第26話 お叱りと顛末 (改)

当時居た水色のツインテールは、店長さんになってた。

そして、ツインテールからポニーテールにグレードアップし、美人なお姉さんとなっていた。


「3年の月日は、凄いなぁ。あのちょっとポアっとした感じの女の子が、こんな美人さんにグレードアップするとは。

そして、3年の月日は、残酷だなぁ。あの頭皮最前線がこうまで撤退するとは。」

と店長のお姉さんとガバスさんの頭皮を見比べつつ、漏らすと、


「ケンジ、おめぇ、3年見ない間に言う様になったじゃねぇか。それに俺のは戦略的撤退だ!」

とガバスさんが涙を零しながら笑っている。


「ハハハ、いや、マジな話、人と話すのは3年ぶりでしてね。結構緊張はしているんですよ?」


すると、ポニテのお姉さんが、涙を溜めながら、頭を下げて来た。


「ん??」

と不思議に思っていると、何だか、自分が伝言を伝えるのが遅くなってしまって、その所為で行方知れずのままとなり、もの凄く心に痼りが残って居たらしい。


「ああ、そんな事ですか。いえいえ、それは関係無いですよ?

だって、俺が逃げると決めれば、当時でさえ、追いつける人は多分この町には居なかったでしょうから。

だから、1時間早くても結果は同じですよ。気にする事は無いです。

俺は俺で、楽しく楽に生きてましたからね。」

と手をヒラヒラさせて言うと、


「えーーー!? そうなんですか!? それはちょっと悔しいかも。

私なんか、3年間引き摺ってたんですからね?」

とホッペを膨らませて居た。


「でよ、俺なんか、サンダーと跡を追いかけたんだけどよ。

全然追いつかなかったんだが、どうやったんだ?」

とガバスさんがお怒りモードで聞いて来た。


「ああ、それですか。それは申し訳無い事をしてしまいました。すみません。

いや、まさか良い意味で追いかけてくれる人が居るとまでは思ってもみなかったので。

ほら、ギルドから衛兵とかに話し行くと、何かヤバそうじゃないですか。

追っかけて来るなら、確実に悪い意味で捕らえられるって思ってましたから、だから街道を通ってないんですよ。

それに、あの時全体に大きな声で個人情報をバラ撒かれてしまって、もう心が耐えられなかったんですよ。

特にあの受付嬢のヒスった声がね……、俺を裏切り、精神的にも肉体的にも苦痛を負わせた女性とダブってしまいましてね。

いやぁ、若さ故ってやつですかね。

今はもう大分心も癒えて来たし、それに、状態異常無効や精神異常無効のスキルが取れたのが大きいですかねぇ。」

と答えると、ポカンとした後、かなり驚いていた。


そして、

「そうか、道理であの時全く追いつかなかった訳だ。はぁ~~……。」

とガックリ肩を落としていた。


「で、お前、今は何処に居るんだ? マッタリ過ごすって言うからには、家を作ったのか?」

と聞いて来た。


「ええ、半径200m程ですが、開拓して、家とか鍛冶小屋とか錬金小屋とか色々作って、そうそう家庭菜園も作って、従魔に囲まれて暮らしてますよ。」

というと、


「おう、あのピョン吉か! 囲まれてって事はまた増えたのか?」


「はい、何かいつの間にかピョン吉が配下を10匹作っちゃってね、今じゃピョン吉はキングっすよ。ハハハ。

あそうそう、黒い子猫も見つけてね、そいつも真っ白な中に1匹だけ黒いのが混じってて、なかなか良い感じですね。」

というと、笑ってた。


「そ、そうか。開拓したのか。ここから遠いのか?」


「うーん、俺だとそれ程じゃないんですが、一般だとどうだろう?

順調なら3日ぐらいですかね。ただ、魔物出ますよ。

ピョン吉達を連れて居れば、問題ないですがね。最近はあまりあそこら辺は間引きしてないからなぁ。」

というと、少し残念そうな顔をしていた。


「まあ、ドワースの領土の外の筈ですし、街道からも遠く離れてますから、結構大変かも。

まあ、ガバスさんなら良いですが、誰でも迎え入れる気はないので。」

というと、


「お、俺は遊びに行っても良いのか?」

と嬉しそうに聞いて来た。


「ええ、居座られるとキツいですが、2,3日程度なら。

まあ、部屋も沢山ありますし、風呂もデカいですよ。

飯もあれからかなりバージョンアップしたんでね。」

というと嬉し気な顔で涎が少し口元に。


「えーー!、会長、それはズルいですよ。私も連れて行って下さいよーー!

美味しいご飯に大きなお風呂なんて、パラダイスじゃないですか!」

と水色ポニテのお姉さんが口を尖らせて抗議する。


「え? 敷地の周囲は割と魔物の巣窟ですよ?

怖いですよ?」

と脅しに入るのだが、


「えー?だって、ケンジさんと会長に着いて行けば大丈夫なんでしょ?」

と反論。


うーむ、これは手強い。


「まぁ、そうなんですが、正直言うと、俺、女性が怖いんですよ。

ちょっと過去に酷い目にあって、女性不信というか、ほら、前回ここを逃げ出したのも女性絡みですからね。

だから、本当にごめんなさい。

まあ、その代わり、美味しいジュースと食べ物をここで食べましょう。」


と言って、冷たく冷やした、ピーチジュースを3つと、焼きたてのピザを3種類取り出した。


「「おぉーーー!!」」


「さ、熱いから気を付けて下さいね。」

と言って勧める。


2人はピザのピースを手に取り、初めて見るピザを恐る恐る口に運ぶ。


「「あっつぅーーー」」

と絶叫する2人。


「いや、だから熱いって言ったでしょ。?」


「「美味い!!!」」

と目を見開き、思わず叫ぶ2人。


「え?え? 何この美味しい物。

わぁヤバ!このジュースも滅茶滅茶美味しいーーー」

とお姉さんが五月蠅い。


「ケンジ、相変わらず――いや、かなり腕をあげただろ?

これはヤバいな。」

とガバスさん。


「フフフ、お褒め頂きありがとうございます。

この食べ物はピザです。色々な具を乗せて、竈で焼くんですよ。

材料を揃えて置けば、結構簡単に作れるんですよね。

あ、あとそのジュースは例の桃のジュースですね。」

と答えると、ガバスさんがワァーって顔をしていた。

どうやら、ジュースに関しては触れてはダメと思ったらしい。



一頻り食べた後、ガバスさんがポツリポツリと話始めた。


「なあ、ケンジ。あの時のあれは、まあ仕方なかったと理解したよ。

だがな、俺は本当に寂しかったぞ? せめて、せめて一時でも顔を見て話して欲しかったぞ。

それにな、やっぱあの身元保証書にあったアレそのものが起きたぞ。

いやぁ~、驚いたな。

それと、今この店がここまでになったのは、全部お前のお陰だからな?

あの文字表あっただろ、あれがバカ売れしてなぁ。

このクーデリア王国内だけじゃなくて、国外にまで売れてな。

お陰で、ここまでの店になったんだ。

あとな、ギルドマスターのサンダーは、凄く後悔してたぞ。申し訳無いってな。」


「そうでしたか。そんな事があったんですか~。怖いですねぇ。

で、そのアレって言うのは一体どうなったんですか?」

とちょっとビビりながら聞くと、あの受付嬢がやった行為は、ギルドの規約に違反し、ギルドの信用を著しく失墜させる行為だったらしい。

しかもそれを反省するどころか、自分のやった事の意味も、誰に対してそれを行ったかも理解して無かったので、無慈悲な制裁が下ったらしい。


「わぁ……こわっ! その無慈悲な制裁って、まさか死刑とかじゃないですよね?」

と怖々聞くと、


「ああ、いやある意味死刑よりも残酷かもな。

賠償金で多大な借金を負って、一家離散で当人は借金奴隷墜ちだ。」


「わぁ!そんな事になったんですか。 幾ら何でもそこまで?」


「いや、まあ余り同情する気には俺はならんが、まあ大事に膨れ上がった1つは、相手がお前さんって事と、そのタイミングだな。

ほら、お前さんが買取に出した、あの災害級とかがあったろ? あれのオークションが白熱してなぁ。凄い事になったんだよ。

それで、ギルド本部と王家まで動いてしまってな、賠償金が一気に膨れ上がったんだよな。」

と。


「ちなみに、その借金の総額って幾らなんですか?」

と聞くと、


「大金貨3枚だ。」

と。


「え?大金貨3枚って事は……げ!3億マルカ!?」


「じゃよ。まあ、到底払える金額じゃないわな。」

と。


「わぁ~! それは幾ら何でも多過ぎじゃないの?」


思わず、あの黒髪の受付嬢に同情してしまう。


大金貨3枚か……俺100枚持ってるな。あんなのでも、ちょっと寝覚め悪いしなぁ……


「ガバスさん、1つお願いが。これであの人の借金チャラにしてやれませんかね?」

と大金貨3枚を取り出した。


「「………」」


シーンと静まり返る室内。


「利息足りませんか? なら後7枚までは出せますが?」

と7枚更に追加した。

まああと90枚あるんだけどね。


「っだはぁ~、息が止まるところだったぜ。

アホか! 何で被害者のお前が出すだよ?

しかも10億マルカ!? お、おまっ、何でこんなにも持ってる?」

と口から唾を飛ばしながら突っ込んで来るガバスさん。


「ぁはぁ~。大金貨をこんなに……私こんなに沢山の大金貨、久々に見ましたよ。」

とポニテのお姉さん。


「まあ、出所は身元保証書と同じ所です。俺はほら、余りお金を必要としてない生活してますからね。

だから、知ってしまった以上、俺の心の安寧の為にも、何とかならないかと。

足り無い様なら、また別途作る事も出来ますし。

ポーションや魔物の素材たんまりあるから。」

というと、色々と察してくれた様で、ガバスさんは愕然としていた。


そして、暫く考えている風だったが、


「言っとくが、あの手の女は、逆恨みしかしないぞ?

それに、今でも生きて居るかさえ、不明だからなぁ。

まあ、良い。どうせ俺が断ったら、他で無茶するつもりなんだろ?

かーー、面倒な奴だなぁ。俺が調べてやるよ。はぁ~~」

と最後に大きなため息を漏らしたのだった。


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 メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/21)


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