Scene9 -7-
ピラミッドの周りではノエルとセイバーが柱の破壊に奮闘していたのだが、柱の増殖速度は加速していき、もはや手に負える状態ではなかった。
「どうにかならないのかっ」
好転しない状況にうんざりしながらも持てる力で目の前の虫の柱を破壊し続ける。
そんなセイバーにイカロスから通信が入った。
「セイバー、ノエル、聞こえる?」
「聞こえてるよ。レオンがどうこう言ってたようだけどどうなった?」
厳しい状況に疲弊しかけた思考で少し荒々しく返答するアクトは次の言葉を聞いて気持ちが切り替わる。
「その機械虫の柱の中にひとつだけ変わった物があるの。そこだけ力場が少し強くて、どうやらそこが中心となっているみたい。だから……」
「だからそれを叩けば力場が弱くなって、空間の歪みもなくなるってことだね」
「そう、今その座標を送るわ」
美紀から転送されてきたデータでノエルよりセイバーの現在地からの方が近いことがわかり、全速力でそこに走り出した。
「ただ、ひとつだけ注意して」
「なんですか?」
この状況の活路が見え落ち着きを取り戻したアクトの口調もいつものように戻っていた。
「もし、そいつを見つけてもすぐには破壊しないで」
「どうしてですか?」
「レオンは今、そこから別の空間入ってしまっているんだから、その機械虫を破壊してしまったら、そこから戻って来られないかもしれないって博士が」
早く破壊しなければならないのに破壊してはいけない。どうするかと考えて走るセイバーの目の前に通常の物と明らかに違う個体が見えてきた。赤黒いそのボディーは近づくにつれてA級機械虫よりも一回り大きくてガッチリとした体躯であることが判明し、セイバーは急制動を掛ける。
「こいつはすぐに倒せる奴じゃないかもしれない」
「え?」
通信にそう答えたとき、赤黒い装甲の機械虫が動き出す。見えていたのは背中だったようで、バシッと背中の翼が広がった。起き上がるとセイバーの全長を優に超えており、難敵であると直感する。
「こいつは新型の機械虫よりもずっと……」
セイバーはそこで言葉を失った。なぜなら、振り向いたその機械虫は機械虫ではなかったからだ。振り下ろされる鉤爪を備えた腕が今までセイバーが立っていた場所に叩きつけられ、危ういところで後方に退くが、衝撃波と砂がセイバーに叩き付けられる。
「どうしたのセイバー」
それを見上げたまま驚きと戸惑いで通信に返答できずにいた。
「何かあったの?!」
「犬か、猫か、トラなのかライオンなのかわからなけど。違う、今までの機械虫とは全然違う奴だ!」
「なに? よく聞こえないわ。どうしたの?」
セイバーからの通信が乱れて音声を正確に聞き取れない。
「強力な磁場と空間の歪みのせいで通信がっ。それにレーダーも熱感知もすべて正常に状況を掴めません」
「ノエルをそこに向かわせるんだ」
博士よりも早く剛田が叫んだ。
「ノエル、さっきの座標に急いで向かって。セイバーに何かあったみたい」
「わかった」
目の前の機械虫の柱を破壊したノエルはすぐにセイバーの居る座標へと向かって跳躍する。
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