ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ア・ラン

作者 いっさん小牧

63

21人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

『on your mark』
『set――』

——パアン!

「さあ、乾いた号砲と共に、降り注ぐ日差しのもと、各選手一斉にスタートを切りました。このレビューを務めさせて頂きます詩一です、よろしくお願いします」


【第1曲走路】『魅力的なヒロインたち』
「まずスタートで注目して頂きたいのはヒロインたちです。主人公以外のライバルたちの生い立ち、日常、様々な側面から生じるドラマを丁寧に描いているため、単なる萌えに留まらない人間として魅力を感じ取ることができます。
 因みに私は唯空選手推しです。彼女はとてもいいスタートを切りました!」


【バックストレート】『熱いスプリント描写』
「走るということがここまでエンターテイメントになるのか! 圧倒的な筆力で描かれる、彼女たちのスプリントは必見。しかもこれ、ただ速く走るだけではないんです。それぞれが固有の——いわば《特殊能力》ともいうべき走法を編み出しており、そのエンタメ要素がレースを最後まで盛り上げます。誰が勝つかわからないドキドキをぜひ感じて頂きたい。
 さあ、コーナーを終えてからのストレート、ここからぐんぐんスピードが伸びていく!」


【第2曲走路】『圧倒的構成力で描かれた群像劇』
「本作、一元的三人称(背後霊視点ともいう)を採用しております。目まぐるしく変わるヒロインたちの視点、思い、スプリント……。彼女たちのドラマ性を深めるだけでなく、そこから生じた新たな問題点をどう解決していくかなど、小説には欠かせないミステリー要素がふんだんに盛り込まれており、読者を次へ次へと誘います。
 ストレートでトップにまで持ってきたスピードをいかに殺さずこのコーナーを曲がり切れるか!」
 

【ホームストレート】『画面が滲むほどのカタルシス』
「各ヒロイン、様々な苦悩を抱えながらそれでも突き進んでまいりました。へたり込みそうなときも息苦しい… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

僕は学生時代、合計して10年以上陸上競技に打ち込んでいました。成人した今もこのスポーツに関わる仕事に携わっています。僕にとって陸上競技とは切っても切り離せない存在です。

本作は400mという競技を舞台に少女たちのドラマを描いていますが、はっきり言って現実にはありえないものばかりです。タイムも走法も。

でも、この作品は陸上競技を、400mをしっかりと存在させてくれました。スポーツものを小説で表現するのはとても難しいことです。視覚聴覚に頼れない「文章」という武器だけで、この一分にも満たないドラマを表現するのは困難。しかし、この作品を読み終わり、僕は確かにあの風を感じたのです。走る前の緊張を、走っている間の苦しみを、走り終わった後の爽快感を思い出しました。

いい作品に出会いました。

★★★ Excellent!!!

競走ーーーー。

その身ひとつでのレースは、よく喩えにも用いられる競争の元型である。それは他人との勝負であると共に自分自身との闘争でもある。

そして、この小説は走る物語。
つまり、あらゆる要素が凝縮されているといっても過言ではない。

ところで、なぜ作者は400mの種目を舞台としたのだろうか?

おそらく、刹那の命の燃焼でありつつも、その中に様々な取捨選択や生き様を投影できるからなのではないのか、と思う。

刹那と永遠の狭間に作者が見出だした世界。
それこそが400m。
まさに素晴らしい着眼点であり、読んでみればその素晴らしさが否応なしに伝わるはずだ。

作中にて十人十色の走りを見せる彼女達はキャラクターというより命ある人間で、それは【いのち】の燃焼の持つ力を信じる作者が、まさに自分の命を燃やして書いているからだと思われる。


……などなど、
長々と仰々しく書いてしまいましたが、シンプルにオススメです!!

きっと長編とは思えないほど早く読めるはず。
しかし、単に読みやすいからというよりは、


彼女達が猛スピードであなたの中を走り抜けていくのであるーーーー。

★★★ Excellent!!!

魅力的な小説とは。それはもちろん人それぞれ。
たとえば文学的な作品、きゅんとするような恋愛物語、爽快なアクション、非現実的なファンタジー、犯人が気になるミステリー、どきどきするようなサスペンス。それから胸を熱くさせるような青春小説。
本作は、いちばんに中学生や高校生に向けて書かれたものだと伺っております。私はもう十年以上前にその多感で楽しい時期を終えてしまいました。しかも熱心に部活をやっていたわけでもなく(さらに文化部)、「あの頃の気持ちを思い出せた」というものとは少し違いました。
どちらかといえば親のような目線で、風蘭たちをただひたすら応援していたように思います。
嫌いな子は一人もいない。何がいいって、天才がいない。みんなそれぞれ抱えているものがあって、それは「王道的」と呼ばれるものなのかもしれないけれど、そういうの全部振り切って、走る走る走る。陸上の知識なんて皆無な私ですが、彼女たちが走る姿に何度胸を打たれたか。

さて、「あの頃の気持ち」を思い出すことはできなかったけど、私は本作を読んで確かに思い出したものがあります。作者の意図と少しズレるのかもしれません。
私は本作で「読む楽しさ」「読ませる楽しさ」というのを思い出した気がします。こんなに真摯に作中に出てくる彼女たちと楽しそうに走る作者。どうしてでしょう。会ったこともないのに、読んでいると目に浮かんできます。そしてそれは、見ていてとっても心地のいい姿です。
はらはらしたり、ほっとしたり、嬉しくなったり、つらくなったり、胸が熱くなったり、思わず涙が出てしまったり。なんて物語と近い距離にいさせてくれる作者なんだろう。そう思います。感情移入という言葉はよく使われますが、移入ではなく感情が重なった気がします。珠琴に、風蘭に、あるいはトリースに、京香に、唯空に、もっとたくさん。私は運動が嫌いで、本来なら彼女たちの気持ちに共感… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

400mという距離が極めて重要な意味を持つ、走り抜ける小説です。

美しいものは集中力限界のギリギリで完結する。

例えば3分間のロックンロール。
世への違和感を燃し尽くす3分間。

けれどもその1/3にも満たない時間で少女たちは身体も人格も出し尽くす。

わたしはこの小説を青春小説として読ませていただきました。

お勧めいたします。

★★★ Excellent!!!

 文章が上手い人、物語が面白い人、キャラクターが魅力的な人、人には色々得意不得意があって、それが一般的には個性と呼ばれている。
 この物語は自分が読んできた中でも最高レベルのクオリティで、抜け目がないという印象。
 本作は未だ完結していない。完結していないにもかかわらずこういうレビューを書いたというのには理由があって、最終話を読み終わったときに「感動」することがわかりきっているので、もっと多くの人に本作を知ってもらい、一緒に完結を迎えたいと思ったからだ。
 その理由を、以下に記してみた。
 まず文章。難しくてかっこよくて珍しくて美しい言葉を使えば良いっていうもんじゃない。かといって、幼稚園児でも読めそうな文章がヨミヤスイということでもない。豊富な語彙力とそれを支えるリズム、選ぶ単語のセンス。それによる本当の意味での読みやすさ。以前、この作品を読みすすめるときに、「じっくり読むというより軽く読み進められる感じ」と表現した。これは単に分かりやすい低レベルな文章力なのではなく、「じっくり読んでいたつもりがいつの間にか読み終わっていた」というこの作品独自の感覚を呼び起こさせられたということである。
 次に物語。心地よい伏線回収と、終盤への盛り上がりが特徴的。先が読めない展開と、確かな知識に基づいた、新鮮なストーリー。こういう物語が書きたいと思った。これは本当に大事な点で、ネットのアマチュア創作家はそもそも自分が読みたい物語がまだ世の中にないからそれを自分で生み出しているという側面がある。つまり、自分が書きたいと思っているような小説との出会いというのは自分の作品と思えるほど愛着がわくし、それが自分の作品ではないということをひどく失望する。このストーリー展開はまさにそれで、愛着と失望を同時に経験することになった。
 キャラクターに関しては、昨今特に重視されているところだと思う。ここに… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

いっさん小牧氏の小説は、何作か拝読した。
どの作品も比喩に富んだ文章で宝石箱のように彩られ、それでいてストーリーには無理なく引き込まれ、最後まで一気に読ませてくれる。完成度の高い作品ばかりだ。
だが、これはもうその作品群のなかでも格が違う!この新作は私が読ませていただいた良品のなかでも最高を思わせ、作者の自信を感じさせる。
陸上界で将来を嘱望された女性アスリート。だが、幼女を助けて事故死してしまう。その女性アスリートが人助けのご褒美で神様にもらった三つの願い。彼女は何を願った? 
陸上400M走は短距離の中で最も過酷な競技だ。その競技を軸に、ガールズたちが走る走る!
「だが恐れるな。減速を許すな。終わりは必ずやってくる。最初のコーナーの出口で蓄えたスピードを抱き締めるようにして直線を突き抜ける。」
主人公が初めて400Mを走り抜ける描写の一部だ。400Mの間に起こるドラマを作者はこれでもかと提示していくる。こちらはその爽快さと息苦しさを同時に覚え、目の前にはまるでゴールが見えるようだ!
煌めく星々のような文章で飾られるシナリオは、文字を追うごとに高揚感が胸を熱くし、ページを捲る手が止まらない。
小説家を志すWeb作家よ、いっさん小牧氏の小説を是非とも読んで欲しい。必ずメカラウロコのような解脱感を覚えるはずだ。