Scene4 -3-
ハンガーへ向かう中でアクトは気になっていたことを質問した。
「なぁ、聞きたいことがあるんだけどさ」
ちょっと控えめな言い方なのは、このことはいわゆる機密情報なのかもと思ったからだ。そのため聞いていいものかどうかというためらいがあった。
「ん?」
「このガーディアンズの基地ってさ、いったいどこなんだ?」
ふたりは顔を見合わせて小さく笑った。
「詳しい場所は俺たちの口からは言えない……言わないが、ここは地下何百メートルっていう深い深い場所にあるんだ。正に秘密基地だな」
「何百メートルもの地下か、なるほど。で、ふたりはこの基地から出ることあるの?」
「オレは週に3回くらいは出てる」
外に出ていると聞いてアクトは目を見開いた。
「でも仕事でだ。街に出かけたりとかではないぜ」
それでもずっとここから出られないのではさすがに息苦しいと思ったので、アクトは少し安心した。
「わたしはほとんど出ない。用があるときだけ」
「エマが前回出たのはいつだったかな? 三ヶ月くらいまえに下着を買いに行っ、ぐへっ!」
ルークの横っ腹に深々と肘が入った。
「と、ともかく外に出られることもあるんだな。ちょっと安心した。機密事項の多そうな秘密結社だから軟禁生活を強いられるのかと思ったから。ならオレも仕事でいいから外に出られるようにアーロン司令に頼んでみようかな」
「その件なら司令じゃなくて柳生博士に話すといい。たぶん問題ないはず」
「そうなの? 博士に頼めばいいのか」
最高司令官ではなく技術者の博士に頼むことに疑問はあったが、外に出られるのかという心につっかえていたモヤモヤが解消されたことで納得した。
「ところで、お前の共命体の名前は決めたのか?」
ハンガー間近の通路に達した頃、今度はルークがアクトに質問する。
「これにしようかなぁってのはあるんだけどさ。ルークはなんでレオンにしたの?」
参考までに聞いてみると、
「レオンってのは俺のミドルネームだ。共命体は俺自身だってことだからそのまま俺の名前を付けた」
「なるほどね」
共命体は自分と命を共にする者だからある意味自分自身。自分の名前を付けるってのはなかなかシャレているとは思ったが、残念ながらアクトにミドルネームはない。
「エマは?」
「私は、好きな物語の主人公の名前から取った。こんな人になれたらなっていう理想の自分」
「理想のか」
あえて自分ではなくて理想の人を自分に重ねたと。そういえばノエルの口調はエマよりずっと女の子していたことを思い出してエマを見ると、エマは何かを察してか上目づかいにアクトを睨んだ。
「で、アクトが付けようとしている名前は?」
若干気まずい空気をルークの声がかき消した。エマも表には出さないが横を歩きながら聞き耳を立てていた。
「実はオレさ、ヒーローとかロボット好きなんだ。趣味で模型作ったり絵を描いたりもしててさ、こんなロボットいたらなんて自分で書いた小説の主人公のロボットをデザインしたりしてたんだ」
「へぇ~」
より興味を持ったというような相づちをルークがしたところでドアが開きハンガーへ続く通路を抜ける。
「そのオレがデザインした主人公の乗るロボットの名前がさ……」
そう言って三体の巨人が立ち並ぶハンガーで上を見上げたアクトは言葉を詰まらせ立ち止まった。
「It's cool.」
ルークもそれを見て思わず叫んだ。
青い巨人のレオンと赤い巨人のノエルの間に立つ白い巨人を見てアクトは小さく言葉を発した。
「……セイバー」
そこに立っていたのは昨日とは違う白い巨人だった。アクトが驚くのも当然だ。それは彼が自分の書いた小説の物語のためにデザインしたロボットの姿だったからだ。
「それが私の名前ですか?」
新たな姿となった白い巨人がアクトに問う。
「そうだ、おまえの名前はセイバー。この世界を救う者だ」
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