企画書からにじみ出る何か。

「では、一枚ずつ映しますよ」


 そう前置いて、一枚ずつ書類をアップで映し出す。シュウさんの合図を受けて、次の書類に映る。これは、結構枚数がありそうだ。


「シュウさんは、タイピングが速い方ですか」

『それなり……といったところだろうか』


 タイピングって速い人とそうでない人がいるよね。速ければ速いほど、仕事も捗ることもある。私はそれなりの速さは出せるけど、小学生の時からそれは、パソコンのキーボードを触ってきたからだろうなとは思う。


「これで書類は全部です」

『……そうか、こちらもすべての書類の写真は撮れている』

「ありがとうございます」

『それでは、通話はつなげたまま、文字起こしを始めるとするか』


 写真で撮ったものの、さっきまでの書類の文字全部と、あるか分からないけど、次の書類の文言を繋げたら、別の何かに繋がる、みたいなことがないとも限らないからね。一応アナログ人間な私としては、文字と写真、両方残しておきたい。どっちにせよ、データはパソコン上に保存するわけだから、パソコンのデータが吹っ飛んだらサヨウナラ、だけどね。


 ずんだ餅さんにも声をかける。


「プラグ探し、よろしくお願いします。私は、この書類の内容を頭に入れてから、探索スタートし直しますので」

「僕にも後で、その書類見せてください」

「とりあえず、元の場所に戻して眺めますね。一定時間、別の場所に置いてると何か起きる、という設定であれば困るので」

「それは言えてます! これ以上、何か起きるのは勘弁ですから!!!」


 ずんだ餅さんの声を背中に聞きながら、書類の束をめくっていく。VRMMOものの企画書。WFOに似た世界観のVRMMOもので、何をしてもいいゲーム。のんびり農業などをしてもいいし、モンスターを倒しに行ってもいい。スローライフを楽しんでもいいし、冒険を楽しむのでもいい。楽しみ方は十人十色。そういったコンセプトがびっしり書き込まれている。


 何より、このゲーム企画書から感じられたのは、企画書作成者の楽しそうな気持ちだった。私は、企画書作りは初心者だから、細かいことはよくわからない。これが、いい企画書なのかそうでないのかも分からない。


 だけど、文章からにじみ出る作成者の愉しさは、伝わってくる。きっとこの人、この仕事にすごく愛情を持って取り組んでたんだ。










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