第234話 バレてーら?

一夜明け、朝から王城へ行く為の準備をバタバタしている。

2名同行者の許可があったが、誰を連れて行くべきかで話し合ったのだが、コルトガさんは絶対に同行すると言い張り、コナンさんは王宮ご飯食べたいと言い、サチちゃんは「サチもお城でキラキラちたい。」と言う。

俺もキラキラしてるサチちゃんを見てみたいが、サチちゃんや、一先ずは落ち着こうか。

まあコルトガさんは決定として、どうするかな? コナンさんかサスケさん、どっちにするか?

ハッキリ言うと、コナンさんはここぞで頼りになるのだが、人と対峙して話し合いをする場では全く役に立たなさそうだしなぁ。


「コナンさん、食べ物はほぼ出ないと思った方が良いよ? どう言う状況になるか判らないけど。

一応、マギフォンをグループモードで繋げておくから、中での会話の内容とかはここで聞けるし、危険回避の必要がある場合には、ここから随時指示してね。

あと、最悪の場合、フードモールもここも、全てを放棄して脱出するから宜しくね。

という事で、サスケさんにお願いするかな?」

とサスケさんをみると、


「主君、拙者は影故、表には出無い方が良いかと。 またここはアケミ殿を連れて行った方が場が柔らかくなるのではござらんだろうか?」

と提案してきた。


「なるほど。 アケミさん、最悪の場合、この国に二度と来られなくなる可能性もあるけど、良いかな?」


「ええ、まあそうならない事を期待しますが、何時でも覚悟は出来てますので、大丈夫です。」


「サチちゃん、キラキラしているサチちゃんを俺も見たいけど、ゴメンね。リックと仲良くお留守番しててね? ちゃんと他のスタッフが居るから安心してね。」

というと、賢いサチちゃんはちゃんと納得してくれたのだった。


マダラとB0にも最悪脱出する可能性がある事を伝え、通常型の馬車で屋敷を出発したのだった。




「本当にこの堀と言い、忍者返しの石垣と言い、良く再現しているよなぁ。

ほほー、ここを渡る感じなんだね。」


やはり間近でみる日本風のお城は存在感が半端無い。


御者席のサスケさんが王宮からの書簡を見せると、門番の横で待機していたらしい騎士が馬に乗って俺達の乗った馬車を先導してくれるらしい。

ふむ、これは結構好待遇なんじゃないだろうか? それとも逃がさない為?


外堀を渡り長い迷路の様な経路を通って内堀へと到達した。


「ほほぉー、これは凄い物ですな。 態と迷路風にして外部からの侵略者を遠回りさせる訳ですな? 平時には面倒なだけであるが、戦時には対応する時間稼ぎになる訳じゃな。」

コルトガさんが感心している。


「そうだね。城下町も城の付近では所謂貴族街というか騎士街の作りを同じ様な風景の入り組んだ道にして迷わせ、なかなか城に辿り着けなくする目的の街もあるからね。」

俺が日本の風景を思い出しつつ教えると、更にホホォーと感心していた。


まあでも、空から来られると、全く意味が無いんだけどね。 あくまで地面から敵が来る場合のみに通用する方法である。

更に言うと、時間稼ぎを有効に使うなら、味方のみに周知させている秘密のショートカット通路が無いとダメだな。


そう言う観点でうちの拠点を考えると、完全にザルだよなぁ。なんの防備もしてないからね。城壁とシールド以外は。

まあ、あの城壁とシールドを抜くのはこの国最強だったアレが100人居ても無理だろうけどな。


俺がフッと思わず笑うと、緊張した表情のアケミさんと目が合った。


「あれ? アケミさん少し顔が強張っているけど、大丈夫?」


「え、ええ。 何か、昔一度は見てみたいと思ってたこの国のお城の中に入ったと思うと少し……。」


「そっか、立派なお城だもんね。 マインド・ヒール掛けてあげるよ。」

と言いながら、アケミさんと俺にマインド・ヒールを掛けた。


「ああ、何か楽になりました。フフフ、本当にケンジさんって凄いですよね。 何でも直しちゃうし。」

と何時ものアケミさんに戻っていた。



馬車がロータリーで停止し、日本風の城の内部へと案内された。

おお、内部は全然普通なんだな。 もっと大阪城的な感じを連想していたよ。


俺とコルトガさん、アケミさんは応接室というか待合室的な所へと案内された。

ソファーに座って周囲の気配を探ると、天井に3人、左右の壁に2人ずつ、合計7人が潜んで居る事がダダ漏れであった。


俺が左右の壁と天井をチラッと見ると、それを見たコルトガさんが、ニヤリと悪い笑みを漏らす。


「流石は主君。 しかし、我らも舐められた物ですな、こんな稚拙な気配を漏らす輩7名の監視を付けるとは。」

と声高らかに謳っている。


おいおい。


俺は、「あー、天井と左右の壁の7名の方、気にしないで下さいね。お勤めご苦労様です。」とフォローを入れて置いた。

天井や壁の奥から何か焦った様な気配が漏れていたが、ドンマイである。


「しかし、アレだね、もっと天守閣とかあるから、内部は違うのを連想していたんだけど、割と普通だったね。

まあ、ガチで作っちゃうと逆に生活様式が違うから不便か。」

と俺が呟く。


フフフ、しかし俺の巾着袋にはガチバージョンの日本風の城が幾つも種類入ってるんだよねぇ。

一回出して見たけど、確かに凄いけど、暮らすのにはキツいから止めたんだよね。

それに城下町というか街の建物とのマッチングを考えると、和洋折衷は止めた方が良い感じだったからねぇ。



等と色々頭の中で考えていると、お呼びが掛かった。 いよいよここに呼ばれた理由が判るのである。




謁見の間と言うんだろうか? 広い部屋の真ん中には大きなテーブルと椅子が並んでいる。

案内の人に小声で聞くと、謁見の間ではなく、最上級の会議に使われる部屋なんだそうで。


俺が指定された椅子に座ると、コルトガさんとアケミさんは俺の椅子の後ろに背後を守る様に立っていた。

「え? 2人は座らないの?」

俺が思わず聞くと、

「ええ、主君、我らはここで。」

と小声で伝えて来た……ふむ、そう言う物なのか。


座って待って居ると、数分で奥の扉が開き、部屋にゾロゾロと人が入って来た。

慌てて、席を立ち、頭を下げておく。


先頭に雰囲気を漂わせる騎士が2名、その後ろには立派な身なりの引き締まった身体の40代後半の男性。身なりからしてこの人が王様っぽいな。

そしてその後ろには艶やかな黒髪の綺麗な20代後半?意外に30代前半?の女性……この人が妃?と、20歳ぐらいの男性1名……王子か?、更に18歳前後の黒髪の可愛い童顔系の美人が1名、更に若く16歳ぐらいの黒髪の女の子1名、高級そうな衣服を身に纏った40代後半のチョイ太っちょの男性と、昨日書簡を持って来たダイジローさんが入って来たのだった。


えらく大勢来たな。 近衛騎士?騎士団長クラス2名に、王様と長男、長女、次女、奥方、大臣、執事長と言った人選かな?


全員が入室を終えると、頭を上げた。


「お待たせしたな。 頭を上げよ……あ、もう上げておるか。 余がこの国の王である、ハリマ・フォン・トクダ・イメルダである。」

え!? ハリマで王だと!? 思わずブフォッっと噴き出しそうになるのを腿を抓って必死で耐える俺。


俺は、目を合わさない様にやや下に視線を外し、軽く会釈しながら、


「お初にお目に掛かります。 お呼びにより参上した、スギタ商会のケンジと申します。 こちらは、腹心のコルトガ、そしてアケミです。

初めてこの国の天守閣の中を拝見して感動しておりました。 なかなか素晴らしい外観ですね。」

と俺が言うと、大臣と思わしき人物が、


「お初にお目に掛かる、こちらが、王妃のサヨ様、第一王子のシンノスケ殿下、第一王女のタエ様、第二王女のチエ様であらされる。

そして、ワシはこの国の大臣の任を賜っておる、ミツヒデ・フォン・アケチと申す。 以後お見知り置きを。」

と俺を凄い目で睨みながら紹介して行った。


何でそんなに俺を睨む? まるで親の敵に出会ったかの様にメッチャ睨んで来るんだが?


「某は、この国の第一騎士団を率いる将軍のコジロー・フォン・ササキである。」

「某は、近衛騎士団を率いる近衛騎士団長のハヤテ・フォン・ジュウモンジである。」


だ、ダメだーーー。名前が面白過ぎるーーー。 腿を抓りつつ、必死で自分自身にマインド・ヒールを連発する俺。

何と言う巧妙な罠だ。 ネタ的に日本から来た俺以外には発動しない罠である。 ヤバいな。


俺は何とか必死で笑いを堪え切った。




椅子に全員が腰掛け、コルトガさんとアケミさんも座る様にと言われ、俺の両隣の椅子へ座った。


「改めて礼を言わせて頂こう、この度は、我が王都の発展に寄与して頂き感謝する。更に言うと王族の末端を担う筈の者が何やら其方達に迷惑を掛けた様で申し訳ない。

まあ、その者達は消えたがのぉ。」

と意味深な目を俺に向けるハリマ王。


「そう言えば、何か街で噂をお聞きしましたが、具体的な話、どうなったのでしょうか?」

と俺が興味津々と言った感じで乗ってみた。


「フッ、何を白々しい、やったのは其方達であろ?」

と横から入って来る大臣。 え? ブラフか? それとも確証があるのか?


「ハテ? 何の事でしょうか?」


「聞けば、其方達の屋敷も、其方の作ったフードモールとやらも、ある朝突然に現れたと聞いておるぞ!?

同じ様な不思議な事がそうそう出来る者が居る訳が無い。

其方達がやったに違いないのじゃ!」


えらく、大臣さんはお怒りモードである。

しかし、何処にも証拠や繋がる物は残して無いつもりだったのだが、そうか、ある日突然建て換わった建物と、突然更地になって建てられた女神像の事か。

確かに言われてみれば、共通点が有り過ぎるな。 これは盲点だった。


でも、それは判ったけど、余りにもこの大臣と他の人達との温度差が激しすぎる気がするな……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る