第248話 我が名を聞け!
ん? アラームが鳴っている? 違うな、虫の知らせなのか?
ハッと目覚めると、別荘のベッドの中であった。
飛び起きて、慌ててフル装備に着替えると、全員を起こして回った。
気配察知と魔力感知を広げると、敷地の塀を取り巻く様に凄い数の騎士や兵士の反応がある。
なるほどな。 これが答えか。
ロビーに降りた頃、屋敷のアラームが鳴り響く。
ビーー! ビーー! ビーー! ビーー!
初めてこのアラームを聞いたが、結構それっぽい感じが出てるね。
「主君! こ、この音は?」
と不安気に周囲を見回すコルトガさん。
「ああ、みんな安心して。これこの屋敷の周りの塀と連動した警報システムだから。 五月蠅いからキャンセルするね。」
「えっと、まずは皆さん落ち着こうか。 状況を説明すると、現在この別荘の敷地の周りにはザックリ2000~3000人ぐらいの騎士や兵士に囲まれているみたいだね。
あのアラームは何か侵入しようとしたり、攻撃をかけられた際に鳴るようだから、多分魔法か何かを打ち込まれたんじゃないのかな?
まあ、シールドが自動で起動しているから、安全なんだけどね。」
「主君! サスケ以下シャドーズ55名、ただ今参上仕った。 遅参ご容赦を!」
と続々とゲートからサスケさん、5人衆、それにシャドーズが例の装備でロビーに整列して跪いている。
凄いレスポンスである。
「おー! 凄い早さだね! ほぼアラームと同時刻じゃん。 流石だよ!」
こう言うのをスクランブル出撃って言うのかは判らないけど、よくこれだけの短時間でフル装備に着替えて出陣出来た物だと感心してしまう。
俺、コルトガさん、サスケさん、コナンさん、5人衆の9名は、取りあえず屋敷から庭に移動して、外のドンパチを見ながらテーブルと椅子を出して、目覚めのコーヒーを飲んでいた。
「おー、派手にやっとりますな。」
「派手なんだな。 花火なんだな。」
とコルトガさんとコナンさんがシールドで弾けるファイヤーボールやファイヤーランスを見て目をキラキラさせていた。
うむ、確かにとても綺麗だな。
「たっまやーー!」
と思わず俺が掛け声を掛けてしまう。
「なんですかな? それは?」
と不思議そうにするコルトガさん。
「あ、ごめん、気にしないで。 で、だよ。 どうするんだよ、これ! 何やっちゃってくれるかなぁ~、まったく……どう落とし前付けるの?
俺はこう言うのは苦手で知らないんだけどさ、参考までにこれってこの世界の常識だと、どうするのが正解なの?」
と聞いてみた。
「殲滅。 向かって来た者全て皆殺しで王族根絶やしがセロリ? セオリーだな。 酷いと全国民が引責で奴隷墜ちだな。」
とマジな顔のコナンさん。
「サスケさん、ちなみに、これって王様主導の攻撃なの?」
「いや、配下の者の話では、またもや大臣の見切り発車でござるな。
どうやら、あの大臣は王家を蔑ろにして、実権を握ろうとしているでござる。」
「じゃあ、騎士や兵士達は巻き添いなの?」
「いや、第ニ騎士団以外の各騎士団の団長~隊長クラスは大臣と同じ穴の狢でござる。」
「ふむーー、流石にこれを全部殲滅しちゃうと問題でしょ。 遺恨を残すよね? でも話の流れからすると、半端に終わらせると、同じく増長する輩が出て来ると?」
俺の問いにコナンさんもコルトガさんもサスケさんも頷いていた。
「ハァ~……何だよこれ。 ため息しか出ないな。 ――――判ったよ。」
「シャドーズ全員、庭に整列。」
「ハッ! 直ちに。」
「良いかな? 全員、このままここで待機。 俺がこの周囲の有象無象を戦闘不能にするから、合図したら全員確保してくれる?」
「え? 主君自らでござるか? それでしたら、拙者達に――」
「いや、ここは俺が舐められている訳だから、俺が1人で出た方が良いだろ?」
俺はコントロールパネルを操作し、遮音していたシールド外の音が聞こえる様にした。
すると、途端に響き渡る炸裂音や怒号や悲鳴や号令。
思わず、不謹慎ながら、笑ってしまった。
「休み無く撃てー! 効いてるぞ! 効いてるぞ!」
「ドッコーン」
「わぁーー!だ、誰か火を消してくれーー!」
「あ、熱いーー! 水だー!水をくれーー!」
「わぁー、岩の破片がーー!」
「行けーー! 敵の反撃に怯むな!」
とまあ、何処のコントですか? と突っ込みたくなる様な状態であった。
そもそもだが、俺達はまだ反撃すらしていない。 火が付いた奴は味方のファイヤーボールが弾き飛ばされただけだし。
ハッハッハ。面白過ぎるな。
ここで一発ワーグナー掛けたいところではあるが、定番のアレを行くか。
気配遮断を掛けた俺は、俺は別荘全域を覆うシールドの上に移動して、王都全域に大規模なサウンド・ウェーブを発動し、定番となった角笛を数回鳴り響かせた。
ブォーーーーーーーーーー♪
ブォーーーーーーーーーー♪
ブォーーーーーーーーーー♪
そして風魔法の拡声を使い周囲を取り巻く兵達に宣告を開始した。
「俺の名は、ケンジ・スギタ。 エーリュシオンを束ねる者。 愚かにも我が敷地を襲撃する盗賊諸君よ、容赦はしない。 これより死より恐ろしい生き地獄を味合わせてやろう。 俺の名前が引導代わりだ。 命の惜しい者は10秒以内に逃げ出す事をお薦めする。 まあ加減はするが、死ぬなよ? 耐えろよ? 9,8,7,6,5,4,3,2,1……サンダーシャワー」
威力を最小限に絞って、敵の反応のある全地域を対象にサンダーシャワーを発動した。
ゴロロロロ、ピカッ ババババババババッシーーーーン
グァーーーぎゃーーーー アバババ
周囲を目も眩む様な無数の稲光が包み込み、目が開けられない程の光りに包まれた。
一瞬遅れてツーンとオゾンの匂いと何かが焼け焦げた様な匂い、生臭い匂いが漂って来る。
そして少しの間、小さい呻き声が聞こえていたが、やがてそれも消えたのだった。俺は合図を送り、庭へと降り立った。
「主君!! 痺れましたぞ!!」
「ケンジさん、カッコ良い!」
「クゥーーー! 堪らんでござる。 者共作業に掛かるでござる。 あと応援を呼ぶでござるよ!」
「ハッ!」
痛い……みんなのキラキラした視線が痛い。
唯一無言のコナンさんの方を見ると、ニッと笑って親指を立てていた。
ウグー。 これが今回最大のダメージであった。
ガックリ項垂れつつ、サスケさんに最後の詰めをお願いした。
「サスケさん、大臣とその取り巻きの確保お願い出来るかな?」
「ハッ!お任せを。」
ハァ……穴があったら入りてぇー。
急に名乗ってしまった事と調子に乗って言ってしまった台詞を思い出し、羞恥に身悶えしてしまう。
部屋に逃げ帰ろうかと思ったのだが、3000人近い捕虜を収容する場所が無いので、取り急ぎ庭に地下室を3つ作り、空間拡張と空気清浄のみを付けておいた。
一応計算では、1部屋に1200名ぐらいは入る筈である。
収容部屋を作り終わったら、今度こそ後を任せて部屋へと逃げ帰ったのであった。
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