第125話 幻力の色彩#1
”魔族じゃなくても”
「そう・・・なの?」
初耳だった。
「そうだよ。
人間には、見えないのだろうね。
異界の生物は魔族に限らず、みな同じ
そして、
この、、もとい、
さっきまでここにいて、今は大半がきみの胃袋の中に収まっているおちびちゃんの
おれにはちょっと切り崩しにくいタイプだったんだよ。
だから手こずってた。」
「・・・」
何だかケムに巻かれたような、釈然としない気分だった。
今回はアマリリスの目には見えなかったけれど、タルバガンとアマロックの間で、あんなふうな、あやかしの応酬があったというのか。
普通にオオカミがタルバガンを追いかけていたようにしか見えなかったけど。
また何か、からかわれているんじゃないだろうか?
そして
この魔族はいったいどんな悪だくみをはたらこうというのだろう。
薄気味悪さに尻込みする反面、そこに踏み込んで、モヤモヤしたものを取り払いたい衝動があった。
「ねえ、アマロック。」
アマリリスはまっすぐにアマロックの目を見た。
「ん?」
この質問で、異界と魔族の謎がひとつあきらかになる。
今まで感じたことのない緊張と期待で胸がドキドキした。
「
「それは、難しい質問だな。
光を知らない盲人に、色が何かを教えるような話だ。」
アマロックは微笑んで、少し言葉を切った。
アマリリスの無防備な質問に対して、はぐらかしたり、からかうような様子は見えなかった。
「オオカミがアカシカを追うとき、タルバガンがオオカミから逃げるとき、
それはある
おれがグナチアと戦うとき、グナチアが子を産むとき、寄生種が寄主に卵を生みつけるとき、
物理的な牙と爪のやりとり、疾走、補食、産卵、といったこととは別に――、
あるいはそういった営為の上にかな
生き物と生き物が関わり合うことの、ほとんど全てに
例えば根雪を割って現れるフキノトウのみどり、早瀬を遡るニジマスの鱗の赤、
そういったことにもね
だから魔族はもちろん、オオカミも、イワヒツジも、そのへんに生えている一本の草だって、
同じだけの強さの
「植物にも!?」
「そうだよ
実際、異界の森に生える植物は、大半は別に魔族が化けているわけじゃない、それ一本一本はただの木や草だろう
それが密生して、人間を惑わすようなかたまりになった時に、
君ら人間に対して影響を及ぼすような類の
人間には見えないだろう
異界は、あらゆる構成体が放つ
流れ落ち、逆流し、ぶつかり合ったり、二つの流れが同じ方向を向いてみたり
今日はおれの
でも明日は、草一本の
そういうものだよ」
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