第112話 伴奏者

「よし、じゃあ授業始めるぞ」


曲も伴奏者も決まってから1週間、2回目音楽の授業がやって来ました。


曲が決まってからは私やクラスメイトの人達の呼び掛けで、ほとんどの人が昼休みに集まって練習するようになりましたが、昼休みに先生と1対1でピアノの練習をしていたロータスさんと合わせるのは今日が初めてです。


「ロータスさん、調子はどうですか?」


「あー、えっと……」


隣に座るロータスさんに聞いてみると、何か言いづらそうにもじもじしています。


(どうしたんでしょうか…?)


「まずはみんなに残念なお知らせがある。伴奏をお願いしていたマーガレットなんだが……」


(もしかしてすると……)


マーガレットさんの様子や先生の深刻そうな表情をみれば、何となく察しがつきます。


「残念ながら、マーガレットには伴奏をしてもらうことはできなくなった。」


先生のその言葉で、教室がどよめきます。


「この前、マーガレットにピアノを引いてもらった時にあまりにも上手くてな。調べてみたらアメリカのピアノコンクールではかなりの数の金賞を取ったりしていたようで、先生達との話し合いでさすがに伴奏者で大きく差がつくようなことは避けたいということになってしまった」


「あの、それなら伴奏者は……」


どこからともなく聞こえてきた声には大きな不安が感じられました。


「他に経験者がいないなら誰かが練習して弾けるようになってもらうしか……」


今から練習して、となると残り1ヶ月もありませんしかなり厳しいと思います。



結局、この日は伴奏者なしでパート毎の練習だけで授業は終わってしまうのでした。

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