第81話 起こされちゃった
「お邪魔しまーす……」
家の中は真っ暗で人気はない。
上の階の部屋では今頃葉柚さんが眠っているはずだ。
私はさちから預かった鍵をポケットにしまって玄関に上がった。
「たしか葉柚さんの部屋は2階の1番右だっけ…?」
1度だけお邪魔したことがあった時の記憶を頼りに部屋の扉を開けるとそこには予想通り、葉柚さんがベッドで眠っていた。
「熱は……まだ少しあるね」
私は額に触れた手を離して、持ってきていた水やミカンやリンゴのゼリーを勉強机の上に置いた。
一応「ゼリーとか買って置いておきますね」とメッセージも送っているので気づかないことはないと思う。
「あとは着替えだよね」
そう1人呟いて部屋から出ようとした時だった。
少しの物音が聞こえて振り返ってみると……
「ひより……ちゃん?」
「あ、起こしちゃいましたか?すみません……」
「ん〜…、起こされちゃったかな?」
葉柚さんは意地悪な笑顔でそう答えた。
「えっと、多分さちくんの着替え取りに来たんだよね。ちょっとまっててね」
「いやダメですって。私が取りに行きますから」
「いいのいいの!1日寝たら結構元気になったから!」
そう言ってから葉柚さんは、隣のさちの部屋に入ると数分で着替えを紙袋にまとめて部屋に戻ってきた。
「すみません……
体調の悪い葉柚さんにやらせてしまって」
「だからいいってば〜。
私がやりたくてやった事なんだから気にしないで?」
申し訳なさそうにする私に葉柚さんはいつもと変わらない笑顔で私にそう言ってくれた。
「じゃあ私はこれで。
葉柚さんはしっかり休んでくださいね?」
そして、私が家を出ようとした時──
「あ、ちょっとまって。
1つ聞きたいことがあるんだよね」
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