第18話 革命的な企業

三年前に航空業界を一変させる企業が現れていた。

その航空機は速さが飛びぬけて早かった、これまで八時間掛かっていた航路を一時間で飛んだ。

その航空機は滑走路を必要としなかった、垂直離着陸機だった。

その航空機製造会社は航空機を販売せず全てレンタルとしていた、そして空港に専用整備場を設置する事とセキュリティー検査も行う事を条件としていた。

これらの条件でも各国の航空会社はこの航空機を導入せざるを得なかった。

余りにも時間が違い過ぎたのだ。

時間が掛かる要素の一つにセキュリティーがあった、預け荷物の検査、手荷物検査、人体検査と従来のセキュリティー検査には時間が掛かっていた。

だが、この航空会社のセキュリティーは全く違っていた、航空会社のエリアに入ると危険物を持つ人、規制物を持つ人は何処からともなく現れた人達に別室に連れられて行かれた。

普通の搭乗者は只のゲートを通り何の遅延も確認も受けずに搭乗した。

預け荷物の機内への搬入と搬出も迅速で航空機を降りた時には出口で自分の荷物を受け取る事が出来た。

自宅を出発し目的地に着くまでの全工程の時間で計算すると10分の1になる旅もあった。

これでは他の以前の航空会社は太刀打ちできなかった、この新航空会社を導入するしか会社を存続させる道は無かった。

レンタルを受けた各航空会社、各国は当然、航空機の秘密を知ろうとした。

だが、いずれも無しえなかった。

この航空会社の専用整備場のエリアへは外部の人間、機材を一切入れる事は出来なかった。

人材、機材は会社の専用航空機でエリアに直接離着陸しその様子を伺いしる事すらできなかった。

世界中の人達が不思議に思っていた。

これだけの航空機とセキュリティーの航空システムを持つ会社が航空機会社で在って航空会社では無いからだった。

航路の開設をせず、現行の航空会社に飛行機を貸しセキュリティーの設備を設置し保安要員を教育配置し専用整備場を確保し自社要員だけで整備していた。

自社で航路を持てば利益率は膨大なものになる・・・がそれを望んでいない様であった。

ある時、CEOがアメリカの放送局に出演し理由を述べた。

「現行の航空会社に取って変わる事は簡単です、しかし、今後もそれはしません。なぜなら世界中の現行の航空会社の社員の生活を守りたいからです。役員、幹部の生活はどうでも良い・・・一般社員の生活環境を維持したい・・・その思いだけです。」

この放送がネットを介して世界中の言語に翻訳され広まった。

当初は嘘だ、何か裏があるに違いない、その内現行の会社を乗っ取るに違いない・・・などの思惑が広がった・・・がその後も言葉通りの行動を続けて信頼する人が多くなって行った。

その後、その会社が人員不足を理由に社員公募を行うと現行の航空会社の一般社員が優先的に採用されるとの噂が広まった、これは本当の事だった。

約3年経った現在、この航空機会社が全世界の航空業界の85%を占める様になっていた。

その間に航空会社からの買収依頼が世界中から数多くあったが一切受けなかった。

理由はこれもつい最近になって流れた情報によると買収された会社はその買収金の多くが幹部社員と株主に周り結局倒産するからだそうだ。

実際にその会社が行った事は倒産した会社の役員、株主が責任を果たした後に元の一般社員を採用すると言うものだった。この方法が世界中の国で行われ現状の85%となったのである。

世界中の主要な都市を結ぶ航空路線はこの会社一社しかないのである。

独占だ、だが航空料金を上げるなどの利用者の、いや世界中の人々の予想を超えて逆に料金の引き下げを行った。

そして、これも実際に行われた事だが以前の航空会社の幹部や役員は一切採用されなかった。

この会社では、不思議な噂が流れていた。

この会社には「神」が居る、と言う飛んでも無いものだった。

ある日、突然社員が警察に逮捕され完全な証拠が揃っていて確実に有罪になった。

実際にある幹部が逮捕され弁護士を依頼したが証拠物件を見せられ弁護を断った。

その幹部は金を厭わず弁護士を探し回ったが全ての弁護士が最初の人と同様に証拠物件を見せられ弁護を断った、当然、有罪である、それが大題的なニュースになり世界中にネットで広がり、その会社では犯罪が減って行った、セクハラ、パワハラなどの軽微な物も無くなって行った。

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