第315話 失敗は成功の母
「しかし、昨日はあのバカ(勇者)の所為で、とんだとばっちりを食ったな……
まあ、気を取り直して、作り直すか。」
いつの間にか、完全にバカの所為にして責任の所在を誤魔化す健二だが、アケミさんからコッテリ叱られて居る間に対策をジックリ考えてあった。
「フフフ、強度を上げるには、鍛造だよな。」と。
そう、俺の拙い知識の中で、強度を上げるには、鍛造だろうという結論に達したのだ。
時空魔法を使った超圧縮空間で鍛造し、そのブロックから削り出すという手法である。
多分密度が上がる筈だから、強度もそれに応じて上がる筈……多分。
そうして、俺は4日間掛けて銃身を何種類も作り上げ、銃身に付与を掛けて更に強化した。
「やっと再テストまで漕ぎ着けたな。」
テストの準備も的となるゴーレムも出して、銃身を取り付けた土台もガッチリと設置したし、今回は土魔法で固めに固めた防護壁で周囲を囲んだし、勿論地下でも無ければ閉鎖空間でも無い。
そうここは、竜の墓場の傍である。
やはり人気の無い場所で回り近所に迷惑が掛からない場所というと、ここしか思い付かなかったのであった。
「しかし、相変わらずここに来ると温泉が出るのでは?と期待させる匂いだな。」
今回は火薬量を5%刻みで増量し、どれ位の火薬量で、どれ位の威力が出て、どれ位銃身が耐えられるのか? をテストする予定である。
あまり的の距離が近すぎても実戦的ではないので、取りあえず10mぐらいの距離を取っている。
「まず最初は5%の弾からだな。」
俺は五重にシールドを掛けた後、1つずつ指差し確認をしてカウントダウンを始めた。
「5,4,3,2,1 ファイヤー!」
バンッ!
チュキーン♪
「お! 普通っぽい音!」
どうやら弾は無事に発射され、銃身にもダメージ無し。
的のゴーレムにもダメージ無し……。
俺の作った防御壁には跳弾が当たった跡あり。
「全くもって効果無しだな。 まあ、5%だしこんなものか?」
そこから俺は気を取り直して徐々に火薬量を増やしていく。
10%……15%……20%……25%……ここで、問題発生。
25%までの発射によるダメージで銃身を固定していた台座が半壊してしまった。
その所為で着弾位置がズレたが、的となっているゴーレムのボディも軽く抉れていた。
しかしこの台座、人間の身体や筋力よりも確実に丈夫なんだがなぁ。
もし、これをハンドガンなんかにすると、確実に骨折コースだよな。
何か反動を吸収させる付与でもしないと、とてもじゃないが、使えない武器になってしまうな。
そこで、馬車にGを吸収する為に付与している『慣性ダンパー』を銃身に付与してみる事にした。
結果は良好で、華奢な台座に固定して発射実験を行ったが、台座が壊れる事も、吹っ飛ぶ事も無かった。
「ふむ、これで生身の身体でも使えそうだな。 後は、何処まで火薬量を増やせるかだな。」
更にテストは進み、40%では関節部分を破壊可能なのを確認、45%では比較的分厚い胴体に深さが30cmぐらいの穴を開け、そしてとうとう50%に到達すると、胴体部分に大穴を開けるまでに至ったのだった。
気になる銃身の方だが、今の所問題は無さそうである。
後は50%の火薬量でどれくらい保つのかの耐久テストだな。
それから、2日間ミッチリ撃ち込んで約2000発を撃った。
銃身は使用前の予備の銃身と詳細解析を使って比較してみたが、特に問題は発見出来なかった。
「多分、大丈夫みたいだな。」
俺はテスト結果に満足し、早速、銃本体の作成に入るのであった。
更に1週間が過ぎ、漸く2タイプの本格的な実用銃が完成した。
ハンドガンタイプは構造が簡単な6連発のリボルバーで、もう1丁はライフルタイプである。
「フフフ、ついに完成した。 俺は勇者を超えた!」
まあ、そうは言っても、実際本心としては超える超えないはどうでも良い事である。
それよりもこれで、対ゴーレム兵器が完成したという事である。
俺は早速コルトガさん達を伴って、ダンジョンの第56階層へテストしに行った。
ライフルで狙いをすませ、ゴーレムの手足をコツコツと破壊して行く。
「おお!! これは! 何とも凄い威力ですな。 この距離から正確に当たるとは。」
俺達は今、標的となるゴーレムから300m離れた位置に、土魔法で小高い櫓を作って、その上から狙撃している。
「うん、なかなかに良い感じだな。 コルトガさんもやってみる?」
俺はコルトガさんにも射撃させて見たのだが、5発撃って2発当たるぐらいの腕前であった。
「うむぅーーー、主君、これは結構ムズいですな。 なかなか微妙なブレで外れてしまう。
やはり、某には剣ですな! こう言うチマチマしたのは性に合わん様です。」
と直ぐに飽きた様子だった。
順にコナンさん、サスケさんも試して貰った結果、コナンさんが一番優秀で5発に4発名中、サスケさんが5発に3発ぐらいであった。
ただ、大きな問題も発覚した。
静寂を打ち破る射撃時の音である。
その為、その音に群がる様にゴーレムが湧いて寄って来るのだ。
直ぐに消音の付与を付けて対処したが、それでも音速を軽く超える弾丸が発生する衝撃波がデカい。
これも面倒ではあったが、弾1発1発に風魔法の障壁と云うか、スムーサーの様なシールドを付与してカバーしてみた。
結果、立派なアサシンライフルが出来上がった。
これに比べると、弓矢の方が音が大きいかも知れない。
「これは、凄いでござる。 正に暗殺者向けの武器でござるな!」
とサスケさんが感銘を受けていたが、
「いや、誰も暗殺なんかしないからね? そう言う物騒な事には使わないから。」
と釘を刺して置いたのだった。
まあ、たしかにこれがあれば、かなりの『ゴルッチ33』が誕生しそうではあるがな……。
リボルバータイプも全員で試したが、こちらは近距離では使えるものの、少し離れると、やはり狙った的に当てるのが難しかった。
どうやら、夕日のガンマンへの道は険しい様だ。
斯くして、俺は一旦工房へと戻り、このスナイパーライフルとリボルバーのセットを各10個ずつ製作し、翌日ダンジョンアタックを再開したのであった。
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誠に申し訳ありません。1話アップし忘れてました。
第306話 と 第307話の間に幻となっていた1話がありました!
何故かコメントとアップした筈の内容に食い違いがあるなぁ?とは思ってましたが、まさか、アップし忘れて居たとは…… 誠に申し訳ありませんm(__)m
正規の順番で 第306.5話としてアップしてあります。 宜しくお願い致します。
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