Scene10 -2-

  飛び込むように作戦室に入ったふたりをエマとアーロンと博士、イカロスでガイファルドをオペレートする隊員が数名が待っていた。


  各オペレーターまでもが一緒にミーティングに参加するのは初めてのことで、今回のことが今後の戦いにどれほど重要なのかを物語っていた。


  「お疲れ様です」


  直接顔を合わせる機会の少ないオペレーターの人たちに挨拶をするアクト。そのアクトに彼らは元気に、そしてにこやかに挨拶を返した。


  彼らは機械虫を相手に体を張って戦うアクトたち共命者に対して深い敬意を持っている。みんな機械虫に肉親を殺された被害者なのだ。


  少し遅れて剛田が到着すると博士の横に座り、その反対隣り座っている指令室勤務のハルカがミーティング開始の挨拶をする。


  「今回の議題は大まかに分けると三つ。前回の戦闘での機械虫の行動と新種の登場、そして未知の巨人についてです」


  粛々とミーティングは始まった。


  まずモニターには録画された前回の戦闘が映し出され、その隣のモニターにはその時の状況やデータが表示される。最初に問題となったのは機械虫の行動。今回の説明は珍しくアーロンが自らおこなった。


  その内容は、今まで世界中に現れていた機械虫の行動はあのピラミッドを探すことが目的であり、連結するのも戦闘能力を向上させることが真の目的ではなく、各々が持つコアのエネルギーを高めて空間に強く干渉し、Dゾーンの出力を上げて巨人が居る別の空間に繋げるためだと説明するした。


  その空間にいきなり飛び込んだルークを含め、今後そのような不測の事態に遭遇した場合は指示を仰ぐようにと注意喚起がなされた。


  「アーロン司令の説明を踏まえて考えた場合、機械虫が探査用の端末に過ぎないと仮定できますが」


  ハルカの見解にアーロンは補足する。


  「探査用の端末というより、端末を探査用に使ったというべきだろう。その点については別件と一緒に話そう」


  アーロンはそう言って博士に合図をした。


  「問題のひとつは機械虫とは別の個体だ。特異型機械虫をも超える強さだったことを考えればアレが戦闘用であるのは言うまでもないだろう」


 ここで女性オペレーター索敵士の八島美紀が挙手をする。


  「八島くん」


  「ずっと機械虫の群れをモニターしていたのですが、機械虫ではないあの個体には気が付きませんでした。ご存じの通り機械虫のコアは充電池のような物で、あの個体は特異型機械虫同様に動力炉型だと思います。よって現在は探知することは不可能です」


  探知できないということは後手に回るということだ。戦いにおいて情報は早く正確であるほど優位であることを考えれば、より厳しい戦いになることは否めない。


  「『アレ』とか『個体』とか呼んでるが、世の中ではもうメタルビーストとか機械獣だとかって名前が広がってるんだぜ」


  「やっぱり機械獣か」


  剛田の言った機械獣という呼称は実際に相対したアクトも思わず口に出た名称だった。


  「ピラミッドのそばから現れたからスフィンクスってのはどうだ? 機械獣スフィンクス!」


  ルークが我ながら良いネーミングだといった顔をしていると、


  「それもすでにネットに上がってたぞ」


  「えっ?!」という驚き顔で剛田を見る。


  「望遠ながら今回の戦闘は動画配信されて数億回も再生されてるからな。どこやからかわからんが情報が早いったらないぜ」


  「まぁ機械獣、個別名スフィンクス。いいんじゃないか?」


  「博士、そんなことを呑気に言ってる場合じゃない。機械獣よりあの巨人について教えて欲しい」


  博士が納得したところでエマが横やりを入れる。表情からは察することができないが、エマは脱線しかけた話を戻して早く続きを聞かせてと催促しているようだ。


  「そうだな、あの灰色の巨人についてわかったことを話そう」


  緩んでいた気を引き締めて一同が博士を凝視する。

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