第109話 簪さんのとある日の平日②

「ひーちゃんお昼いこー」


「ひよりん!お昼!」


4時間目の授業が終わると私の友達──未瑠みるあやが私の席の周りに集まってきた。


「りょかーい」


「うわ〜。相変わらず、元気ないね」


「ひよりん!元気出してこーよ!」


そう言って彩はバシバシと私の肩を叩いてくる。


(痛い……)


「彩は元気すぎ」


「元気だけが取り柄だからね!」


「運動出来るじゃん」


「地味に勉強できるよね」


この彩という少女はいつも無自覚にこんなことを言うのだ。私たちよりも運動能力は高いし、勉強もいつもテストではノー勉で学年30位以内には入ってくる。


「彩ってそういうところあるよね……」


私と未瑠がうんうんと頷きあっているのに本人は首を傾げてもはや頭にはてなマークが浮かんでいるようにすら見える。


──そういうとこだよほんとに……


でも、実際優しくて思いやりがある子だし悪い子ではないのだ。


「ひーちゃんは何にする?」


「んー…。いつものでいいかな」


「ほんと好きだよね」


そうこうしているうちに、食堂に到着していた私たちはそれぞれ券売機で食券を買った後に列に並んでお昼ご飯を食券と交換してもらう。


ちなみに、私が買ったのはオムライスだ。


ちょうど座れる円形の机が空いていたのを見つけて、私たちはそこに3人で座った。


「ひよりんオムライス好きだね〜!」


「まぁ、安いし、そこそこ美味しいし、好きだよ」


「ふ〜ん?オムライスにはそんなに簡単に好きって言えるんだ?」


今度は未瑠が、ニヤニヤとラーメンをすすりながらそんなことを言ってくる。


未瑠には、何故か前にバイト先のファミレスに来た時にさちの事が好きだとバレてしまっている。

ちょうど空いている時間で少しさちと話していただけだったのだけど、それで分かったらしい。


「未瑠はそういう人いないの?」


「私はいないかな〜?彩は?」


「ん〜?私はオムライス好きだけど、チャーハンも好きだよ!」


「「はぁ……」」


「彩に聞いたのが馬鹿だった」


「食べよ食べよ」


そうして私達は、今日もいつも通りゆったりと昼休みを過ごして終わるのだった。

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