第257話 アケミ、ダンジョンについて語る

「えー、では、ダンジョンについて説明させて頂きますね。」

とアケミさんが、キリリと説明し始めた。


ふむ、女教師風なのね?


「はい! 先生宜しくお願い致します!」

と俺がノルと嬉し気であった。


さて、アケミ先生の説明によると、現在までに確認されているダンジョンは12箇所もあるらしい。

イメルダ王国に2箇所、クーデリア王国に3箇所、マスティア王国に3箇所、旧アルデータ王国に2箇所、その他の場所に2箇所と云う事であった。


各国、ダンジョンの在る場所には、ダンジョン都市を作り、ダンジョンを管理しているらしい。

この管理を怠ると、ダンジョンから魔物が溢れ、スタンピードが起こるらしい。

なので、国と冒険者ギルドが連携して、積極的にダンジョンの魔物を間引きしたりしているらしい。

何でも伝説では、ダンジョンの最下層にはダンジョンコアと云う物があり、それを破壊すればダンジョンを殺す事が出来るらしい。

とは言え、ダンジョンの最下層まで行って、実際にコアを破壊したという話は現在までに報告が無いとの事。


「ふぅ~ん、なるほど、結構あるんだね。 未発見のダンジョンとかもあり得るのか。 何かダンジョンの在る場所って云うか、ダンジョンの発生し易い場所には共通する特徴があったりするものなの?」


そうすると、アケミ先生曰く、

「諸説在るけど、共通しているのは、魔素の多い所、魔素溜りと呼ばれる所、特に強い魔物が多く居る場所とかですかね?」

と言っていた。


「なるほど、魔素が多い所ねぇ。 ふむ…… 強い魔物が多いか…… ちょい待て! アケミ先生!! 俺の勘違いでなければ、その条件にビッタリの場所を、凄く身近に知って居る気がするのは俺だけ?」


俺が叫ぶと、食堂に居る全員の箸がピタッと止まった。(但しコナンさんを除く)

全員「エッ!?」って顔をしている。


「「「「「「「………」」」」」」」



「――在りますね。 身に覚えのある一帯が、身近に。」

と苦い顔をするアケミ先生。


「け、ケンジ様! もしあの森や崖にダンジョンが在って、誰も入らず放置していたとしたら? スタンピードって起こるんでしょうか?」

と青い顔をしているステファン君が聞いて来た。


「え? 俺に聞く? そうなの? アケミ先生。」


「あり得ますね。 実際、魔物が強いとされる大森林とかは各地にありますが、10年~50年に1回とかの割合でスタンピード、森からのスタンピードが発生しています。

一説では、そう言うスタンピードが起こる森の中には未発見のダンジョンがあるのではないか?という人も居ますね。」


「それって、ダンジョンの有無を事前に知って居れば防げるけど、知らなかったら被害大きいよねぇ? 実際の話、魔宮の森や魔絶の崖からのスタンピードって今までに報告あったりするの?」


俺が気になるところを聞いてみると、


「すみません、マーラックは海辺寄りだったので、そこまでは把握してませんでした。」

とアケミ先生が申し訳無さそうにしていた。


「いや、確かに遠く離れてるから、余り重要視してないもんな。 アケミ先生ありがとうございました。 ちょっとドワースの冒険者ギルドに行って情報収集してみるよ。」



 ◇◇◇◇



と云う事で、アケミ先生の授業と食事を終えた俺は、久々にドワースの冒険者ギルドへ向かった。

ギィーとドアを開けると、カウンターの顔ぶれが一新されていた。 見知った受付のお姉さんが全く居ない。

微妙に嫌な予感がして一瞬固まったのだが、


「いらっしゃいませ、冒険者のギルド ドワース支部へようこそ。 今日はどう言ったご用件でしょうか?」

と折り目正しい受付嬢のお姉さんが対応してくれた。


「久しぶりなので、顔ぶれが変わっちゃったみたいだけど、ここで登録した冒険者でケンジと言います。 ちょっと情報が欲しくて寄ったんだけど、良いかな?」

とギルドカードを提示しながら聞いてみた。



「ハッ!? (これはSランク……) そうですか、貴方が『あの』ケンジさんなのですね。 ええ、お話だけは存じております。

どのような情報が知りたいのでしょうか? もしかすると、内容によってはギルドマスターか副ギルドマスターじゃないと判らないかもですが。」


『あの』ってどの『あの』なんだよ? 気になるじゃねぇーかよ!!


「ああ、そうか、知りたいのは、過去の魔宮の森や魔絶の崖辺りからのスタンピードの有無についてなんだけど、サンダーさんかロジャーさんに聞いた方が良いかな?」


「なるほど、少々お待ち下さいね。」


受付嬢がパタパタと奥へ引っ込んで行き、暫くすると、戻って来て、「ギルドマスター室の方へお願い致します。」と案内されたのであった。



「おぉーー! ケンジ~! お前さぁ、ドワースに来ても、ギルド素通りしてたろ! ダメだってちゃんと顔出してくれないと!!」

と笑顔のサンダーさんからお小言を頂いたのだった。


「ハハハ、まあでもここのところ色々バタバタしてたから、ご勘弁ください。」


「聞いてるぞー、王都での事とか、マスティア王国の件とか。 あ、そうかもう今じゃあ国王様なんだよなぁ。 呼び捨てはヤバいか。」


とか言いながら、結局そのまま呼び捨てで変わらなかったのは嬉しかった。


早速本題であるスタンピードの有無を聞いてみたのだが、ここ50年は起こってないとの事だった。

それ以前となると、どこからともなく西側から魔物が押し寄せたという話はあったが、城壁と冒険者と領軍で防ぎ切ったたしいが、発祥源が何処だったのか判らないらしい。

ふむ、やはりもしかしないでも、一番怪しいのはうちの裏山(魔絶の崖)か庭(魔宮の森)っすか?


そして知りたい情報も聞けたので、お暇しようと挨拶して腰を上げかけた所でサンダーさんが叫びだした。


「あー、そうだ! 危ねぇ~! 聞いてくれって言われてたのを忘れてたよ。 ケンジん所って建国したんだよな? 冒険者ギルドの支部置かないかって話があるんだよ。

直ぐに返事しろとは言わんが、どうかね?」

と。


ああ、そうか! そうなるのか。 そうだよなぁ、国だもんなぁ。 じゃあ商業ギルドとかもかな?


「それって、ギルドマスターは何方になるんでしょうか? もしですが、そちら側から指定してやって来た人物と俺との反りが合わない場合とかってどうなるんですか?」


「基本、ギルドマスターってのは、本部で決めて送り込むか、現地でスカウトする感じなんだよな。 今回は新規となるから、本部から送られて来る可能性が高いな。」


「うーん、そうですかぁ。 それはちょっと難しいなぁ。 せめてロジャーさんがギルドマスターとして来るなら、まあ歓迎出来るんですけどね。

それに、うちに冒険者ギルドが出来るって事は、俺とか俺の周囲はそこに所属を移す感じになっちゃうけど良いんですか?」


すると、サンダーさんがもの凄く苦い顔をして、

「それなんだよなぁ~。 正直せっかくの実力者が余所の所属になっちゃうんだよな。 うーん……」

と唸っていた。


「うちとしては、建国して間もない事と、元々変な奴を入国させたくないって云うのもあってですね、ほら前に余所の支部でギルドマスターが関与していた事件とかあったでしょ?

ああ言う輩を内部に引き入れたく無いのですよ。 それに人族だけでなく、獣人もエルフもドワーフも居て、みんな仲良くやっているところに差別主義者みたいなのとか来たら邪魔でしかありませんからね。

そう言う意味で、良く知っているロジャーさんならOKだけど、他は人柄とか判らないですからね。 まあそこら辺を本部と話し合って下さい。

ああ、マギフォン使ってますか? 話の進展あったら、連絡して下さい。」


ギルドマスター室を出た後、買取コーナーに居たロジャーさんと話をしつつ、で纏まった量の魔物を買い取って貰ったのだった。


帰りがけ、受付カウンターの前を通り過ぎようとしたら、先程の受付嬢のお姉さんから呼び止められ、


「どうでした? 何か有益な情報ありましたでしょうか? 私もあの後少し気になったので、資料室で調べてみたのですが、関連あるかは不明ですが、旧アルデータ王国の魔宮の森に近い村へ魔物の大群が来たと云う報告書がありました。 まあ40年以上前の物でしたけど。」


「ほう! そうなの? わぁ、態々調べてくれたんですね。 ありがとうございます。 なるほど、そうなのか。 魔物の種類とかランクってどうだったか判ったりします?」


「えっと確か、オークやその上位種、後はオーガとか……ああ、あとはキラー・アントとか、デス・マンティスとか……あとは……ミノタウロスも混じってたかな。」


「そうか。 ふむ、じゃあ、C~Aランクぐらいって感じかな?」


「そうですね。 でもその獣人の村は、救援部隊が間に合わず、ほぼ全滅だったらしいですけどね。」

と悲しそうな顔をしていた。

なるほどな、危険地帯に獣人達を追いやって、救援部隊とかどうせ出さなかったんだろうな。 全く胸くその悪い話だな。


再度受付嬢のお姉さんにお礼を言ってチップを渡し、ギルドを出たのであった。

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