Scene9 -10-

  実力差は歴然で、このままでは敗北必死なのは誰の目にも明らかだったのだが、セイバーの心は恐怖に蝕まれながらもギリギリのところで踏みとどまっていた。


  振るわれた渾身の一撃がセイバーに襲い掛かる。だがその攻撃を受ける前にとうとうセイバーは後ろに倒れてしまった。そこにヘビーアームズからガトリングガンが斉射されフォースで強化された弾丸が紫色の装甲を激しく撃ち付ける。


  「(その程度で)」


  数発ヒットするものの展開されたDゾーンによって弾速は減衰され防がれてしまう。


  上空からはガトリングと同時に発射されたミサイルの雨が降りそそぐが、それすらもフィールドに阻まれていた。


  意識が上空に向いたとき、視界の悪い下方から倒れていたセイバーが襲い掛かった。


  ヘビーアームズの一斉掃射とセイバーの不意打ち。


  「(ゴハー、貴様は寝ていろ)」


  左手の手刀の光刃がセイバーの肩から胸にかけて袈裟斬りにする。切り裂かれた胸部から緑の液体が飛び散った。


  「(もうひとりいることはわかっている)」


  ミサイルに紛れて飛来するガイファルドの影。だが、すべて見透かされていた。それに気が付き拳を握って迎撃の準備をする。上空から特攻する者を迎撃しようとした謎の巨人は初めて一瞬の隙を見せた。上空から襲ってきたのはレオンではなくノエルだったからだ。


  ノエルはヘビーアームズをオプションボックスに設置して攻撃をオートにした状態で自分は上空に飛び上がっていたのだ。


  ノエルが振り下ろしたダガーが肩に突き刺さる。しかし、迎撃の拳もノエルの腹部へと打ち込まれていたために、勝負を決する一撃にはならなかった。


  「うおおおおおおおお!」


  胸部を切り裂かれて崩れかけていたセイバーのダブルハートの輝きが増す。これまで二度発現したソールリアクターの高出力モードで深々と切り裂かれていた損傷個所の傷が塞がっていく。


  溢れんばかりのエネルギーを発して弾けるように立ち上がり拳を振りかぶるセイバーに再度左の手刀が振り上げられようとした瞬間、後方から迫る者がセイバーの頭を鷲掴みにして横に払いのけた。


  手刀は空を斬り、セイバーの雄たけびに重ねてレオンが謎の巨人の眼前に迫る。一点に集中してフォースが激しく瞬く右腕が豪快に振り下ろされた。


  「うぉらぁっ!」


  レオンの必殺の一撃がノエルが刺した肩のダガーごと胸にかけて削り潰した。


  明確なダメージとなる攻撃を受けて後ろに倒れ掛け、突き上げられていたノエルは地面に落ちる。


  「(ゴハーの分際で!)」


  初めて激しく揺れる感情を込めた言葉を発し、倒れそうな体を踏み止めた。そして、三度目のフィーチャーフォースを繰り出して力を出し尽くして座り込むレオンを討つべく、赤熱する右の拳を振り上げた。


  「あああああ!」


  レオンによって横に払われていたセイバーも強靭な足腰で踏ん張っており、燃えるような赤い拳に向けて渾身の力で打ち返す。


  数舜の間を置いて拳に纏った力は爆発し、両者を後方に吹き飛ばした。

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