第12話 居残り

「ねーねーココナッツ〜。ここどうすればいいの〜」


放課後の教室に1人の女の子の声が響きます。


「ここはですね……こういう感じですね」


私は友達である美雪ちゃんのノートに、丁寧に解き方の手順通りに実際に解いてみせます。


「う〜ん。難しいね……。でも今のでわかった!」


時刻はもう5時30分。最初の方こそ人は多かったですがもうこの教室で再テストを受けているのは美雪ちゃんだけです。


「あっ、ねーココナッツ。あれ見てよ」


「はい、なんですか?」


私は美雪ちゃんの指の先をたどって行くと、そこには先生と、学校にいる間はずっと眠っている眠り姫さんが話している光景がうつります。


「眠り姫が起きてるよ!これすっごいレアなんじゃない!?」


「ほんとうですね……」


いつも眠っていて素顔の見えない眠り姫さんですが、今はあともう何歩か前に出れば簡単に見ることが出来ます。


ですが──


「美雪ちゃん、そんなことよりも再テスト合格が先です!」


「えぇ〜。でも眠り姫がぁ!」


「ダメです!このままでは日が暮れてしまいますよ!」


といっても、もう太陽も沈んでしまっていて外は暗くなってしまっています。


「うぅ……ココナッツがいじめてくる〜!」


「いいからやりますよ!」


それから、30分後の6時になってやっと美雪ちゃんは合格して私達は帰ることができました。


──眠り姫さんがいなくなっていることに気づくことなく……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る