第108話 霧の中へ

肩が何かにぼんとぶつかって、アマリリスは我に返った。


安心したのと、焚き火の暖かさで、つい居眠りしてしまったらしい。

そして体が傾いて、アマロックにぶつかった、と。


右肩にもたれ掛かった格好のアマリリスを、アマロックはうとんじるような様子はなかった。

アマリリスは石が詰まったような体に鞭打って、その重さを預ける心地よさから引き剥がし、しゃんと身を起こした。


ふたり無言で、焚き火で炙る肉が焼けるのを待った。

あまり味の分からない肉を何切れか、もそもそと飲み下して、すぐに出発した。



夜明け前から発生した霧が、深く立ちこめ、周囲の数歩ぶんの様子しか分からない。

夢か現かも曖昧なまま、アマリリスは霧の中へと、沼のほとりの夜営地を後にした。

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