王弘之3 魚を釣る    

王弘之おうこうし、釣りが大好き。

上虞じょうぐ三石頭さんせきとうという名の入り江があり、

日々そこで釣り糸を垂らしていた。


傍を通る、王弘之を知らない者のうち、

ある者はこんなことを言う。


「もし、釣り人どの。

 魚を売ってくださるまいか?」


王弘之は答える。


「まだ釣れてはおらんよ。

 釣れても売らんがな」


夕方に釣った魚を持って

上虞の料亭に訪れると、

何らかの調理を施したのち、

同じ琅邪ろうや王氏の家々の門前に、

二尾ほどの魚を置き、立ち去った。



始寧しねい沃川よくせん県には、

眺めのよい渓谷があった。

王弘之はその景色を気に入り、

巖谷の側に庵をあみ、住まう。


その地には謝靈運しゃれいうん顏延之がんえんしも訪問、

そして彼らは交流を重ねた。


427 年に死亡した。63 歳だった。




性好釣,上虞江有一處名三石頭,弘之常垂綸於此。經過者不識之,或問:「漁師得魚賣不?」弘之曰:「亦自不得,得亦不賣。」日夕載魚入上虞郭,經親故門,各以一兩頭置門内而去。始寧沃川有佳山水,弘之又依巖築室。謝靈運、顏延之並相欽重。四年卒,時年六十三。


性は釣を好み、上虞が江に三石頭なる名の一處有らば、弘之は常に綸を此に垂る。經過せる者は之を識らざれば、或いは問うらく:「漁師、得たる魚を賣せんや不や?」と。弘之は曰く:「亦た自ら得たらず、得たれど亦た賣らず」と。日夕に魚を載せ上虞が郭に入り、親しく故門に經、各おの一兩頭を以て門内に置きて去る。始寧の沃川に佳き山水有らば、弘之は又た巖に依りて室を築く。謝靈運、顏延之は並べて相い欽重す。四年に卒す、時に年六十三。


(宋書93-13_棲逸)




まー何と言うか、アニキ(王鎮之、めっちゃ有能な官吏として治績を挙げまくった)の威光あっての隠遁生活ですよねぇ明らかに……なんか隠逸伝生ぐせえなあ。こんなクソ名家に生まれた人間の隠遁生活なんて今の時代でいやボンボンの遊興生活じゃないですか。これを高尚だとか言っちゃうのマジでどうなん……。


早く陶淵明とうえんめい伝が読みたいもんです。

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