シュウさんの報告2

「ログイン部隊と現実世界で行動する人間、二手に分かれて行動するのはどうでしょう」

『……どちらか片方のみに戦力を固めるのはまずいかもしれないからな』


 シュウさんの言葉に、私は頷く。


「そうです。もし片方の陣営に固めてしまって、そちらで何かあった場合、身動きが取れなくなってしまいますからね」

『そういえば、それで思い出した』


 シュウさんが何か大事なことを思い出したような表情をする。


『……今日、ずんだ餅らしき人間と会った』

「ずんだ餅さん!?」

『あー、あの、一緒に第一ステージを一緒にクリアした人ー?』

「そして、ナイトメア・ソフトウェアの人事部にいたと思われる人ですよね」

『そう、あのずんだ餅だ』


 シュウさんが小さく頷く。

 ずんだ餅さんと別れたのが、遠い昔のように思える。だけど、実際は昨日別れたばかりなんだよね。

 彼は、ナイトメア・ソフトウェアの人事部にいて、特別スキル『スカウター』を持ったスカウターだった。

 とりあえず、彼もまた無事にゲームからログアウトできていたんだね、よかった。


『どうやら彼は、当日にゲームにログインしていなかった体を装って会社に出勤したらしい』

「頑張り屋さんなんですね」

『……いや、彼自体はそれほど仕事人間じゃなさそうだが。どうやら、こちらに会いに来るのが目的だったようだ』

「シュウさんに」


 ずんだ餅さん、ゲーム内ではシュウさんを警戒してたみたいだったけど、現実でシュウさんにわざわざ会いに来たんだ……。


『ずんだ餅は、そちらや、シュウカがきちんとゲームからログアウトできているか心配もしていたし、今後どうするか相談できる相手もいなかったから、そうしたようだ』

「ああなるほど」


 確かに。だって他にログアウトできた人がいるかどうかも分からないし、そもそもログアウトできた人がいたとしても、自分がそうですとは多分、名乗り出てはくれない。そうなってくると、必然的に自分と同じ境遇の人間を探すのは手間だ。


 でも、実際は私たちとつながりのある、そして同じナイトメア・ソフトウェアに在籍するシュウさんがいた。だから、出勤するリスクを冒してまで、シュウさんに接触しようと試みてくれたんだ。


『一人で抱え込むのが怖かったんだー』


 シュウカさんが小さく笑う。でも、と彼女も付け足す。


『あたしも、自分一人だったらそうなってたかもー。あたしには今、お兄ちゃんもサランさんもいるから安心だけどー。そうじゃなかったら、きっと不安だったと思うー』

「それは私も同じです。私もシュウカさんとシュウさんがいてくれたから、安心して行動を決めることができたんです」


 ログアウトしてからの動きを共有できる相手がいたからこそ、今私は落ち着いている。本当に、二人が、ずんだ餅さんがいてくれてよかった。

 ついでに言うと、実家暮らしで本当によかった。買い物行かなくていいからね!



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