第137話 忘れた

「なんであなたがいるわけ?」


「それはこっちのセリフですよ」


日曜日の夕方。

葉幸くんと葉柚さんがバイトから帰ってきて少しした後、チャイムがなって葉柚さんも葉幸くんも夕ご飯の準備で手を離せなかったので代わりに私が出たところ、扉の前には簪さんの姿がありました。


「私は、葉柚さんが泊まってもいいって言ってたから来ただけ」


葉柚さんが!?


もしかしたら、今までも簪さんは葉柚さんに協力して貰っていたりして、今回もその流れで、ということかもしれませんね……


「へ、へぇ〜?そうなんですね?

ちなみに、私も


「ふ〜ん?そうなんだ

まぁとりあえず中入れてよ」


それから、簪さんと一緒にリビングに戻るともう既に4人分の夕ご飯が準備されていてすぐにいただくことになりました。


「ていうか、なんであなたそんな格好なの?」


「悪いですか?着替えを家に忘れたので葉幸くんからシャツを借りてるんです」


まぁ実際はわざと置いてきただけなのですが、生憎とお母さんとお父さんにはもともと結婚20周年旅行という事でしばらく帰ってきませんし、鍵も家に置いてきたので着替えを取りに帰るということは出来ません。


「ふ〜ん?忘れた、ねぇ……?」


簪さんは明らかに疑っている様子ですが、私が表情を変えないのをみて諦めたのか、すぐにご飯に意識を戻しました。


一方、私たちの向かい側に座る葉幸くんは……


「姉さん、この2人なんでこんなに仲悪いの……?」


「さぁ?なんでだと思う?」


「いや、分からないから聞いてるんだけど……」


といった様子で私たちがどういう関係なのかは察しがついていないみたいでした。

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