第37話 『器用さ』極振り『木工師見習い』


 ほんの少し話しただけで二回分の鑑定費用を取られ、人形制作の約束をさせられた僕。

 なんだか敏腕キャバ嬢ローデットさんの実力を、目の当たりにした感じだ……。


 そろそろ鑑定しよう。これ以上話していたら、いつの間にか三回目の鑑定費用をむしり取られかねない。さすがにこれ以上の散財は控えたい。


「えぇと、じゃあ鑑定しますね?」


「はーい、頑張ってくださいー」


 今、頑張っても仕方ない気がするけど……鑑定は頑張った結果を見るものだから。

 さて、今回はどうだろう? だいぶ頑張りは積み重ねたはずなんだけど――



 名前:アレクシス

 種族:エルフ 年齢:7 性別:男

 職業:木工師見習い

 レベル:6(↑1)


 筋力値 3(↑1)

 魔力値 3

 生命力 3

 器用さ 10(↑2)

 素早さ 2


 スキル

 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv1


 称号

 剣聖と賢者の息子



「あ」


「あー、レベルが上ってますねー。おめでとうございますー」


「ありがとうございます」


 よしよし。ようやくレベルが一つ上がったか。

 僕は二週間に一度はここで鑑定しているから、この二週間のどこかでレベルが上ったんだろう。……全く気が付かなかったけど。


 やはりファンファーレはほしいかもしれない。

 ……とはいえ、もしもそんなものがあったら、レイド戦みたいに大人数で戦うことがあったときに大変かな? 強大なボスモンスターみたいのを倒したら、何十人分ものファンファーレが一斉に鳴り響くわけだ、鼓膜破れそう……。


 さておき、それで前のレベルと比べると――『筋力値』が一つ、『器用さ』は二つも上がっているのか。

 レベル5の間は『木工』しかやっていなかったからな、その影響だろう。


「ステータスが合計で三つ上がっていますね。みんなそんな感じなんですかね?」


「そうですねー。三つが基本だと思いますー。二つだったり、四つだったりなんてことも、ないことはないらしいですけどー、少なくとも私は見たことないですねー」


「なるほど」


 しかし、結局『レベルアップボーナス』以外でステータスが上がることはなかったな……。

 『日常ボーナス』とか言ったっけ? 『いつの間にか上がることもある』なんて、母が言っていたけど……。


「レベルアップ以外でのステータス上昇は、あんまり起きないんですかね? レベルが上がるまで一度も上がりませんでしたが」


「あぁ『日常ボーナス』ですかー。うーん……それも『ないことはない』くらいの感じらしいですねー。ほとんどないらしいですよー?」


 そうなのか。ふーむ……。乳児時代に考えていた『魔力量増加計画』も、結局は無理だったのかな?

 『幼い頃から魔力を使って魔力量を増やす』ってのは異世界転生者の定番ムーブだと思ったけど、頑張っても『魔力値』は大して上がらなそう。


 ……それにしても、ずいぶん尖ったステータスになってしまった。『器用さ』だけ、もう二桁到達だ。『素早さ』の五倍もあるぞ。

 前世でやっていたゲームなんかだと、僕はこういうステ振りをバランスよく上げたいタイプだったのに、どうしてこうなったんだろう……。


「まぁ、何にせよレベルが上って良かったです。それじゃあ、そろそろお暇いとまします」


「はーい、お疲れ様でしたー。あ、人形よろしくお願いしますねー?」


「えぇ、はい。それでは失礼します」


 僕はローデットさんに軽く会釈してから、応接室を後にする。ローデットさんは笑顔で手を振って僕を見送ってくれた。



 ……よく考えたら、次にレベルが上がるのは当分先のはずだ。……しばらく来なくてもいいんじゃないか? そもそも二週間に一度は通いすぎでは?


 ……いや、いやしかし、レベル以外の変化はあるかもしれない。

 もしかしたら『日常ボーナス』だってあるかもしれない。滅多にないとはいうが、もし上がるならどのくらいの頻度で起こるかは確認しておかなければいけないんじゃないか?


 それに、スキルのレベルが上がるかもしれない。もしくは新しいスキルを獲得なんてことも……。そう考えると通わざるを得ない?

 ……なんか通うための理由を無理やり自分で捻出ねんしゅつしているだけな気もする。


 あぁ、あとローデットさんに人形をプレゼントすると約束もしたか。

 あれ? まさかローデットさんは、僕を通わせるために人形の約束をしたのか? そんな馬鹿な……いやしかし……。


 侮れない。やはりローデットさんは侮れない……。人気ナンバーワンキャストの名は伊達じゃないな……。





 next chapter:ヤンデレの気配

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