第51話 可愛い仮妻と混浴⑤
段々と意識を取り戻してきた頃に、俺の耳には川のせせらぎのような音が流れていた。ゆったりできる音色を聞きながら、体を覆う温かな何かが漂っているのを感じ取った。
しばらくの間、その居心地の良い中で過ごしていれば、ふにふにとした柔らかさを持ったものが腕を包み込んでいるのが分かった。
なんだろうと思いその包み込んでいるものを掴む。すると、ふにゅりと形を変えて手の中に収ま……らない。
なんだ、この柔らかさを持つ大きな物体は? クラゲか?
調べようと再び手を伸ばしたところで、耳の中に何かが入ってきた。ざらざらとした生暖かい感触、それに何度も嗅いだことのある大好きな香り。
これは……
「んっ……あなた、気持ち良いね……」
「な……」
「でも凄いね。この部屋、個室の露天風呂付いてて驚いちゃった。景色は暗くて良く分からないけど、空は星が綺麗」
目を開けて隣に視線を向けてみれば何も身に纏っていない生まれた姿の由季が映っていた。
由季が恥ずかしがっていたから、一緒に浸かることなんて指で数えられるほどしかなかったのに……。
だからこそ、この状況は何なんだ⁉︎
「あなた、どうしたの?」
凶悪過ぎる谷間に俺の腕をむにゅむにゅと挟み込んでいる由季がこてんと頭を傾ける。
「本当に大きくなったな……って、違っ!」
「前にも言ったけどあなたに揉まれたり、たくさんの愛情が溜まってるからだよ。でも、流石に肩が凝ってきちゃうの。揉んでくれる?」
「も、揉んで……でも俺、生は上の乳しか……」
「胸じゃなくて肩だよ。まぁ、触りたかったら触っても良いけど……?」
由季は俺の腕を手放して離れる。すると、開放されるように由季の爆弾が露わになる。にごり湯で見えなくなることはない。何せ、透明の湯なのだから。
当然、俺の視線は綺麗に実っているさくらんぼ二つに固定される。そのさくらんぼの持ち主である由季の視線は湯の中に存在する俺のぞうさんに向いている。
「前にもこういうのあったね」
「そ、そうだな……」
「あの時は本当にびっくりしちゃった。いきなり、あなたが入ってくるんだもん」
「悪かった……。恥ずかしくないのか?」
「全部捧げるって決めてるから」
由季はくすりと微笑むと思い出すかのように語り出した。
「あの頃の私は、あなたと付き合おうだなんて思ってなかった。好きだったけど、ただ隣にいてくれさえすればそれで満足だって思ってた。でもね? あなたが私を立ち直らせてくれた。無色で何もない世界に色を付けてくれた。あなたは私がいてくれて日常が楽しくなったって言ってくれたけど、それは私も同じ。いつしか私は本当の意味であなたを好きになった。心の底からあなたが欲しいと思うようになった」
「そうか……良かった……」
「あなた?」
由季が心の底から俺を欲していることを聞けば、自然と俺の頬から涙が溢れてきた。
これは嬉しさの涙でも悲しみの涙でもない。
「……本当はずっと怖かった。うざいって言われて、嫌いだって言われて……。その度に俺は由季の方が傷付いてるって思い続けて堪えてきた。でも、本当は耐えることなんて出来なかった。痛くて、辛くて、誰にも相談できなくて……終わりが見えなかった」
「あなた……ありがとう……。もう大丈夫だから……。これからは幸せだけをあなたにあげる。これから先はずっとあなただけに愛を捧げます……」
**** ****
その後、感極まった俺と由季はその場で抱き合い長めのキスを交わした。
だが、問題が起きた。
由季の両方の爆弾がむにゅっと形を変えて俺に押し付けられていることで。
そのせいですっかり、ぞうさんは巨象に進化した。
それだけなら良かった。
だが、時折巨象が俺の意思とは関係なく由季のおしりをペシペシと攻撃しているのはいただけなかった。
由季もそれには気付いているようで体全体を真っ赤にして固まっている。
「あ、あなた……あ、当たって……」
「当てているのよ……」
「それ私が言うセリフ……」
そうして由季は意を決して巨象を掴む。そして、何かを感じ取ったのか不思議そうな顔をする。
「なんか脈打ってる……。
「ん? さっき?」
「私があなたの服を脱がした時にちょこっと……」
「へ?」
ちょっと待ってくれ。いや、そもそもどうして俺は風呂に……。
「私が露天風呂に連れてきた時には小さくて可愛かったよ……」
「……あぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
その場には俺の情けない声が轟いた。
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