Scene16 -5-
ロボタウンの襲撃事件。これまでにもハッキングは数えきれないほどあり、侵入も両の手では収まらないくらいはあったが、ここまで物理的な強硬策は初めてのことだった。
その理由はきっとGOTには機動重機が配備されているからであろう。当然機械虫に対抗できるのはGOTだけであり、そのGOTと敵対し、助力を受けられないことは国の存亡にかかわる可能性もあった。
だが、各国がGOTと同等の戦力を得たことで、そういった遠慮はなくなったのだが、なればこそ、いまさらGOTの技術を奪う必要はなくなったはずなのだ。
意味のない襲撃事件と考えられてはいたが、PRシリーズが投入されたことで簡単に切り捨てられなくなった。なぜなら、PRシリーズはガーディアンズに関係する物だからだ。
今回の襲撃の犯人は、神王寺コンツェルンとガーディアンズの関係を知っている可能性がある。最悪の場合ガーディアンズの基地がロボタウンの地下深くにあることも知っているという危惧すらある。
神王寺コンツェルンとガーディアンズともども緊張が高まり警戒を強める中、やはり世間はガイファルドのパイロットというべき人影について注目していた。
様々な意見が妄想によって加速する。人が創りし超兵器。異星人の技術。天使の戦闘形態。ガーディアンズはこういったことを否定するような情報操作をすることはなかった。
襲撃の翌日にロボタウン内の病院に入院したリンと長谷川のお見舞いにアクトはやってきていた。
「
「ついでじゃありませんよ。長谷川さんの方が重症だったって言うじゃないですか。放置していたら命にかかわっていたのにもうそんなに元気になったんですね。医療技術の進歩に感謝しましょう」
「それで、日向は大丈夫なのか?」
リンと長谷川は別部屋で、長谷川は元気になったとは言え重症。当然ベッドからは動けない。
「リンは軽傷ですけど、全身擦り傷だらけでベッドから動けない、というか動きたくないらしいです」
「そうか、ともかく無事でよかった。彼女は神王寺コンツェルンの宝だからな」
「そうですね」
(神王寺だけじゃなく、ガーディアンズの宝でもあるな)
だが、危険を冒してセイバーから降りて助けたのは、そういった理由ではないことは自分がよくわかっている。とはいえども、助けたことをあかすわけにはいかない。
不幸中の幸いと言うべきか、セイバーから降りてふたりを助けたとき、リンも長谷川も意識を失っていたので助けたのがアクトだとは気が付いていない。
だが、リンのお見舞いに行ったとき、リンはこう言った。
「なんだかアクトが助けてくれたみたいな気がするんだよね」
その理由は病室に来たアクトの様子が、自分が助けた人の状態を見に来たような感じだから。というものだった。さらに付け足して、
「助けられたときにアクトの声が聞こえた気がしたんだ」
ということを言われ、そんなことは考えずにリンの名前を呼んだのが失敗だったと思いつつアクトは白を切った。
「オレは本部研究所のシェルターにいたからな」
「だよね、あのあとアクトが帰ったあとに事件が起こったから。アクトが巻き込まれなくてよかった」
仕方ないとはいえ嘘をつき、そんなアクトの心配をしてくれるリンに、彼はジーンと心にくるものがあった。
それから数日たったある日、博士は共命者をハンガーに呼び出す。アクトたち三人が到着すると博士と剛田が待っており、その手にはかなり大きなアタッシュケースが握られていた。
「君たちを呼んだのは他でもない」
「なんだ、なんだ?」
「先日アクト君が戦闘中にもかかわらず合身解除をおこなったことについてだが」
「博士、まだそれ言うんですか? 申し訳ないとは思ってますけど、あれは致し方ないって言ってたじゃないですか」
GOTの技術者としても重要となる人物、リンと長谷川を救うためには合身を解除してアクトが彼女らを救うしかなかった。
「そう、アクトは悪くない。悪いのは地下のシェルターから出たリンと長谷川」
(エマは俺を庇っているのか? リンたちを責めているのか?)
「違う違う、あの判断がどうのってことじゃない。万が一にもまた同じような状況になったときのための対策だ」
「これを見ろ」
剛田がアタッシュケースのひとつを開けた。
「これって!」
アタッシュケースの中にはヘルメットと畳まれた服らしき物。そしてプロテクターが入っていた。
「これから作戦行動時にはこのスーツを着用してもらう」
「これを着ていれば合身を解除しても正体がバレないってことか」
「それもあるが、いくら君たちが超人でも生身では危険だ。このスーツは身を護る防具であるが、装着者の能力を向上させるパワードスーツでもある」
「マジですか?」
アクトの目が輝く!
「オレも一緒にやりたかったのに」
「黙っていたのはね……。僕のデザインでスーツを作りたかったからだよ」
という私的な理由だった。
「アクトだけじゃない。今回は俺もかかわってないんだ」
剛田も少々不満気味だった。
「ともかく着てみてくれ。性能テストもしないとならないからな」
三人はそれぞれアタッシュケースを受け取った。
「ここで着替えるのか?」
ルークが言うとアクトはエマを見る。エマはその視線をじーっと見返すので、アクトは視線を外した。
「上着だけ脱いであとは上から着ればいい。靴も履いたままで」
ライダースーツのような上下にレッグガード、アームガード。ブレストアーマーにショルダーアーマー。ウエストラックアーマー、そしてバイザー付きのヘルメットを被る。
「うん、いいね! こいつはカッコいい!」
アクトは絶賛した。
それぞれ自分たちの共命体と同じ色をメインカラーとしている。アクトはホワイト、ルークはブルー、エマは薄めのレッド。
特別なギミックはなく、あくまでも防具であるためかなり軽量にできている。
その後おこなわれた機能テストでも問題なく、十分な数値を記録した。
ガイファルドから降りるという事態を想定していなかったガーディアンズは、共命者に特殊スーツを着用させることで今後の対策とした。
こういった不測の事態の他にも、想定外、予想外の事態はある。機動重機のデータから造られた機動兵器。機械虫の親玉とも言うべき古代人型戦闘兵器セガロイド。そのセガロイドたちがムー帝国を名乗り宣戦布告したこと。
さすがにこれ以上予想外、想定外のことは起こらないだろうと思っていたアクトたちではあったが、今後もいくつも驚くべきことが起こるのだった。
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