第286話 恐ろしい助言と前準備
部屋の模様替えだが、話を聞くと、ぬいぐるみ以外は、アニーさんの『助言』が元凶であった。
こら! 何アケミさんを唆してるねん! と問い詰めたいところであるが、アケミさんがその助言に乗ったのは、偏に「折角ご結婚されるのだから、ムードのある部屋にしないと!」と言われたそうで。
「あ、そうだったんだね? いやぁ~、それを聞いて逆に安心したよ。 勿論、ぬいぐるみぐらいは良いけど、長く一緒に居る部屋だから元の部屋の状態に戻してさ、アケミさんの家具や何かを入れる感じにすれば良いんじゃない?
やっぱり、部屋は落ち着く感じにしないと、精神状態が保たないと思うんだよね。 悪いんだけど、俺はあまりゴチャゴチャした部屋だと落ち着かないんだよ。 本当にゴメンね。」
「そ、そうでしたか。 私も余りこう言う事に縁が無かったので、そう言う物かと……。」
まあ、それで俺は逆にホッとしたのだが、ステファン君には心から「ご愁傷様」と言いたい。
「俺の部屋の隣がアケミさんの元の部屋だし、逆に2部屋使っちゃおうか? こっちを2人のプライベートな空間……寝室やリビングで使ってさ、元のアケミさんの部屋は、他の人が来た時に対応する為の部屋とかにする感じにして。 どう?」
「ああ、それは良いかもしれませんね。 で、どうしますか? 今夜をここで過ごすのはちょっとキツいんですよね? 良かったら私の部屋に来ますか?」
という事で、アケミさんの部屋に場所を移した。
アケミさんの部屋は、全然普通だけど、やや女の子の部屋という雰囲気で、ベッドも普通で、ソファーもクッションがやや多めなぐらいで問題無しであった。
「なーんだ、この部屋のコーディネートは良いじゃない。 あー、良かった。 安心したよ。
あの、ソファーはアニーさんにプレゼントしとくか。 ハッハッハ。」
一夜明け、忘れ無い内にという事で、朝食を食べながら、スタッフ達に、速攻で部屋の原状回復を厳命しておいた。
アニーさんは、自分のコーディネートに自信があったらしく、かなりプンプンと怒ってらっしゃったが、華麗にスルーしておいた。
そして、俺とアケミさん、コナンさん、コルトガさんの4名で、旧アルデータ王国の都市サウザンドへと向かう事にした。
今回の目的は……だが、領主のジェイクさんに、国を興す様に勧める為である。
理由は色々あるのだけど、一番の理由は、俺が計画している『山手線』にある。
まあ、一大プロジェクトなので、完成までに時間は掛かるが、これが完成すると、各国の王都へ向けた枝線を作る可能性もある。
どちらにしても国を跨いだ行き来が短時間で済む様になると、確実に旧アルデータ王国の領地に着目する者が居るかも知れないからである。
だから、下手に手を出される前に、一気に国として建国しちゃえ! という事だ。
魔王国とジェイクさんの興す国で上手く手を組めば、無法地帯も安定するのでは無いか?という訳である。
「うーーん、ケンジ君、藪から棒だね。 まあ、言わんとする意味は理解するけど、流石に今の段階だと、少々処では無く、荷が重いなぁ。」
と困惑気味のジェイクさん。
「まぁそうですよねぇ。 でもイキナリ全土を掌握しなくても良いんじゃないかと。 先に領土を宣言して、少しずつ実効支配を広げて行けば良いんじゃないでしょうか?」
「ふむ、確かにな。 変な奴が蔓延って面倒と言えば面倒だな。 うむ……判った! その提案、ありがたく受けようと思う。」
「まあ、そうと決まれば、国名とか色々決めておいて貰えますか?
うちは承認しますので、あと、ご近所という事で、魔王国の魔王さんとも取り次ぎしますので、一度会談の席を設けましょう。 出来れば、事前に各国へも通告しておくので、早めに名前だけは決めて置いて下さいね。」
「そうだね。 なるべく早く決めるよ。 また決まり次第連絡入れるから。 それはそうと、今度ご結婚だそうで。 おめでとうー! そうかぁ、いよいよ結婚かぁ。結婚式には是非とも呼んで欲しいところだけど、君の国まで遠いからなぁ。往復で1ヵ月は掛かるか? うーーん、時期次第だけど、何とかして駆けつけたいから、日時が決まったら、早めに教えて欲しい。
それまでにケンジ君の言うモノレールが完成すれば早いんだろうけどなぁ。」
「判りました。一応来春の予定です。 また日時が決まり次第早めに連絡入れますね。」
うん、良かった。 これでまた一つ問題が解決したね。
俺はホッとして、次の魔王国へと足を向けたのであった。
「という事で、魔王さん、一席設けるので、ジェイクさんの所と上手くやって欲しいのですが、どうでしょうかね?
ほら、モノレールの件もありますし、変な輩が近隣に蔓延るより、全然良いと思うんですが。」
「ああ、了解。 うん、ケンちゃんの持って来る話だから、そこら辺は全然オッケーよ! オッケー。
それよりさ、モノレールってあれだろ? あのドリーム・シティにあった奴だよね? こりゃ、愉しみだな! 旅行し放題じゃねぇか!! ガハハハハ!!」
ピンクのアフロが今日も冴え渡る魔王さんは、近隣にどんな国が出来るのかは、全く心配してない様子だった。 実際のところ、仲介する俺を信用してくれているのだろうし、それに変な国なら滅ぼしゃぁ~良いってノリなんだろうけどな。
そんな最近の魔王さんの趣味は、俺があげたマギカメらしい。
彼方此方でパシパシとシャッターを切っていると伝え聞いて居る。
「で、ケンちゃんよぉ~、ついに結婚かぁ~! もう独身時代にやり残した事は無いのかぁ? まあ、アケミさんとなら大丈夫だろうけどな……」
と魔王さんが俺と肩を組みつつ、笑いながら話題を変えて来た。 そして、小声になりつつ俺の耳元で、
「(注意しろよ? 結婚すると、数年で女は変わるからなぁ? 怖いぞーーー!)」
と警告して来たのであった。
まあ、前世の事を思い出して、思わず顔が引き攣ったのたが、よくよく考えると、アレは最初から仕組まれた物だったから、比較対象にはならないだろうな……と考え直すのであった。
女神様も推薦するアケミさんだし…… だ、大丈夫だよ? きっと。
俺がそう思いつつ、チラリとアケミさんの方を見ると、アケミさんはアケミさんで、奥方様と2人でコソコソとお話をしていた。
こ、怖いから!! 奥方様! 止めて? アケミさんをそっちに引き込まないでね? 怖いからーーー!
と心の中で叫ぶ俺だった。
そして、魔王さん達にせがまれ、俺が作った昼ご飯を一緒に食べてから城へと戻ったのであった。
後で城に戻ってアケミさんから話を聞くと、奥方様からは、『夫の操作術』を伝授されたそうな。
って、やっぱ怖い話じゃん!!
思わず「えっ!?」って小さく叫んでしまったし。
そうそう! 俺の部屋だけど、何とか原状復帰が終わってたのでホッとした。
「良かったぁ~ やっぱりこっちの方が落ち着くよ。 アケミさんはこれでも良い?」
「ええ、私もこんな感じの方が落ち着きますね。 必要があったり気分を変える際には、また二人で話し合って決めて行けば良いですよね?」
「そうだね。 宜しくお願いしますね? 奥様!」
俺がそう言うと、ボォッと音がしそうなくらい瞬間的にアケミさんの顔が耳まで真っ赤になって、
「ヒャッ!? お、おくしゃま――」
と盛大に照れていた。
一頻りデレデレになった後、
「こ、こちらこそ、宜しくお願い致します……あなた」
と反撃され、俺も赤面して言ったアケミさんと2人でモジモジしてしまうのであった。
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