第281話 告白

すみません、間違って違う所にアップしちゃってました。申し訳ありません。m(__)m

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ゲートを抜けるとそこは……秋だと云うのに一面のお花畑であった。

そう、俺がこの世界で初めて目覚めた泉の畔である。


「!!!」

と景色の美しさに絶句するアケミさん。


そうだよね。確かに驚くと云うか、見惚れると云うか。 兎に角無条件で綺麗な場所なんだよね。


暫く景色の美しさにポーッとしているアケミさんをソッとしておいてあげた。


数分経った頃、俺はアケミさんに声を掛けた。


「どう? 綺麗な所でしょ?」


ハッと我に返ったアケミさんが再始動し始める。


「え、ええ。 とても。 あれ? でも何で秋なのにこんなにも綺麗なお花畑があるんでしょうか? 一体ここは何処なんですか?」


「不思議だよね。 これから色々話す前に、この泉の水を飲んでごらん。」


俺がコップを取り出して、一杯掬ってアケミさんに差し出す。


「あっ! これは、あのケンジさんが何時も出してくれる不思議な美味しい水ですね! ああ、本当にいつ飲んでも美味しいです。

そうですか、あの水はここの泉の水だったんですね!?」


そして、俺達は、お花畑から移動して、椅子とテーブルを出し、ついでにフルーツフレーバーの紅茶を出して、飲みながら話始めた。


「アケミさん、まずは俺が今から話す事を聞いて欲しい。 アケミさんにはちゃんと全部話して置きたかったんだ。

まずこの場所だけど、ここは、城の裏山……つまり、魔絶の崖の上の中央部分なんだよ。

俺の称号的には、ここの主だそうだ。 まあ、それは置いておいて、この場所はね、俺がこの世界で初めて目覚めた場所なんだ。

ほら、あの辺り。 俺が目を覚ましたら、あの辺りに横たわって居たんだよ。 この身体で。」


俺の話を黙って聞いてくれているアケミさんだったが、凄く驚いた顔をしている。


「俺はね、こことは違う、別の世界で50歳まで生きてた。 中身はオジサンだよ。 そして向こうの世界の俺は、色々とあって食うに困り、お金も無くて、餓死したんだよ。

丁度、50歳の誕生日に。 狭い部屋の一室で。

そして次に目覚めたら、子供の身体になって、ここで目覚めたんだ。」


「えっ!」

とアケミさんが右手の甲で口を押さえながら、驚いた顔をしている。


「ビックリするよね? 俺も驚いたんだよ。 だから、俺は完全に死んで、ここが死後の世界だと思ったんだよ。 死んだらこう言う姿になるんだと思ったんだ。

だけど、ここには誰も居なくて、ズーッと1人だった。 余りにもキツい死に際だったからね、だからここで暫く1人で居たんだ。 心が少し癒えるまで。

幸い誰の物かは判らないけど、この巾着袋と呼んでるマジック・ポーチを身に付けてて、偶然この中に色々物が揃っている事を知って、ちょっとだけ使わせて貰って過ごしてたんだよ。

食べ物は、最初はね、ここに生えている桃とかリンゴとか葡萄とか色々な果物を食べてたんだよね。 そうしたら、あのテントの中にも食料庫あってさ、それも使わせて貰ってたの。

だから、ここはこの世界での俺の原点なんだよ。」


「……そ、そんな事が! つまり、ケンジさんは転生者だったのですね? ああ、だからケンジさんは子供でも知って居る様な、この世界の常識とかが欠けてたんですね?」


「うん、そうだね。 まるっきり何も知らない状態だったからね。 元の世界の両親も既に亡くなってて、こっちでは両親すら居ないから、ある意味孤児で間違い無いんだよ。

と、ここまでは理解してくれたね? で、問題はこの先なんだけどね……」


俺は、何故女性に対する恐怖心や、グイグイ来る女性が苦手なのか、その元凶となる元妻と長男の話をして行った。

話を聞きながら、涙を流すアケミさん。


「そ、そんな酷い事が……。 ゆ、許せません! 何ですかその女性は! ああ、でも考えてみたら、初対面の時、私……ってグイグイ行った感じになっちゃうんですね?

ああ……穴があったら入りたいぃ~。 で、でも、そんな私をよくケンジさんは受け入れてくれましたね? その話を聞くと、私ってかなり地雷を踏んでますよね?」

と泣いたり、怒ったり、驚いたりと、コロコロと表情を変えるアケミさんが聞いて来た。


そんなアケミさんの姿を見て、嬉しい様な、頼もしい様な……それでいて恥ずかしい様な、何とも表現し難い気持ちになる。

きっとアレだ! 精神的な味方が居るって感じと、そんな不甲斐ない自分を曝け出す事が恥ずかしい感じなのかも知れない。



「そう、それなんだよ。 不思議だったのは。 何故かアケミさんは今までとは違った別の何かで強く惹かれると云うか、嫌な気持ちにならなかったというか、不思議な感覚だったんだよ。

理由は推測の域でしかないんだけどね。」


「え!? 理由ですか? 理由……確かに初めてギルドでお逢いした時、同じ様な感覚が。 でも理由なんてあるんですか? ただケンジさんの事が好きだけで、他に理由?」


戸惑うアケミさんに俺は言葉を続けた。


「アケミさん、自分のステータスを見て知ってると思うんだけど、アケミさんってさ、女神エスターシャの加護が付いてるよね? 知ってるよね? 俺の事ってあんまり今まで言ってなかったと思うけど、俺にも同じ様に女神様の加護じゃないけど、寵愛ってのがあるんだよ。

それにね、俺が異世界からの転生者であるのと同じ様に、アケミさんも俺と同じ世界からの転生者なんだって。 俺は前世の記憶があるけど、アケミさんは前世の記憶が無いみたいだけどね。」


「えぇーーー!? わ、私がですかーーー!!」

余りの驚きに、大声で叫ぶアケミさん。


ふむ、やはり知らなかったのか?


「えっと、それはどっちに対して? 加護の件? それとも転生の件?」


「あ、ええ、勿論転生の件です。 そ、そうでしたか。 私も転生者だったんだ……。」


「ああ、あとね、多分ステータス上には表示されてないかも知れないけど、海神エンアクアの謝罪ってのも加護欄にあるみたいだね。

この『海神エンアクアの謝罪』はおそらくだけど、アケミさんのご両親の件じゃないかな?

で、話を戻すと、お互いに転生者という事で、もしかすると、前世で何か繋がりがあったのかも知れないし、単純に同郷の者ってだけかも知れないけど、お互いに感じる物があったんじゃないのかな?と思ってるんだ。」


俺の話になるほどと深く頷き、考え込んで居た。


俺は、冷めてしまった紅茶を入れ直し、深呼吸した。


そう、これからが山場なのだ……


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