第36話 新たな仲間

キャサリン、ヘレン、サクライにとっては本日三度目となる庭のカフェに皆でやって来た。

近づいて来るのを目敏く見つけたカフェのスタッフが出迎え席へ案内し人数分の椅子を配置しオーダーを確認して店内へ去って行った。

皆が席に着き落ち着いたところでヘレンが英語で口火を切った。

「皆さん、お疲れ様でした、キャサリン、初めての進行役にしては上出来でしたよ。

この場はまず、貴方の自己紹介から始めましょう」

ヘレンがそう言うと会場でキャサリンに声を掛けられ同行した女性を見つめた。

「あぁ、はい、カトリーヌ・キャロンと言います、フランスの物理学者です」

「あら、フランスの方なの英語がお上手ね、今後、貴方をどう呼べば良いかしら」

「友達からはキャロンとかカトリーヌと呼ばれていますが家族からはカリーと呼ばれています」

「では、私たちもカリーと呼んで良いかしら」

「はい」

「ありがとう、御歳は幾つ・・・失礼かしら」

「いいえ、27歳です」

「貴方の紹介が先になりましたが改めて皆で自己紹介をしましょう、私はヘレン・ヘイウッド、米国上院議員をしています、貴方と違って若くないから年齢は勘弁してね、じゃあ、ミスター・ヘーゲンどうぞ」

「私はNSA副長官のアレックス・ヘーゲンです、どうぞよろしく」

「次は私ね、でもその前に渡しの隣の男性を紹介しておくわね、会合でも言った様に二つのプロジェクトのリーダーは彼、彼は日本人、名前はミスター・サクライ、そして私が彼の通訳のキャサリン・ヘイウッド、名前から解る様にヘレンは私の母です」

「私はジョナサン・シーモア です、イギリスの考古学者で32歳」

「カリー貴方も今晩、家に泊まってもらうわ、良いかしら」

「・・・OK」

キャサリンの言葉に一瞬戸惑った彼女も了承した。

「貴方のホテルは何処なの」

「ホテルはまだ取っていないのです、荷物はここで預かって貰いました」

「では、帰りに戻して貰いましょう、この中で家に来ないのはミスター・ヘーゲンだけね」

「その様ですね、私に何かする事はありますか」

「貴方は良い方ね、NSAの副長官と言う高い地位にある方なのに腰が低いわ」

「腰が低い・・・とはどう言う意味でしょうか」

「あぁ、御免なさい、この言い方は日本語なのよ、意味は地位を利用して偉ぶらない人、他人を地位に関係無く平等に扱う人と言う意味かしら・・・どう通訳のキャシー???」

「良いと思うわ、上院議員」

「キャシー、彼に聞いてミスター・ヘーゲンにお願いする事はあるかしら」

キャシーがサクライに耳元で囁いた。

「貴方、今度、お空には何時連れて行ってくれるの」

「ヘーゲンさんには考古学者を今度はエリア51に集めて調査して貰う事と一か月に一度物理と天文学者に論文を出して貰う事の指揮をしてほしい・・・と伝えて下さい、空へはエリア51に考古学者が集まった時に観に行った後に行くつもりですが、どうですか」

「了解です」

キャサリンはそう答えると彼にキスをした。

その様子を見ていたヘレン以外の人が驚いた。

「ミスター・ヘーゲン・・・えぇ何かありましたか」

「貴方たち・・・」

「あぁ、うっかりしていました・・・実は私たち結婚しているんです、出会ったその日に婚約しました」

またまたヘレン以外が驚いた。

「ミス、貴方は美しい方ですから男なら皆求婚するでしょう、当然ですよ」

ヘーゲンが男の気持ちを代弁した。

「ありがとう御座います、ミスター・ヘーゲン・・・でも違うんです、求婚したのは私です」

「うっそ~、貴方の様な綺麗な女性が・・・」

フランス人のカトリーヌの口から直な気持ちが漏れた。

「あら、人は外見じゃない事は綺麗な貴方も解っているでしょう」

「確かにそうなんですけど・・・」

「彼を知ると解るわ・・・でも彼はもう私の旦那様ですからね」

「大丈夫です、私は浮気する人は嫌いです」

「処でキャシー、彼は何て」

「あぁ、ミスター・ヘーゲン・・・・・・」

キャサリンはサクライの要望をヘーゲンに伝えた。

「解りました、お任せ下さい、処でエリア51には私も行って宜しいでしょうか」

「勿論です、彼も望んでいます」

「ありがとう御座います、彼にお伝え下さい、では、私は準備に掛かりますのでお先に失礼致します」

彼はそう言って席を立ち皆に挨拶をして会計に寄り管内に戻って行った。

「お母さん、彼、ヘーゲンさんてそつの無い人ね」

「そつ・・・そつってどう言う意味なの」

「手抜かりのない・・・とか、無駄が無い・・・と言う意味よ」

「それをそつが無いと言うの、ふ~ん、やっぱり日本語じぁ貴方には勝てないわね」

「そりゃ通訳だもの」

「何いってんの、通訳は今回が初めてでしょ」

日本語で言い合う二人をイギリス人とフランス人の二人は唖然と見つめていた。

「失礼ですが今二人が話しているのは日本語ですよね」

「貴方もそう思いますか、私もそう感じました」

「あら、どうして二人は解るの、喋れるの」

「私は日本のアニメが大好きでフランス語の翻訳が遅いのでネットの日本語版を観ていましたので、何となく響きでそうかなと思いました」

「私もです、貴方の好きなアニメは何ですか、私はワンピースでした」

「私はリボンの騎士です」

「へぇ~イギリスにもフランスにも日本のアニメが広まっているのね」

「そんな事より、そろそろ家に帰りましょ、お腹が空いたわ、キャシー」

「そうね、お母さん、処で二人はここまで何で来たの、車はあるの」

「いいえ、タクシーで来ました」

「私もです」

「じぁ、私の車で帰りましょう、う~と、ジョナサンは大きいから助手席ね、彼には後ろに女性二人に挟まれて貰います」

「そうと決まれば帰りましょう、あぁ本当にお腹が空いたわ、今日は何かしらね」

キャサリンが会計に寄ると既にヘーゲンが払っていた。

「お母さん、ミスター・ヘーゲンが払ってくれていました」

「やっぱりね、ええと・・・そうそう、そつが無いだったわね」

「ええ、やっぱり、そつが無い人だわ」

皆で地下の駐車場へ行き5人が車に乗ってゲートを出て帰路に着いた。

「あの・・・この車、古いのに凄いパワーですね」

「ありがとう、でも、この車は見た目が古いだけで中身は超が付く最新式なのよ」

「道理で早い訳だ、それと私も運転は好きですが貴方程リラックスしては出来ません、運転が好きなのですね」

「ええ、好きよ、この車の運転は特にね・・・何故って、この車は自動運転も出来るからよ」

「自動運転・・・貴方が眠っても大丈夫と言う事ですか」

「そうですよ、でも、内緒にしてね、そうそう、此れから家に行くけど、見たり聞いたりした事は内緒にしてね、貴方もよ、カリー」

「はい、本当に自動運転の車なのですか」

キャサリンは返事をする変わりに手をハンドルから離し頭の後ろで組んだ。

ジョナサンとカリーが息を飲んで前を見つめた。

暫く走るとキャサリンが片手をハンドルに置いて暫くすると又手を離した。

「今の処にカメラがあるのよ、だから手を置いたのよ」

「は~」

「はい、このまま家まで帰れるのですか」

「ええ、でも、周りの人に見られると困るから手をハンドルには置いているわね」

「アメリカはやはり凄い国ですね」

「違うわね、此れも内緒の事よ、この技術は彼、サクライの物よ」

「ええ~、ミスター・サクライの技術、日本のと言う事ですか」

「いいえ、彼、個人の物よ、日本にも無い物よ」

「・・・」

「・・・」

「さぁ着いたわ、貴方、二人の女性に挟まれて天国だったでしょ」

「ああ、極楽だったね」

彼が流暢な英語で答えた。

ジョナサンとカリーの二人は、その事に気が付いていなかった。

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