり外に出ない人が多いのでそれほど気を張ってやらなくてもいかもしれませんね。
ルリはすぐに服を破くので知りません。
ダニングの料理の食材も季節によって変わってくるので楽しみです。
λ月Σ日 天気:雪
今日は今年初めて雪が降りました。
かなり寒くなってきたのでみんなの分の衣服を新調しないとですね。
それに暖炉を掃除していらない服は片づけて・・・。
やらなきゃいけないことだらけです。
というか冬って普通の農家の人はどうするんでしょうね。
ルリが一人、外ではしゃいでいました。
まるで犬のようでした。
あれがSランク冒険者・・・?
世も末ですね。
λ月η日 天気:大雪
連日の雪でかなり積もったので、ルリが雪で遊び始めました。
最初はルリが一人ではしゃいでいるのを眺めていただけでしたが気づいたら一人、また一人と参戦していき気づいた時には7人で雪合戦に発展していました。
私の顔にぶち当てたご主人様にはそれ相応の報いを受けてもらいましたが中々楽しかったです。
その後のお風呂もにぎわっていました。
男性陣が性懲りもなく茹で上がっていましたがね。
ρ月τ日 天気:曇り
最近はみんなが家に残ることが多くなりました。
といっても引継ぎが終わった人たちや達成目標を終えた者が多いので当たり前と言えば当たり前ですが。
このままひっそり、ほそぼそと生きていけたらどんなに幸せでしょうか。
〇月◇日 天気:晴れ
今日でご主人様と再会してちょうど一年が経過しました。
この1年間で特に変わったことはありませんが、しいて言うのなら国王が退位したくらいでしょうか。
それがいったい何を意味するのか、私たちは口に出すことはありません。
ですが、この1年間は本当に最高でした。
願わくばもう一年、いやもっと・・・。
〇月§日 天気:晴れ
シズクの情報によると、とある方はもう動き始めているようですね。
いつかはこうなることはわかっていましたし手は打つつもりですけど、私たちはもう人間を傷つけたくはありません。
それにご主人様はどうするのでしょうか。
・・・一体どれを取って、どれを捨てるべきなのかわかりません。
ただ一つ、私たちが心にとどめていることは
ご主人様の敵になるモノは容赦なく消す。
✕月△日 天気:曇り
アイナとバン曰く、だんだんご主人様の剣術は上達してきているようです。
一年間みっちりとあの二人に鍛えられたから当たり前と言えば当たり前かもしれませんがね。
ようやく新しく入団した騎士見習いレベルに達せたようです。
・・・これが早いのか遅いのか。
私は考えるのをやめました。
ちなみにシズクはかなりご主人様を馬鹿にしていました。
Φ月Δ日 天気:曇り
今日シズクから最悪の連絡がありました。
・・・誰かがあの小屋に侵入したそうです。
あの小屋には認識阻害の結界や防御結界を何重にも張っていたのですがね。
急いで駆け付けたころにはまた結界が綺麗に張りなおされていました。
一体どこの誰が侵入したのでしょうか。
ですがこれでよかったかもしれません。
もしかしたら神様が、秘密のままにしておくなとでも言っているのかもしれません。
まぁ私は無神論者なんですけどね。
いよいよすべてが動き始めそうです。
鍵をかけたパンドラの箱が、開いた。
Γ月Π日 天気:晴れ
今日で日記を書くのをやめようと思います。
もし私が日記を再び書き始めるとしたらそれはまたご主人様と幸せに暮らせるようになってからですかね。
再びこうやってペンを取れることを願って・・・。
元・国王 ヴェルフィセル
*********
これにて第4章はおしまいです。
次から第5章、すなわち真実編が始まります。
・・・なのですが、今回第5章を書くにあたって一つだけお詫びがあります。
私はこの物語を書くにあたってどうしても完結まで持って行きたいため、今回の5章である程度のところまで書き貯めをさせてください。
また近いうちに登場人物紹介や、閑話を挟めたら挟もうかなと思っておりますので応援していただけたら心の底から喜びます。
執筆スピードも上がります(多分)
詳しいことは近況ノートで書かせてもらいますが、7月過ぎくらいからまた投稿できればなと思っております。恐らく一度再開できれば毎日投稿できるんじゃないかとも思っておりますのでこれからもよろしくお願いいたします。
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