第119話 自慢の娘

宝田がピアノの練習を初めてから、かれこれ3週間がたち来週の月曜日に合唱コンクールを控えた金曜日の今日、食卓はいつも以上の賑わいを見せていた。


「──で、さちくんってば学校で眠り姫ってよばれてたんだよ!?」


「さちが眠り姫か……。間違ってないな」


「そうねぇ〜

さっちゃんは可愛いし、自慢の娘だものね〜」


「はい、そこ。娘じゃなくて息子でしょうに」


「あらあら〜。そうだったかしら?」


騒がしくなっている理由はこの滅多に帰ってこない家の母さんと父さんの存在のせいだ。

お正月の時ぶりに帰ってきたということもあって、姉さんははしゃいでいる。


「それで、お二人さんははーちゃんとさっちゃんのお友達なのよね?」


「そうです!」


「は、はいっ」


ロータスの方は、やっぱり外国で育っただけあって母さんや父さんとの会話にも積極的に混ざったりしている。一方隣に座る宝田の方はというと、やっぱり気まずいのかこうして話を振られない限りはあまり会話に入ることができていない。


「さっちゃんに友達が出来るなんて、私嬉しいわ〜」


少しからかうように言う母さんだけど、その目からは本当にそう思っていることが感じ取れる。


「あ、そうそう。ママにお願いがあるんだけどね?」


「はーちゃんがお願いなんて珍しいわね〜?

ママに出来ることならなんでも言って!」


「うん。

心夏ちゃんにピアノ教えてあげられないかな?」

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