第199話 『剣』スキルの謎と、『隠密』スキルの謎
引き続き、僕は父と一緒に『剣』スキルの謎に迫る。
実力的には、『剣』スキルを取得していなければおかしいほどの腕前を
だがしかし、未だ『剣』スキルの取得には至っていない。――何故なのか。
「アレク自身はどう?」
「うん?」
「何か原因に心当たりはない?」
「心当たりって言われても……」
よくわからない。僕はちょっと普通の人とは違うから……。
転生者だし、チートルーレットなんてものをやっているし、そのせいで何かしらの影響があったのかもしれない……。
そもそもの話、僕が剣を始めてからまだ七年しか経っていないわけで、それなのにスキルを取得できそうなくらい実力があるってのが普通じゃないみたいだし……。
まぁ、これは称号の効果らしいけれど……。
――うん?
「あ……もしかして称号のせいじゃない?」
「称号?」
「『剣聖と賢者の息子』って称号。てっきり剣とか魔法の経験値をたくさん貰える称号なのかと思っていたんだけど……違うんじゃない?」
「どういうこと?」
「単純に、剣と魔法の技術を底上げしているんじゃないかなって」
父は、僕の剣を『レベル1を超える腕前だ』と言った。
だがしかし、ひょっとするとそれは――『称号によって技量を底上げされた腕前』だったのではないだろうか?
『実際にはレベル0.9の腕前だったところを、称号によって0.2上げられた。そのためにレベル1.1相当の腕前になった』
――これが、僕の組み立てた仮説だ。
……いや、まぁ仮説なんていうほど大したものではないけれど、とりあえずそんな予想を立ててみた。
「なるほど……。それなら『剣』スキル取得がまだなのも納得できるね」
「そうでしょ?」
うんうん。結構いい予想なんじゃないかな? 父も納得してくれたし。
というか、むしろもうこれが正解なんじゃない?
「そっかそっか――あれ?」
「ん?」
「それじゃあもしかして、実はまだまだ『剣』スキル取得までは遠いってことも、ありえるのかな……?」
「あっ……」
実際には『剣』スキルレベル0.5くらいだったってことも、ありえるかもしれない……。
レベル0.5しかないけれど、称号の効果でレベル1.1くらいに底上げされていたってことも――
……なんだかそれはそれで、ちょっとすごいけどね。
もしもそうだとすると、称号の効果で剣の実力が倍以上になっているってことだ。
「いや、けどさ、そこまで実力が上昇しちゃうの? 称号ってそこまですごいの?」
「うーん。さすがにそこまでじゃないと思うんだけど……」
そこまでじゃないと嬉しい。
実力がブーストされるのは嬉しいけれど、『やっぱりスキル取得は十年後です』なんてことになったら、さすがに悲しい。
「どうなんだろう……。こうやって称号に受け継がれることも珍しいから、よくわからないんだ」
「珍しいの?」
「えっと、うん。かなり高ランクの職業じゃないと、子供に受け継がれることなんてないから……」
「ふむ……」
そうなのか。他人の称号欄なんて見たことがなかったけど、普通はないものなのか。
てっきりみんな付いているのかと思っていた。
剣聖や賢者なんてのはないにしても、『商人と弓士の娘』とか『
しかし実際には、高ランク職業じゃないと受け継がれないらしい。珍しいことらしい。
……というか、さり気なく父は、自分が高ランク職業であることを自慢した? 気のせいかな?
「とりあえず、称号のことはよくわからないんだね?」
「そうだね。なにせ、あんまりいないから」
やっぱりちょっと自慢しているのだろうか?
「うーん……。リザベルトさんに聞けば何かわかるのかな?」
「リザベルトさん……?」
『リザベルト』とは、レリーナママの名前だ。
レリーナママに聞けばわかるかもしれない? なんで?
「なんでリザベルトさんに聞くとわかるの?」
「リザベルトさんの影響で、レリーナちゃんにも称号があるはずだから」
「へ?」
「『隠密』スキルが――――あ、ごめんアレク。忘れて?」
「え? は? ちょ、えぇ……?」
なんだそれは、そこまで言いかけてやめるのか。
「いやいやいや、ちょっとどういうことなのよ父」
「えっと、こういうのは他人に話すべきじゃないから……」
他人に話すべきじゃない……?
あれか、『他人のステータスを知りたがるのはスケベ』っていうあれか。前にユグドラシルさんに言われたやつだ。
とはいえ、さすがに知りたい。知りたすぎてたまらない……。
えぇと……つまりレリーナママは、父や母と同じように高ランクの職業に就いているわけだ。
そしてその職業は、どうやら隠密系の職業らしい。
どんな職業なんだろう……? ちょっとわからない。ひょっとしてあれかな? 忍者とかかな?
とりあえず忍者だと仮定すると、レリーナママの職業は『忍者』。そしてレリーナちゃんには、『忍者の娘』という称号が付いているわけだ。
……なんだかレリーナママとレリーナちゃんに、濃いキャラ属性が付与されてしまった気がする。
さておき、その称号によりレリーナちゃんには、『隠密』スキルに何かしらのボーナスが付いていると――
「え……。レリーナちゃんって、『隠密』スキルの使い手なの……?」
「そういうのは、あんまり人に聞いちゃいけないんだよアレク……」
「いや、だって……それは聞いておかないとまずくない? 知っておかないと、何かとピンチじゃない?」
「…………」
そうか……そうだったのか。
いつもレリーナちゃんは、音もなく僕の部屋に侵入してくると思っていたけれど、『隠密』スキルの効果だったのか……。
なんとなく
そのスキルを駆使して、いろいろと暗躍していたのか……。
「あ!」
「え、何? どうしたのアレク?」
「ぼ、僕が気付けないだけで、もしかして今もどこかに潜んでいたりするのかな……?」
もしかしたら、今もすぐそばから僕は見られているのかもしれない……。
思わず辺りをキョロキョロと見回してしまうが――
「それは大丈夫だよ、今はいないから」
「…………」
今はいないらしい。
今は、いないらしい……。
何故だろう。その言葉は、まったくもって安心できない。
むしろどうしようもないくらいに、不安を
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