第126話 幻力の色彩#2

アマロックは丁寧に答えてくれた。

けれど説明を聞いても、相変わらず捉えどころがないというか、これまでアマリリスが見聞きしてきた中で、これが幻力マーヤーだったのか、と思えるようなものはなかった。

ただどうやら、単純に人の目を欺くあやかしの力、というわけではないようだ。


そういう作用は、幻力マーヤーが持つ効力の一側面か、

”走る”、”食う”と同じような、その上に幻力マーヤーが宿る、物理的な営為のひとつなのかもしれない。


吟遊詩人の牧歌を聞くような、素朴な農民詩を聞くようなアマロックの表現の幾つかは、アマリリスが異界を歩いていて、美しいと思って眺めるもののイメージに一致していた。


しかしそこに、幻力マーヤーの森で道に迷うことの不安や、孤独といったものが含まれ、

グナチアの出産につきまとう死の臭い、寄生種が産卵管を挿し入れるときの悪魔的な禍々しさが付随するのだとしたら、

異界から、美しいもの、心を喜ばせるものだけを拾い上げた集まりというわけでもないようだ。

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