第88話 変なのを発見した

沿岸部の都市マーラックへの直線距離は約500kmであるが、メインの街道は王都へと繋がっている為、メインの街道を行くと『く』の字状に回り道となってしまう。

しかし、幸いメインの街道以外の道も存在するので、その道を通りつつ、最短コースでルートを選択して進む。

王都に繋がるメインの街道は、交通量もそれなりに多く、道も整備されているし、幅も広い。

対して、俺達が選択したマーラックへのルートは交通量も少なく、ほぼ通行人も馬車も見かけない代わりに、道は荒れている。

しかし、マダラ達ハイ・ホースが曳くこの馬車に取っては、邪魔な他の馬車が居ないのは利点となり、悪路でさえ関係無い。


俺達の乗る馬車は、驚く程のスピードで田舎道を疾走して行く。


丁度昼頃に休憩をする頃には、既に150km程を走破していた。

メイン街道ではセーブして走っていたマダラ達は、直通コースに入って、交通量が減ったと同時に速度を上げたお陰である。


「うん、このアバウトな地図が正しければ、おそらくこの辺りか。

とすると、かなり近いんじゃないか? マーラックは。」

と顔がニヤけるケンジ。


従魔達に囲まれて食事を終えると、また出発だ。


マーラックへのルート上には超えなければならない山岳地帯が存在する。

その為、この道を選ぶ人はほぼ居ないらしい。

出発して1時間もすると、徐々に上り勾配となり、木々が周りに生い茂って来る。

いよいよ山岳部に突入である。


それまでは、真夏の日差しがキツく、気温も高かったのだが、木々が直射日光を遮る事と高度が高くなった事で、気温が徐々に下がってきた。


おお、ここら辺だと、雰囲気は真夏の避暑地って感じで良いな。

等と馬車の御者席に座って、風景をノンビリ楽しんで居たら、遙か前方に魔物?の気配を察知した。

しかも感知した魔力だとかなり強力である。

だが、何か普通の魔物とは若干毛色が違うというか……。



「マダラ、B0、この先にかなり強そうな魔物だか何だか判らんが反応がある。

近くまでスピードを落として。

あと、戦闘になったら、巻き込まれない様にな!」


<<了解ーー!>>


すると、

<主、俺戦う?>

とピョン吉が聞いて来た。


<ぼく、いつでも行けるよー!>

とコロ。


ジジは

<……… zzzzzzz ………>

って、寝てるんかい!



<まあ、ちょっと気になるから、まずは俺が様子を見てからだな。>


<<わかった>>



馬車はスピードを落とし、反応のある場所から30m離れた道沿いに停車した。

俺は取りあえず、反応のある林の中方へ確認しに行く事にした。


気配遮断を使って、音を立てずに木々の間を移動して行く。

かなり気配の元に近付いているのだが、まだ姿が見えない。


あれれ? 10m先に居る筈なんだがなぁ。


も、もしかして、姿を消せるタイプの魔物!?


俺はハッとして、全方位をくまなく確認し、下手に回り込まれ無い様に、更に警戒を強めた。

自然と身体中に吹き出る冷や汗。

感じる強さというか魔力だけで言うと、ブラッディ・デス・ベアの比では無い。

心臓の鼓動の音が聞こえるのでは無いかという程にドコドコと鳴っている。


ジリジリと近付き、木の影を利用して、5m近くまでやって来たが、相手は動く気配すら感じ無い。

しかも、ソッと木の根元付近に身を屈めて確認するが、やはり5mぐらい先には姿が無い。


どう言う事だろうか? やはり透明化が出来るとか、光学迷彩が出来る奴なんだろうか?

身体強化と身体加速も発動し、何時でも瞬時に対応出来る様にしているが、目視出来ない相手は初めてで、どう戦うのが正解なのかが判らない。


どうする俺?


暫く考えた末、馬車に戻るにしても、背中を見せるのは得策ではないと判断し、更に近付いて確認する事を決意した。

俺はユックリ立ち上がり、ソッと木の陰から出て、更に2m進み、倒木の傍の地面に妙な物を発見してしまった。






「え? 何これ? こ、コロボックル?」


倒れた木のから滴る樹液に絡まっている、小人っぽい人型の生き物がジタバタしていた。


そのコロボックル(仮称)は、俺を見ると、

「!!!」

怯えて、益々ジタバタして、更に樹液に絡まり、アワアワとしている。


その姿がちょっと可愛くて、思わす「ププッ……」と噴き出してしまった。


サイズで言うと、掌サイズの小人である。

一応、ちゃんと洋服を着ていて、靴も履いている。

髪の毛の色は茶色で、小さい5歳児を掌サイズにした様な愛らしさがある。


しかし、そのコロボックル(仮称)は、青い顔をしてガクガクと震えながら、俺の顔と俺の手元を交互に見ている。

ハッとして、慌てて手に持った剣を鞘に仕舞い、


「ああ、驚かせてごめんよ、君を傷付ける気はないから、安心してくれ。」

というと、少しホッとした様な表情を見せた。


一応取りあえず、念のために詳細解析Ver.2.01大先生に聞いてみると、


『詳細解析Ver.2.01』

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名前:

年齢:1歳

誕生日:2月14日

種族:ノーム

性別:

好意度:0%

忠誠度:0%

敵意:0%

婚歴:なし

身長:15.2cm

体重:0.1kg


称号:

レベル:1


【基本】

HP:6583

MP:9238

筋力:23

頭脳:547

器用:268

敏捷:35

幸運:328


【精霊魔法】

土:Lv20


【加護】

土精霊王の加護


【状態】

精神:絶賛絶望中

肉体:トラップにより拘束状態

健康:体力減少


【経歴】

サリウス山に生まれ出たばかりのノーム(土精霊)である。

独りぼっちが寂しくて、探検していたのだが、歩き疲れたので、少し休憩で横になっていたら、寝落ちしてしまった。

そして、寝てる間に垂れて来た樹液トラップに引っかかり、目覚めると動けなくなっていた。

それから3日間程藻掻き、更に深みに嵌まった状態。

正にピーーンチ!


【展望】

生まれたての初級精霊のノームの為、実体が消せないが、中級精霊となると姿を消したりする事が可能となる。

生まれたてのため、世界共通語は大体理解出来るが、まだ喋れない。

さあ、絶望から救って、お友達になってあげましょう!

ノームは土精霊なので、契約出来ると、鍛冶や建築や農耕では強い味方となりますよ。

更に今回は初回ボーナスとして、『土精霊王の加護』もゲット出来るかも?

さあ、助けるのは今! ドーーンと行っちゃいましょう!

ああ、そうそう、精霊は綺麗な魔力を好むので、健二さんの魔力はご馳走に見える筈ですよぉー。


 [>>続きはこちら>>]


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と出た。

……もう突っ込まないからね?


しかし、文章は兎も角、土の精霊なんだね。コロボックルとは違うノームという種らしい。


「へーー! 君ノームって言うか土精霊なんだね。

そうか、3日間もこの状態だったのか、それは大変だったね。

今助けてやるからね。」

しかし、このGホイホイに捕まった様な状態から、どうやって助けようか。

樹液を汚れとして考えれば、クリーンで行ける?


という事で、試しに『クリーン』を発動してみた。

すると、樹液のトラップが消えて、ノーム君が拘束状態から解放されたのだった。


「おー、樹液とかもクリーンで行けるんだな。」


「!!!」

やっと解放されたノーム君が立ち上がり、ジャンプしながら、喜んでいる。

ハハハ、可愛いな。


そして、ノーム君はトテトテと歩いて来て、俺の足にヒシッとしがみついて来た。

うん、何か懐かれた感じだな。


「なあ、君も独りぼっちだと寂しいだろ? 俺達と一緒に行くか?」

と声を掛けると、嬉しそうにウンウンと頷いている。


「じゃあ、そうだなぁ、名前を付けようか。コロボックルかと思ったから、コロと言いたいところだけど、コロが居るからダメだし……。

折角だから、良い名前か。ウーーンどうしよう。サリウス山生まれだから、サリスとかどうだ?」

と打診してみると、嬉しそうに頷いていた。


「じゃあ、君は今日からサリスだな。宜しく、サリス。」

と言って、掌にのせて持ち上げ、人差し指を出すとじゃれて抱きついて来た。

念のため、ステータスを確認すると、


『ステータス表示』

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名前:ケンジ(杉田健二)

年齢:19歳(54歳)

種族:ハイパーヒューマン

性別:雄

称号:女神の愛し子

   元始の泉の主

   元始の森の主

   解放到達者

   辺境の王

   魔法の探求者

   重力を制する者

   国を興す者

   空を征する者

   エーリュシオンの王

   忠誠を集める者

   崇拝を集める者

   精霊の友


職業:冒険者・探求者・開拓者・魔道士・錬金士・賢者・救済者・王

レベル:146(解放済)


【基本】

HP:5699

MP:7338

筋力:1682

頭脳:1251

器用:1311

敏捷:1306

幸運:701


【武術】

短剣術:Lv5

剣術:Lv12

棒術:Lv2

体術:Lv3

斧術:Lv3

投擲:Lv10


【魔法】

火:Lv10(解放済)

水:Lv11(解放済)

土:Lv15(解放済)

風:Lv11(解放済)

光:Lv10(解放済)

闇:Lv10(解放済)

聖:Lv10(解放済)

空:Lv10(解放済)

無:Lv14(解放済)


【魔法Ex】

氷:Lv10

雷:Lv9

重:Lv8

飛:Lv6

転:Lv3

隷:Lv3


【スキル】

状態異常無効

精神異常無効

MP自動回復増(大)

HP自動回復増(大)

早熟

言語理解

習得補助

調理 Lv9

万物創造

気配察知

魔力感知

魔力操作

気配遮断

身体強化

身体加速

土木作業

農耕作業

解体

素材採取

テイミング

調教

従魔強化

王者の威厳

従魔意思疎通(大)

錬金

鍛冶

射撃必中

大地の息吹

詳細解析 Ver.2.01

虫の知らせ(大)


【加護】

女神エスターシャの寵愛

異世界の創造神の加護(大)

土精霊王の加護


【従魔】

ピョン吉(キング・キラー・ホーンラビット)

ジジ(ハイパー・シャドー・キャット)

A0(キラー・ホーンラビット)

A1(キラー・ホーンラビット)

A2(キラー・ホーンラビット)

A3(キラー・ホーンラビット)

A4(キラー・ホーンラビット)

A5(キラー・ホーンラビット)

A6(キラー・ホーンラビット)

A7(キラー・ホーンラビット)

A8(キラー・ホーンラビット)

A9(キラー・ホーンラビット)

コロ(シルバー・フェンリル 幼体)

マダラ(ハイ・ホース)

マロン(ハイ・ホース)

B0(ハイ・ホース)

B1(ハイ・ホース)

B2(ハイ・ホース)

B3(ハイ・ホース)

B4(ハイ・ホース)

B5(ハイ・ホース)

B6(ハイ・ホース)

B7(ハイ・ホース)

B8(ハイ・ホース)

B9(ハイ・ホース)

C0(ハイ・ホース)

C1(ハイ・ホース)

C2(ハイ・ホース)


【契約精霊】

サリス(ノーム)


***********************************************************************


となっていた。

どうやら無事に契約出来たらしい。

そして、初回ボーナスもゲット出来たらしい。

そのお陰かは不明だが、土魔法のLvが一気に5つも上がっていた。

こんな事でポンポン上がってしまって良いのだろうか? とも思ったが、ありがたく利用させて貰う事にしたのだった。



馬車に戻り、従魔達にサリスを紹介すると、みんなも歓迎してくれた様子でホッと一安心。


1名旅の仲間が増えた馬車は再び出発するのであった。

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