第24話

「ありがとうございます。海外営業部マドンナのマイさんにお手伝いいただければ、課長がいなくたって、1課は問題ナッシング!」

 1課のグループリーダーの男性は豪快に笑うと、先輩に深々と頭を下げた。

 先輩が1課課長のことを尋ねると、グループリーダーは苦虫を潰したような表情で話し始めた。

「まあ、課長は若いですからね。あ、私よりもっていう意味ですよ。自分のことだけ考えていて、周りが見えてなかったんでしょう。みんなが残業しているのに、課長は同居のおばあさまの介護だと言って定時で帰っていたんですが、実は転職活動してたんですよ。・・・別に、転職が悪いって言ってるんじゃないんですよ。我々に話してほしかったんですよ。いなくなる前にね」

「じゃあ、今、転職先の合宿に参加しているという噂は本当なんですね」

 先輩の言葉に、グループリーダーは両手を先輩に見せた。

「あれは、最終選考をかねたセミナー合宿で、まだ、採用されたわけじゃないんですよ。総務に、採用先の人事から電話がかかってきたんです。課長についての人物照会でね。総務が確認したところ、まだ、課長は採用されたわけではない、と。2週間ほどの共同生活で、人間性や適性を確認し、採用を決めるとのことでした」

「じゃあ、不採用の可能性もあるってことですか?」

 先輩とグループリーダーとの会話を聞いていたジェニーさんが、話に加わった。

「さあ、どうでしょうかね?課長本人は、採用されたと思ってるでしょ」

 グループリーダーは大きくため息をついた。

「ま、マドンナがお手伝いしてくれるとわかれば、みんな頑張れますよ」


「それにしても、総務にも1課の人にも連絡しないなんて。1課の課長さんって、ひどい人ですね」

 ジェニーさんが、S女史の椅子に浅めに座った。

「確か・・・中途採用で入社した人ですよ。入社した時は、総務の3課で備品購入の仕事をしてたんですが、課長になったのと同時に、海外営業部の1課へ異動したんです」

 先輩とジェニーさんは、1課の課長について話が盛り上がっている中、僕のスマホ画面に、キットくんの名前が表示された。

「やだぁ、ハリー。また、彼女?」

「ち、違いますよ。友達です。男友達です」

「男友達なら、ここで電話出ればいいじゃない」

「この前みたいに、マイさんに邪魔されるの、嫌なんですよ」

「邪魔?してないけど~」

 先輩に冷やかされながら、僕はスマホを手に部屋を出た。

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