第17話
美術デザイン科は二クラスあって、一組と二組が存在する。
実は最近様々な嫌がらせをとある人物から受けていて、幾度となく続く迷惑行為にちょっとやそっとじゃ怒らない俺もさすがに辟易している。
そいつの名はヤマザキといって、自分をイケメンだと思ってるイタいやつ。まあ、俗に言う勘違い男だ。
一組の男子生徒はそいつだけだが、女子達はそいつに一ミリも興味を抱いていないらしい。
どうやら歩美と降旗、絶世の美少女二人に囲まれている俺のことが気にくわないみたいだ。非常にわかりやすい嫉妬である。
「またか……俺のサンダルがねぇ……」
「ほんとうだ。今日で五日連続だね」
「そんなもん数えてたのかよ。たしかに五日連続だな」
歩美の言う通り、月曜日から始まった嫌がらせが今日の金曜日までずっと続いてる。
最初は誰かが間違えて履いてっただけだろと軽く考えていたのだが、同じことが何度も重なれば誰かの悪意による行動だと疑いたくもなる。
「今日はどこにあるのかな? 昨日は校庭の木の枝にぶら下げてあったよね」
「皆目見当がつかん。日に日に巧妙になってる気がするからな」
この学校、私立だけあってやたら広いから探すのが手間なんだよな。
それで昨日はホームルームはおろか一時間目の授業にも間に合わなかった。
「デザイン棟の方に行ってみるね。もしかしたらそっちにあるのかも」
「いいのか? 歩美は先に教室行ってていいんだぞ」
「大丈夫。博也、一人で探すの大変でしょ」
大変なのは大変だが、優等生の歩美まで遅刻扱いになるのはどうも納得がいかない。
昨日は木の枝、その前の日はありきたりだがゴミ箱の中、今日は一体どこに移動させやがったんだ……?
——それから数分、俺が昇降口近くを黙々と探していると、
「歩美、見つけてくれたんだな」
「見つけた。デザイン棟の一階に等身大の彫刻があるでしょ。それの頭の上」
デザイン棟から戻ってきた歩美が俺にサンダルを手渡してくれる。
まさか彫刻に帽子として被せられていたとはな、タチが悪いイタズラだ。
教師が発見していたら俺が職員室に呼び出されてたかもしれない。
「博也急ごう。今行けばまだ間に合う」
歩美が俺の手を引いて階段を駆け上がる。
「おまえもしかして、いつもより早く家を出たのはこのためか?」
「そう。昨日だいぶ時間かかっちゃったから、念のため」
念のためか。たしかに昨日は五日間の中で特に面倒だったからな。脚立借りないと取れない位置にぶらさげてあったし。
二階の教室前に着くと、ようやく俺の手は歩美の手から解放される。
手を繋いだまま教室の中に入るのかと思って、ちょっとだけ焦った。
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