第121話 ナナさんとダンジョンのポイント稼ぎ
今日も今日で、なんだか慌ただしい一日だった。
朝早くから、僕とナナさんはダンジョン作製のため森へ向かおうとして――レリーナちゃんと
……まぁその一件だけでも、十分『慌ただしい一日だった』と表現できそうな気もするけど。
とにかく、そんなレリーナちゃんとの遭遇戦を切り抜け、僕らは森にダンジョンを作った。
そしてダンジョンを作り終えるやいなや、今度は村へ戻ってきて、村の人たちにナナさんの紹介。
それが終わると、教会で僕とナナさんの鑑定――
どれも微妙に困難を極めたり、戸惑ったり驚かされたりする作業の連続だった。
ひとまずそんな外での活動が終わり、僕とナナさんは自宅へ戻ってきた。
ナナさんは、『おばあさま』発言で若干落ちたと思われる母の好感度を再び上げるため、夕食作りを手伝うらしい。
その間、僕は部屋でダンジョン作り――とまではいわないが、少しダンジョンの勉強をすることにした。
ナナさんが頑張っているのに、自室でのんびりサボっているのは、なんだか申し訳ない気がしたのだ。
そんなわけでベッドに寝転がり、ダンジョンメニューをポチポチいじっていると、夕食を告げに来たナナさんに――
『追い出されるかどうかの
――なんて嫌味を言われた。何故だ……。
さておき、母とナナさんが作ってくれた美味しい夕食をいただいてから、シャワーを浴び、部屋で寝る準備を始めた。
ようやく慌ただしいかった一日も、終わりを迎えようとしている。
――といったところで、ナナさんが再び僕の部屋を尋ねてきた。
「こんばんはマスター」
「こんばんはナナさん」
「少しお時間よろしいですか? 今日あった出来事の確認をしたいと思いまして」
「いいよー」
夜中に
ナナさんのキャラクターのせいかな? もしくはナナさんが事あるごとに提唱してくる『マスターの妻はダンジョンコアで、私は娘説』の影響だろうか?
もしや僕は、いつの間にかナナさんのことを娘だと認識させられていた……?
「それではマスター、今日の確認ですが――まずはダンジョン完成、おめでとうございます」
「ありがとうナナさん」
「これからも頑張っていきましょう」
「うん。あぁ、それで少し気になることがあったんだ。夕食前にメニューを見ていたんだけど――」
「私がお祖母様に気に入ってもらえるよう、一生懸命夕食を作っていたときのことですね?」
「ごめんて。……えぇと、それで、気になったのはダンジョンポイントのことなんだ。なんか微妙に貯まっているんだよね」
本当に少しだけなんだけど、じわりじわりとダンジョンポイントが貯まっていく。これはなんだろう?
探索者がさっそくダンジョンに来たってわけでもなさそうだ。
さすがに探索者が来てもこの上昇率だとすると、いつまで経ってもダンジョンを発展させられるだけのポイントなんて稼げやしない。
「ダンジョンポイントはダンジョンが貯めた経験値だという話を、今日しましたよね?」
「あぁ、うん」
「そういうことです」
「どういうことです?」
もうちょっと僕にもわかるよう説明をお願いします。
「すでにダンジョンは設置され、活動を始めています。コアが生きていて、配置されたモンスターが探索者を警戒しながら動き回っている現状。それだけでも経験値――ダンジョンポイントを獲得できているのです」
「へー」
なるほど、そういうことか……。前に女神ズ――ミコトさんだったかな? ミコトさんが、『歩いたり、食事をするだけでも経験値は獲得できる』と言っていた気がする。
ダンジョンも同じように、探索者と戦っていないときでも少しずつ経験値を獲得できるわけだ。
「つまりダンジョンはこうしている今も、できる限りポイントを稼ごうと頑張っているのです。そして私も、お祖母様のポイントを稼ごうと頑張っているのです。妻と娘が頑張っているのに、マスターときたら……」
「ごめんて。……いや、妻でも娘でもないけれど」
というか母に対して『ポイント稼ぎ』という表現を、まずやめよう。
「まぁそれは冗談として、とにかくダンジョン完成おめでとうございます。それと、今日は村を案内していただき、ありがとうございました」
「いいよいいよ。……けどさ、あんまり大勢に紹介できなかったね」
「まぁ仕方ないです」
「ナナさんが空いている時間にでも、また一緒に村を
「よろしいのですか?」
「うん。ナナさんも村の人たちと仲良くなってほしいから」
「ありがとうございます、マスター」
ナナさんはニッコリと微笑んでから――握手を求めてきた。
とりあえず応じたけど……なんだろう、政治家モードに入ったの? うん、まぁ僕もナナさんの支持率を上げるために、今度また頑張ろうかね。
「それで、案内の最後に教会へ行ったわけだけど――」
「そうですね。娘である私と一緒に、キャバクラに行きましたね」
「うん。――いや、教会ね?」
「鑑定が終わったあとは、完全にキャバクラ扱いだったでしょう?」
「いや、そんなことは……」
ローデットさんと軽く会話をしてから帰ろうと思っただけなんだけど……ナナさんは、僕がキャバクラを楽しんでいると感じたらしい。
適当に『最近暖かくなってきましたねー』という季節の話題から入り、最近食べた美味しい物の話をしている最中――僕は横にいたナナさんから、肘鉄を脇腹にくらった。
どうもナナさんは、夕食作りの手伝いをするため、早めに帰りたかったらしい。だというのに僕がそんな状況で、イラッとしたのだという。
それにしたって、僕の倍以上もある『筋力値』で、紙装甲の僕の脇腹をえぐらないでほしい。ちょっと世間話をしていただけなのにこの仕打ち……。
……ただまぁ、キャバクラを楽しみたいという気持ちが、僕に全くなかったかというと、それは否定できない。
特に今回は鑑定代を余計に払ってしまったので、少しだけ元を取ろうとした気持ちが僕にあったことは、残念ながら否定できない……。
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